チップの消費電力が、動くときに使う電力と、止まっていても漏れる電力の二つからなることを説明する。電圧を下げる、使わない部分のクロックを止める、電源を切る、といった設計の工夫と、微細化との関係を扱う。
電力の二つの使われ方と、使わない部分を止める方法(模式図)
- 電力の二つの使われ方切り替わるときと、止まっていても
- 使わない部分を止めるクロックを止める、電源を切る
図:左は、チップの電力の二つの使われ方。回路が切り替わるときに使う電力と、止まっていても漏れる電力がある。右は、使わない部分を止める方法。使う部分だけを動かし、使わない部分はクロックを止めるか、電源を切る。目盛りのない模式図、本サイトで作成電力を抑えることが、なぜ大事か
スマートフォンでは、電池を長持ちさせるために、チップの電力を抑える必要がある。データセンターでは、電気代と、熱を冷やす費用が大きい。どちらでも、電力は、チップの性能を決める大事な制約である。電力が大きいと、チップが熱くなり、そのままでは動かし続けられない。
このページでは、チップの電力がどこで使われるかを分け、それを抑える設計の工夫を見ていく。
電力の二つの使われ方
チップの電力は、大きく二つに分けられる。一つは、回路が動くときに使う電力である。トランジスタが切り替わるたびに、回路の小さな電気の入れ物を、満たしたり空にしたりする。この電力は、切り替わる回数が多いほど、つまり速く動かすほど大きくなる。また、電圧が高いほど大きくなる。
もう一つは、動いていなくても漏れる電力である。トランジスタは、スイッチを切っても、わずかに電流が漏れる。一つひとつは小さいが、トランジスタの数が非常に多いので、合わせると無視できない。この漏れる電流は、リークと呼ばれる。
電圧を下げる
動くときの電力は、電圧の二乗に応じて変わるので、電圧を下げる効果は大きい。電圧を少し下げるだけでも、電力は大きく減る。
ただし、電圧を下げると、トランジスタの切り替わりが遅くなる。そのため、速さが必要な部分は高い電圧で、速さが要らない部分は低い電圧で動かす、というように、部分ごとに電圧を分ける設計がある。仕事の重さに応じて、電圧と速さを切り替える方法もある。軽い仕事のときは電圧と速さを下げ、重い仕事のときだけ上げる。
使わない部分を止める
回路の中には、ある時間は使われない部分がある。使われない部分で、無駄に切り替わりが起きると、電力を使ってしまう。
そこで、使わない部分には、時刻をそろえる信号(クロック)を送らないようにする。切り替わりが止まるので、動くときの電力が減る。これを、クロックを止める方法と呼ぶ。さらに、使わない部分の電源そのものを切る方法もある。電源を切れば、漏れる電力も減らせる。ただし、電源を入れ直すと、中の記憶が消えたり、立ち上がるまでに時間がかかったりするので、止める時間と戻す手間のつり合いを考えて使う。
微細化と、漏れる電力
トランジスタを小さくすると、一つあたりの動く電力は下がりやすい。一方で、絶縁の層が薄くなり、漏れる電流が増えやすい。そのため、微細化では、材料や構造を工夫して、漏れを抑えてきた。
つまり、電力は、設計だけでなく、製造の技術にも左右される。設計の側では、道具(EDA)が、回路ごとの電力を見積もり、止められる部分を探す。
このページのまとめ
チップの電力は、動くときに使う電力と、止まっていても漏れる電力に分かれる。電圧を下げる、使わない部分のクロックや電源を止める、仕事の重さに応じて電圧と速さを切り替える、といった設計の工夫で抑える。漏れる電力は、微細化で増えやすいので、製造の技術とあわせて抑える。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
チップの動くときの電力を、大きく減らせる方法はどれか。
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答え:1. 電圧を下げる
動くときの電力は、電圧の二乗に応じて変わるので、電圧を下げる効果が大きい。
問2
使わない部分の電源を切る方法の利点と注意として、正しいものはどれか。
答えと解説を見る
答え:1. 漏れる電力も減らせるが、戻すときに手間と時間がかかる
電源を切ると、漏れる電力も減る。ただし、記憶が消えたり、立ち上がりに時間がかかったりする。