3. デバイス設計・回路7 / 10ページ

電力を抑える設計:低消費電力の考え方

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 電力を抑えることが、なぜ大事か
  2. 電力の二つの使われ方
  3. 電圧を下げる
  4. 使わない部分を止める
  5. 微細化と、漏れる電力
  6. このページのまとめ
  7. 関係する工程と用語
  8. 次に読む
  9. 理解度チェック

チップの消費電力が、動くときに使う電力と、止まっていても漏れる電力の二つからなることを説明する。電圧を下げる、使わない部分のクロックを止める、電源を切る、といった設計の工夫と、微細化との関係を扱う。

電力の二つの使われ方と、使わない部分を止める方法(模式図)

  1. 動くときの電力切り替わるたびに使う漏れる電力止まっていても漏れる電力の二つの使われ方切り替わるときと、止まっていても
  2. 使う部分使う部分使わない部分クロックを止める使わない部分電源を切る止めると電力が減る使わない部分を止めるクロックを止める、電源を切る
図:左は、チップの電力の二つの使われ方。回路が切り替わるときに使う電力と、止まっていても漏れる電力がある。右は、使わない部分を止める方法。使う部分だけを動かし、使わない部分はクロックを止めるか、電源を切る。目盛りのない模式図、本サイトで作成

電力を抑えることが、なぜ大事か

スマートフォンでは、電池を長持ちさせるために、チップの電力を抑える必要がある。データセンターでは、電気代と、熱を冷やす費用が大きい。どちらでも、電力は、チップの性能を決める大事な制約である。電力が大きいと、チップが熱くなり、そのままでは動かし続けられない。

このページでは、チップの電力がどこで使われるかを分け、それを抑える設計の工夫を見ていく。

電力の二つの使われ方

チップの電力は、大きく二つに分けられる。一つは、回路が動くときに使う電力である。トランジスタが切り替わるたびに、回路の小さな電気の入れ物を、満たしたり空にしたりする。この電力は、切り替わる回数が多いほど、つまり速く動かすほど大きくなる。また、電圧が高いほど大きくなる。

もう一つは、動いていなくても漏れる電力である。トランジスタは、スイッチを切っても、わずかに電流が漏れる。一つひとつは小さいが、トランジスタの数が非常に多いので、合わせると無視できない。この漏れる電流は、リークと呼ばれる。

電圧を下げる

動くときの電力は、電圧の二乗に応じて変わるので、電圧を下げる効果は大きい。電圧を少し下げるだけでも、電力は大きく減る。

ただし、電圧を下げると、トランジスタの切り替わりが遅くなる。そのため、速さが必要な部分は高い電圧で、速さが要らない部分は低い電圧で動かす、というように、部分ごとに電圧を分ける設計がある。仕事の重さに応じて、電圧と速さを切り替える方法もある。軽い仕事のときは電圧と速さを下げ、重い仕事のときだけ上げる。

使わない部分を止める

回路の中には、ある時間は使われない部分がある。使われない部分で、無駄に切り替わりが起きると、電力を使ってしまう。

そこで、使わない部分には、時刻をそろえる信号(クロック)を送らないようにする。切り替わりが止まるので、動くときの電力が減る。これを、クロックを止める方法と呼ぶ。さらに、使わない部分の電源そのものを切る方法もある。電源を切れば、漏れる電力も減らせる。ただし、電源を入れ直すと、中の記憶が消えたり、立ち上がるまでに時間がかかったりするので、止める時間と戻す手間のつり合いを考えて使う。

微細化と、漏れる電力

トランジスタを小さくすると、一つあたりの動く電力は下がりやすい。一方で、絶縁の層が薄くなり、漏れる電流が増えやすい。そのため、微細化では、材料や構造を工夫して、漏れを抑えてきた。

つまり、電力は、設計だけでなく、製造の技術にも左右される。設計の側では、道具(EDA)が、回路ごとの電力を見積もり、止められる部分を探す。

このページのまとめ

チップの電力は、動くときに使う電力と、止まっていても漏れる電力に分かれる。電圧を下げる、使わない部分のクロックや電源を止める、仕事の重さに応じて電圧と速さを切り替える、といった設計の工夫で抑える。漏れる電力は、微細化で増えやすいので、製造の技術とあわせて抑える。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

チップの動くときの電力を、大きく減らせる方法はどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 電圧を下げる

動くときの電力は、電圧の二乗に応じて変わるので、電圧を下げる効果が大きい。

問2

使わない部分の電源を切る方法の利点と注意として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 漏れる電力も減らせるが、戻すときに手間と時間がかかる

電源を切ると、漏れる電力も減る。ただし、記憶が消えたり、立ち上がりに時間がかかったりする。