半導体を学ぶ前に知っておきたい、電圧・電流・抵抗の関係(オームの法則)と電力、電気をためるコンデンサと時定数、直流と交流の周波数を、水の流れのたとえで説明する。
電圧・電流・抵抗と、コンデンサのたまり方(模式図)
- 電圧が電流を流す電圧=電流×抵抗(オームの法則)
- コンデンサのたまり方時定数=抵抗×容量。大きいほどゆっくり
図:左は、電池(電圧)が抵抗に電流を流す回路。電流は電池のプラス側から出て抵抗を通り、マイナス側へ戻る。電子は、その反対の向きに動く。右は、抵抗を通してコンデンサに電気をためるときの、たまった量の時間の変化。はじめは速く、満ちるにつれてゆっくりになる。抵抗と容量のかけ算(時定数)が大きいほど、曲線はゆるやかになる。模式図、本サイトで作成電気の流れを、水の流れにたとえる
半導体の働きは、電気の流れを止めたり、通したり、強めたりすることである。そのため、半導体を学ぶ前に、電気の流れを表す言葉をそろえておくと、後のページが読みやすくなる。
電気の流れは、管の中を流れる水にたとえると分かりやすい。高いところにある水槽から、低いところへ管を通して水が流れる様子を思い浮かべてほしい。このページでは、このたとえを使って、電流、電圧、抵抗の三つを順に説明する。
電流:どれだけ流れるか
電流は、電気がどれだけ流れているかを表す量である。水のたとえでは、管のある場所を、一定の時間にどれだけの水が通り過ぎるかに当たる。単位はアンペアである。
電気の流れの正体は、電気を帯びた粒の動きである。金属の中では電子が、半導体の中では電子と正孔が、この粒の役目をする(次のページ以降で説明する)。電子はマイナスの電気を持つため、電子が動く向きと、電流の向きは反対になる。電流の向きは、プラスの電気が動く向きで決めるという約束があるためである。
電圧:流そうとする力の差
電圧は、電気を流そうとする力の差を表す量である。水のたとえでは、二つの水槽の水面の高さの差に当たる。高さの差が大きいほど、水は勢いよく流れる。単位はボルトである。
電圧は、いつも二つの場所の「差」で考える。ある一か所だけの電圧というものはない。回路の図で「この点の電圧」と書くときは、基準にした場所(多くはアースや電源のマイナス側)との差を指している。
抵抗:流れにくさ
抵抗は、電気の流れにくさを表す量である。水のたとえでは、管の細さや、管の中に詰まった砂に当たる。管が細いほど、同じ高さの差でも流れる水は少なくなる。単位はオームである。
物質によって、抵抗の大きさは大きく違う。金属は抵抗が小さく、ゴムやガラスは抵抗がとても大きい。半導体は、その間にあり、混ぜる元素や温度、光によって抵抗が大きく変わる。この「変えられる」ことが、半導体の価値の中心である。
三つの関係:オームの法則
電流、電圧、抵抗の間には、決まった関係がある。電流は電圧に比例し、抵抗に反比例する。式で書くと、電圧は電流と抵抗のかけ算に等しい。これを「オームの法則」と呼ぶ。
水のたとえでは、水面の高さの差を大きくすると流れが増え、管を細くすると流れが減る、という当たり前のことを言っている。電圧と抵抗が分かれば電流が、電流と抵抗が分かれば電圧が求められる。
ただし、オームの法則がそのまま成り立つのは、抵抗が電流によって変わらない部品だけである。ダイオードやトランジスタのような半導体の部品では、電流と電圧の関係が直線にならない。この「直線にならない」ことが、電気を一方向だけに流したり、小さな信号で大きな電流を操ったりする働きにつながる。
電力:電気がする仕事
電力は、電気が一定の時間にする仕事の量を表す。電圧と電流のかけ算で求められ、単位はワットである。
抵抗に電流が流れると、電気のエネルギーは熱に変わる。半導体の部品も、電流が流れると熱を出す。たくさんのトランジスタを詰め込んだチップや、大きな電流を扱うパワー半導体で、熱をどう逃がすかが大切になるのは、このためである。
コンデンサと時定数
コンデンサは、電気をためる部品である。二枚の金属の板を、電気を通さない薄い膜をはさんで向かい合わせた形をしている。電圧をかけると、片方の板にプラス、もう片方にマイナスの電気がたまる。どれだけためられるかを「容量」と呼ぶ。
抵抗を通してコンデンサに電気をためると、すぐにはいっぱいにならない。はじめは勢いよくたまり、満ちるにつれてゆっくりになる。このたまり方の速さの目安を「時定数」と呼び、抵抗と容量のかけ算で決まる。抵抗も容量も大きいほど、時間がかかる。
チップの中の配線やトランジスタにも、小さな抵抗と容量がある。信号を切り替えるたびに、この小さなコンデンサに電気をためたり抜いたりしているため、時定数が回路の速さの限界になる。微細化で回路を速くできる理由の一つは、この容量が小さくなることである。
直流と交流、周波数
電池のように、電流の向きが変わらないものを「直流」と呼ぶ。家庭のコンセントのように、電流の向きが行ったり来たりするものを「交流」と呼ぶ。
交流で、向きが一秒間に何回入れ替わるかを「周波数」と呼び、単位はヘルツである。周波数が高いほど、速く変わる信号である。無線通信の電波や、プロセッサを動かす時計の信号(クロック)も、周波数で速さを表す。周波数が高くなると、時定数の影響が大きくなり、回路が追いつけなくなる。高い周波数を扱う部品に工夫がいるのは、このためである。
このページのまとめ
電流は流れる量、電圧は流そうとする力の差、抵抗は流れにくさである。三つはオームの法則で結ばれ、電圧と電流のかけ算が電力になる。コンデンサは電気をためる部品で、抵抗と容量で決まる時定数が、回路の速さの目安になる。次のページから、半導体の中で何が電気を運ぶのかを見ていく。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
オームの法則が表している関係として、正しいものはどれか。
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答え:1. 電流は、電圧に比例し、抵抗に反比例する
電圧は電流と抵抗のかけ算に等しい。言い換えると、電流は電圧に比例し、抵抗に反比例する。
問2
抵抗を通してコンデンサに電気をためるとき、たまるのにかかる時間の目安(時定数)を決めるものはどれか。
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答え:2. 抵抗と容量のかけ算
時定数は、抵抗と容量のかけ算で決まる。抵抗も容量も大きいほど、ためるのに時間がかかる。
問3
電子が動く向きと、電流の向きの関係として、正しいものはどれか。
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答え:2. 反対の向きである
電流の向きは、プラスの電気が動く向きと約束されている。電子はマイナスの電気を持つので、電子の動く向きは電流と反対になる。