キャリアの電流が、電界によるドリフトと、濃度の差による拡散の二つで決まることを、式から読む。移動度と拡散係数がアインシュタインの関係で結ばれることを、シリコンの電子と正孔の値で確かめる。
電界で動く速さと、拡散の速さは、移動度で結ばれる
- ドリフトの速さ移動度が傾きにあたる
- 拡散係数電子のほうが速い
図:左は、電界とドリフトの速さの関係(v = μE。電界が強くなって速さが頭打ちになる領域は含めない)。右は、アインシュタインの関係 D = (kT/q)μ から求めた300 Kの拡散係数。移動度は Tishk International University のスライド、計算は本サイト式
は電子による電流密度、 は電気素量、 は電子の濃度、 は電界、 は位置である[1]。 は電子の移動度で、電界1の単位あたりの速さの比例定数である。 は拡散係数である。
第1項がドリフト(電界で動く電流)、第2項が拡散(濃度の高いほうから低いほうへ動く電流)である。
移動度と拡散係数は、アインシュタインの関係で結ばれる[1]。
式のどこを見るか
見るのは、電流が二つの項の和であることである。電界がなければ第1項は0になり、濃度が一様なら第2項が0になる。pn接合では、濃度の差が大きいため、拡散の項が大きい。
ドリフトの速さは、 である[1]。移動度が大きいほど、同じ電界で速く動く。電界が強くなると、速さは一定の値に近づき、この比例は成り立たなくなる[1]。
アインシュタインの関係は、移動度が大きい材料は、拡散も速いことを示す。比例定数 は熱電圧で、熱のエネルギーを電圧に直した量である。
導電率は、 で、その逆数が抵抗率である[1]。電子と正孔の両方が、電流に寄与する。
数値例
300 Kの熱電圧は、ボルツマン定数と電気素量[2]から、約25.9 mV である(本サイトで計算)。
シリコンの移動度は、電子が1,400 cm/(V·s)、正孔が470 cm/(V·s) である[1]。アインシュタインの関係から、拡散係数は、電子が約36 cm/s、正孔が約12 cm/s になる(本サイトで計算)。
電界が V/cm のとき、電子のドリフトの速さは cm/s である[1]。1 μm( cm)進むのにかかる時間は約71 ps(ピコ秒)である(本サイトで計算)。
電子の濃度が cm のとき、導電率は約2.2 S/cm、抵抗率は約0.45 Ω·cm である。正孔なら約0.75 S/cm、約1.3 Ω·cm である(本サイトで計算)。ただし、移動度は不純物の濃度でも変わるため、この計算は、上の移動度の値をそのまま使った目安である。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
移動度が大きい材料では、同じ電界で、キャリアの速さはどうなるか。
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答え:2. 速くなる
ドリフトの速さは v = μE である。移動度 μ が大きいほど、同じ電界 E で速く動く。
問2
拡散係数と移動度を結ぶアインシュタインの関係の、比例定数はどれか。
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答え:1. 熱電圧 kT/q
D = (kT/q)μ である。比例定数 kT/q は熱電圧で、300 Kで約25.9 mV である。