pn接合の内蔵電位:lnの中の濃度

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

pn接合の内側にできる電位差(内蔵電位)の式から、不純物の濃度を10倍にしても電位差が少ししか変わらない理由と、温度や材料で電位差が変わる理由を読む。シリコンの値で、濃度ごとの電位差を計算する。

pn接合のバンド図と内蔵電位(模式図)

  1. p型n型EcEvEFEcEvEFつなぐ前p型とn型で、EFの高さが違う
  2. p型n型EcEvEFqVbiつないだ後EFがそろい、段差 qVbi ができる
図:左は、つなぐ前のp型とn型。フェルミ準位 EF(破線)の高さが違う。右は、つないだ後。電子が流れ込んでEFがそろい、境目の帯が曲がる。その段差 qVbi が内蔵電位にあたる。電子は坂を下る向きに、正孔は坂を上る向きに動きやすい。段差の大きさは実際の比と異なる。模式図、本サイトで作成

式

Vbi=kTqln⁡NaNdni2

Vbi は内蔵電位(拡散電位)で、電圧をかけていないpn接合の内側に、ひとりでにできる電位差である。Na はp型の側のアクセプタの濃度、Nd はn型の側のドナーの濃度、ni は真性キャリア濃度である。k はボルツマン定数、T は絶対温度、q は電子1個の電荷の大きさである。

前に付く kT/q は、熱のエネルギーを電圧に直した量で、熱電圧と呼ばれる。

式のどこを見るか

まず見るのは、濃度が ln(自然対数)の中にあることである。ln の中が10倍になっても、ln の値は約2.3しか増えない。そのため、Na か Nd を10倍にしても、Vbi は熱電圧の約2.3倍だけしか増えない。濃度を何桁も変えても、電位差は大きくは動かない。シリコンのpn接合の電位差が、濃度によらずだいたい同じくらいの値に収まるのは、このためである。

次に見るのは、分母の ni2 である。ni は、バンドギャップが大きいほど桁違いに小さい(「真性キャリア濃度と温度」のページ)。分母が小さいと ln の値は大きくなる。バンドギャップの大きい材料のpn接合ほど、内蔵電位は大きい。

温度の効き方は、2か所にある。前の kT/q は温度に比例して大きくなる。一方、分母の ni2 は温度とともに桁で増える。差し引きでは、分母の増え方が勝ち、温度が上がると内蔵電位は小さくなる。

内蔵電位は、外から電圧計を当てても測れない。金属の電極との境目にも電位差ができ、回路を一周すると打ち消し合うためである。順方向に電圧をかけると、この電位差の山が低くなり、電流が流れ始める。

数値例

300 Kの熱電圧は、ボルツマン定数と電気素量[2]から約25.9 mVになる(本サイトで計算)。シリコンの ni は300 Kで 9.65×109 cm−3 とする[1]。

Na と Nd をともに 1×1016 cm−3 とすると、Vbi は約0.72 Vになる(本サイトで計算)。

p型の側だけ10倍の 1×1017 cm−3 にすると、Vbi は約0.78 Vになる。増えるのは約60 mVだけである。両側とも 1×1017 cm−3 にしても、約0.84 Vにとどまる(いずれも本サイトで計算)。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

pn接合のp型の側の不純物の濃度を10倍にすると、内蔵電位はどうなるか(温度は300 Kのまま)。

答えと解説を見る

答え:3. 熱電圧の約2.3倍(シリコンで約60 mV)だけ増える

濃度は ln の中にある。ln の中が10倍になると ln の値は約2.3増えるので、内蔵電位は熱電圧の約2.3倍だけ増える。

問2

温度が上がると、内蔵電位はどうなるか。

答えと解説を見る

答え:1. 分母の真性キャリア濃度が桁で増えるため、小さくなる

熱電圧は温度に比例して大きくなるが、分母の真性キャリア濃度の2乗は温度とともに桁で増える。差し引きで、内蔵電位は小さくなる。

出典

  1. Intrinsic Carrier Concentration(外部サイト)PVEducation(C. Honsberg、S. Bowden)確認日:
  2. CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants: 2018(NIST SP 961)(外部サイト)米国国立標準技術研究所(NIST)確認日: