p型とn型の半導体をつなぎ合わせた「pn接合」で、境目に空乏層ができ、電気が一方向にだけ流れる仕組みを説明する。これがダイオードの働きで、トランジスタを理解する土台になる。
pn接合と、電圧のかけ方(模式図)
- 電圧をかけないとき境目に空乏層ができ、電気の壁で釣り合う
- 順方向(p型にプラス)空乏層が狭くなり、電気が流れる
- 逆方向(p型にマイナス)空乏層が広がり、電気はほとんど流れない
- 左:p型 右:n型
- 空乏層
- 正孔
- 電子
- 動けない電気(混ぜた元素の原子)
- 電池(長い線がプラス)
- 電気が流れる
図:p型とn型の境目には、キャリアのない空乏層ができる。p型にプラスをつなぐ順方向では空乏層が狭くなって電気が流れ、逆方向では空乏層が広がって電気はほとんど流れない。粒の数や大きさは簡単にした模式図、本サイトで作成p型とn型をつなぎ合わせる
前のページで、ごくわずかな元素を混ぜて、電子が主役のn型と、正孔が主役のp型を作れることを学んだ。このページでは、この二つをつなぎ合わせると何が起きるかを見ていく。
p型とn型の半導体が、一つの結晶の中で接している部分を「pn接合」と呼ぶ。実際には、別々に作った二つをくっつけるのではない。一つの結晶の中で、場所によって混ぜる元素を変え、p型の領域とn型の領域を隣り合わせに作る。
pn接合は、半導体の部品の多くに入っている基本の構造である。電気を一方向にだけ流すダイオード、光を出す発光ダイオード、光を電気に変える太陽電池やイメージセンサーも、pn接合の性質を使っている。
境目で起きること:拡散
つなぎ合わせた直後を考える。n型の側には電子がたくさんあり、p型の側には正孔がたくさんある。
物は、多いところから少ないところへ広がろうとする。水にインクを一滴落とすと、やがて全体に広がるのと同じである。この動きを「拡散」と呼ぶ。
境目の近くでは、n型の電子がp型の側へ、p型の正孔がn型の側へ移っていく。移った電子と正孔は出会うと結びついて、どちらも消えてしまう。
空乏層と、内側にできる電気の壁
電子と正孔が消えた後の境目の近くには、電気を運ぶキャリアがほとんどない領域が残る。この領域を「空乏層」と呼ぶ。
空乏層は、電気的に中性ではない。n型の側では、電子を手放した混ぜた元素の原子がプラスの電気を持って残る。p型の側では、電子を受け取った混ぜた元素の原子がマイナスの電気を持って残る。これらの原子は結晶に固定されていて動けない。
その結果、空乏層の中には、n型の側がプラス、p型の側がマイナスという電気の偏りができる。この偏りは、電子がさらにp型の側へ移ろうとするのを押し返す、壁のような働きをする。拡散で移ろうとする力と、壁が押し返す力が釣り合ったところで、移動は止まる。
この壁の高さを「電位障壁」と呼ぶことがある。壁があるため、何もしなければ、境目を越えて電気は流れない。
順方向の電圧:電気が流れる
pn接合のp型の側に電池のプラス、n型の側にマイナスをつなぐと、どうなるか。
n型の側には電池から電子が送り込まれ、p型の側には正孔が送り込まれる形になる。電池がつくる電気の向きは、空乏層の壁を低くする向きである。壁が低くなると、電子と正孔は境目を越えやすくなり、境目の近くで次々に結びつく。その分、電池から新しい電子と正孔が補われ、回路に電気が流れ続ける。
この向きの電圧のかけ方を「順方向」と呼ぶ。順方向では、ある程度の電圧を超えると、電気が急に流れやすくなる。
逆方向の電圧:電気がほとんど流れない
反対に、p型の側に電池のマイナス、n型の側にプラスをつなぐと、電子と正孔は境目から引き離される向きに動く。空乏層は広がり、壁は高くなる。
この向きの電圧のかけ方を「逆方向」と呼ぶ。逆方向では、キャリアが境目を越えられないので、電気はほとんど流れない。わずかに流れるのは、前のページで説明した少数キャリアによるものである。
ただし、逆方向の電圧を大きくしすぎると、ある電圧で急に大きな電流が流れ出す。これを「降伏」と呼ぶ。降伏の性質をわざと使い、電圧を一定に保つ部品もある。
ダイオード:電気を一方向にだけ流す部品
順方向では流れ、逆方向ではほとんど流れない。この性質を「整流」と呼び、pn接合を使って整流を行う部品を「ダイオード」と呼ぶ。p型の側の端子をアノード、n型の側の端子をカソードと呼ぶ。
整流は、向きが行ったり来たりする交流を、向きが一定の直流に変えるのに使われる。家庭のコンセントの交流から、電子機器の中で使う直流を作る電源には、ダイオードが使われている。
発光ダイオード(LED)は、順方向に電気を流したとき、境目で電子と正孔が結びつく際のエネルギーを光として出す部品である。太陽電池は反対に、境目に当たった光のエネルギーで電子と正孔を作り、空乏層の電気の偏りを使って電気として取り出す。
トランジスタへのつながり
pn接合は、トランジスタを理解する土台でもある。トランジスタの多くは、pn接合の壁の高さや空乏層の広がりを、電圧で外から操る仕組みを使っている。壁を下げれば電気が流れ、壁を上げれば止まる。こうして、電気の流れを切り替えるスイッチが作られる。
製造工程では、ウェーハの決められた場所にイオン注入などでドーパントを入れ、p型とn型の領域を細かく作り分ける。これによって、一枚のウェーハの上に非常に多くのpn接合が作られる。
このページのまとめ
p型とn型をつなぐと、境目で電子と正孔が結びついて消え、キャリアのない空乏層ができる。空乏層には電気の偏りによる壁ができ、順方向の電圧では壁が低くなって電気が流れ、逆方向では壁が高くなってほとんど流れない。この一方向にだけ流す性質を使う部品がダイオードである。
分野「デバイス」では、pn接合をもとに、トランジスタの仕組みを説明していく。
- 用語:シリコンウェーハ:高純度のシリコン単結晶を薄い円板状に切り出し、表面を鏡のように磨いた基板。半導体チップの回路を作り込む土台となる。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
pn接合の境目の近くにできる、電気を運ぶキャリアがほとんどない領域を何と呼ぶか。
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答え:1. 空乏層
境目では、拡散で移った電子と正孔が結びついて消えるため、キャリアがほとんどない空乏層ができる。
問2
ダイオードのp型の側に電池のプラス、n型の側にマイナスをつないだとき、どうなるか。
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答え:2. 空乏層の壁が低くなり、電気が流れる
この向きは順方向である。電池がつくる電気の向きが空乏層の壁を低くするので、電子と正孔が境目を越えやすくなり、電気が流れる。
問3
ダイオードの「整流」の働きとして、正しいものはどれか。
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答え:2. 電気を一方向にだけ流す
順方向では流れ、逆方向ではほとんど流れない性質を整流と呼ぶ。交流から直流を作る電源などに使われる。