拡散長:寿命が100倍長いと、少数キャリアは10倍遠くまで届く

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

注入された少数キャリアが、結びついて消えるまでに進む距離(拡散長)を、拡散係数と寿命から求める式で読む。拡散長が寿命の平方根で決まること、距離とともに指数で減ることを、移動度1,500 cm²/(V·s)のシリコンの電子で確かめる。

拡散長だけ進むと、キャリアは約37%に減る

  1. 0123400.51約37%距離 x ÷ 拡散長 L濃度の減り方L で約37%、3L で約5%
  2. 1 μs62 μm100 μs623 μm0200400600拡散長 L(μm)寿命と拡散長寿命100倍で、10倍
図:左は、過剰な少数キャリアの濃度が、距離 x とともに exp(−x/L) で減る様子(横軸は x を L で割った値、縦軸は表面を1とした割合)。右は、電子の移動度1,500 cm²/(V·s)、300 Kで、寿命を1 μs と100 μs と仮定したときの拡散長。移動度はグラーツ工科大学の講義資料、寿命は例示の仮定、計算は本サイト

式

L=Dτ,D=kTqμ,δp(x)=δp(0)exp⁡(−xL)

L は拡散長で、少数キャリアが生まれてから結びついて消えるまでに進む、平均の距離である[1]。D は拡散係数、τ は少数キャリアの寿命である[1]。D は移動度 μ と熱電圧 kT/q の積で表せる(アインシュタインの関係)[2]。

表面でキャリアを生み、内部では生まれないとき、定常状態の過剰なキャリアの濃度 δp は、x とともに指数で減る[2]。

式のどこを見るか

見るのは、L が τ に比例することである。寿命が100倍になっても、拡散長は10倍にしかならない。寿命を延ばしても、届く距離は、その平方根でしか伸びない。

もう1つは、指数の形である。距離 x が L に達したところで、過剰なキャリアは約37%(e−1)に減る。2L で約13.5%、3L で約5.0%である(本サイトで計算)。キャリアが届く距離の目安は、L の数倍までである。

D は移動度に比例するので、移動度が大きい電子は、同じ寿命でも、正孔より遠くまで届く。

数値例

シリコンの電子の移動度は 1,500 cm²/(V·s) である[2]。300 Kの熱電圧は、ボルツマン定数と電気素量[3]から約25.9 mV で、拡散係数は D≈38.8 cm²/s になる(本サイトで計算)。出典の資料も、約39 cm²/s と見積もっている[2]。

寿命は、例示のために1 μs と100 μs と仮定する(実際のシリコンの値ではない)。拡散長は、1 μs で約62 μm、100 μs で約620 μm になる(本サイトで計算)。寿命が100倍で、拡散長は10倍である。

なお、結晶シリコン太陽電池では、拡散長は典型的に100〜300 μm とされ、シリコンの寿命は最大で1 ms 程度になりうる[1]。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

少数キャリアの寿命が100倍になると、拡散長は何倍になるか。

答えと解説を見る

答え:2. 約10倍

L = √(Dτ) なので、拡散長は寿命の平方根に比例する。寿命が100倍になると、拡散長は10倍になる。

問2

注入された少数キャリアの過剰な濃度は、拡散長 L だけ離れた場所で、もとの濃度のおよそ何%になるか。

答えと解説を見る

答え:3. 約37%

濃度は exp(−x/L) で減る。x = L では exp(−1) で、約37%になる。

出典

  1. Diffusion Length(外部サイト)PVEducation確認日:
  2. Lecture notes on semiconductor devices(2018年10月31日分)(外部サイト)グラーツ工科大学(W. Hadley)確認日:
  3. CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants: 2018(NIST SP 961)(外部サイト)米国国立標準技術研究所(NIST)確認日: