量子閉じ込め:井戸の幅を半分にすると、準位は4倍になる

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

薄い層に電子を閉じ込めると、エネルギーがとびとびの準位になる。壁が無限に高い井戸の式から、準位が井戸の幅の2乗に反比例し、有効質量に反比例することを読む。幅10 nmのヒ化ガリウムの井戸で、準位の値と準位の間隔を確かめる。

井戸が狭いほど、電子の準位は高い

  1. n = 1n = 2n = 3井戸の幅 L井戸の中の準位模式図
  2. 5 nm226.2 meV10 nm56.5 meV20 nm14.1 meV01002003001番目の準位(meV)幅と1番目の準位幅が半分で、4倍
図:左は、壁が無限に高い井戸の中の準位の模式図(準位の高さは 1:4:9 の比)。右は、有効質量 0.0665 m0 の電子の1番目の準位を、井戸の幅ごとに計算した値。有効質量は nextnano の資料、計算は本サイト

式

En=n2π2ℏ22m∗L2(n=1,2,3,…)

L は井戸の幅、m∗ は電子の有効質量、n は準位の番号、ℏ は換算プランク定数である[2]。壁が無限に高い井戸の場合の式である。電子は、この式のとびとびのエネルギーだけを取れる。

式のどこを見るか

見るのは、L2 が分母にあることである。井戸の幅を半分にすると、準位は4倍に上がる。幅が狭いほど、電子は狭い場所に押し込まれ、エネルギーが高くなる。

次に、m∗ が分母にあることである。電子が軽い(有効質量が小さい)材料ほど、同じ幅でも準位は高くなる。有効質量は、「有効質量」のページで見たとおり、バンドの曲がりで決まる。

最後に、n2 が掛かることである。準位の間隔は、上の準位ほど広がる。1番目の準位に対して、2番目は4倍、3番目は9倍である。

この式は無限に高い壁の場合である。実際の井戸の壁は有限の高さで、出典の計算でも、無限井戸は壁の高さを1000 eVと置いて近似している[1]。

数値例

幅 L=10 nm、有効質量 m∗=0.0665m0(ヒ化ガリウムの電子)の井戸を考える[1]。換算プランク定数、電子の質量、電気素量[3]を式に入れると、1番目の準位は約56.5 meV、2番目の準位は約226 meV になる(本サイトで計算)。出典の厳密解も、56.5 meV と 226 meV で、一致した[1]。

準位の差は約169.6 meV で、出典の厳密解は169.5 meV である[1]。

同じ有効質量で、幅を5 nm にすると、1番目の準位は約226 meV(4倍)、20 nm にすると約14.1 meV(4分の1)になる(本サイトで計算)。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

無限井戸で、井戸の幅を半分にすると、1番目の準位はどうなるか。

答えと解説を見る

答え:3. 4倍になる

準位は L² に反比例する。幅が半分になると、L² は4分の1になり、準位は4倍になる。

問2

同じ幅の井戸で、有効質量が小さい材料ほど、準位はどうなるか。

答えと解説を見る

答え:2. 高くなる

準位は m* に反比例する。電子が軽いほど、同じ幅の井戸でも準位は高くなる。

出典

  1. Intersubband absorption of an infinite quantum well(外部サイト)nextnano(nextnano GmbH)確認日:
  2. Nano-optics 演習問題 第5回(外部サイト)バーゼル大学 Poggio 研究室確認日:
  3. CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants: 2018(NIST SP 961)(外部サイト)米国国立標準技術研究所(NIST)確認日: