電気を通す金属と、電気を通さないゴムやガラスの間にある物質としての半導体を、身近な例から説明する。条件しだいで電気の通りやすさを変えられることが、半導体が役に立つ理由である。
電気の通りやすさ(模式図)
上ほど電気を通しにくく、下ほど電気を通しやすい。
絶縁体ゴム、ガラス、多くのプラスチック
半導体シリコンなど温度、光、混ぜる元素、かける電圧で、通りやすさが変わる 導体銅、アルミニウムなどの金属
図:物質は電気の通りやすさで、絶縁体、半導体、導体に分けられる。半導体は、条件によって通りやすさを大きく変えられる。模式図、本サイトで作成電気を通すもの、通さないもの
身の回りの物質は、電気の通りやすさで大きく三つに分けられる。
一つ目は、電気をよく通す「導体」である。銅やアルミニウムなどの金属がその代表で、電線の芯に使われている。
二つ目は、電気をほとんど通さない「絶縁体」である。ゴム、ガラス、多くのプラスチックがこれに当たる。電線の外側を覆うビニールは、電気が外に漏れないようにするための絶縁体である。
三つ目が、導体と絶縁体の間の性質を持つ「半導体」である。名前のとおり、導体と絶縁体の中ほどの性質を持つ。ただし、半導体の大切な点は、通しやすさが中くらいであることそのものではない。
電気の通りやすさを変えられる
半導体の大きな特徴は、条件によって電気の通りやすさが大きく変わることである。
たとえば、温度が上がると電気を通しやすくなる。光が当たると電気を通しやすくなるものもある。これは、熱や光のエネルギーを受け取ることで、物質の中を動ける電子が増えるためである。金属は、温度が上がるとかえって電気を通しにくくなるので、半導体とは反対の性質を持っている。
さらに大きいのは、ごくわずかな別の元素を混ぜることで、電気の通りやすさを思いどおりに変えられることである。混ぜる元素の種類によって、電気を運ぶものが電子になるか、電子の抜けた穴になるかも決められる。この仕組みは、次のページ「電子と正孔、n型とp型」で説明する。
通りやすさを変えられると、何ができるか
電気の通りやすさを外から変えられると、電気の流れを止めたり流したりする「スイッチ」を作れる。半導体で作るスイッチには、手で動かす部品がない。電圧をかけるだけで切り替わるので、とても小さく作れ、とても速く切り替えられる。
このスイッチを「トランジスタ」と呼ぶ。トランジスタは、小さな信号で大きな電流を操る「増幅」にも使える。
コンピューターは、たくさんのスイッチの入と切の組み合わせで計算をしている。スマートフォンやパソコンの中のチップには、非常に多くのトランジスタが詰め込まれている。半導体が電気の通りやすさを変えられる物質であることが、今の電子機器の土台になっている。
半導体の材料
半導体の代表的な材料は、シリコン(ケイ素)である。シリコンは、岩石や砂に多く含まれる元素で、材料として手に入れやすい。表面に質のよい酸化膜を作りやすいことも、シリコンが広く使われてきた理由の一つである。
半導体として使うには、原子が規則正しく並んだ「単結晶」にし、不純物をきわめて少なくする必要がある。こうして作ったシリコンを薄い円盤にしたものが、シリコンウェーハである。
シリコンのほかに、二種類以上の元素を組み合わせた「化合物半導体」もある。炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)は、高い電圧や大きな電流を扱う部品に使われる。ヒ化ガリウム(GaAs)などは、光を出す部品や、高い周波数の電波を扱う部品に使われる。
「半導体」という言葉の二つの意味
「半導体」という言葉は、二つの意味で使われることが多い。
一つは、ここまで説明してきた、電気の通りやすさが導体と絶縁体の間にある「物質」としての意味である。
もう一つは、その物質を使って作った「部品」としての意味である。トランジスタをたくさん集めて回路にした集積回路(IC)や、それを小さな板状に切り出したチップのことを、まとめて半導体と呼ぶことがある。ニュースで「半導体が不足している」と言うときは、多くの場合、この部品の意味で使われている。
このサイトでも、二つの意味の両方を使う。どちらの意味かは、話の流れで判断してほしい。迷いそうなところでは、「半導体の材料」「半導体の部品」のように言葉を補う。
半導体はどこで使われているか
部品としての半導体は、電気で動く製品のほとんどに入っている。
スマートフォンやパソコンでは、計算をするプロセッサー、データを覚えておくメモリ、画面や電池を制御する部品が半導体である。自動車では、エンジンやモーターの制御、ブレーキの補助、周りを見るカメラやセンサーに使われている。家電では、エアコンや冷蔵庫の省エネルギーの運転を支えている。インターネットの先にあるデータセンターでも、大量の半導体が計算とデータの保存を担っている。
電車や送電の設備では、大きな電力を効率よく切り替える部品として使われている。半導体は、目には見えにくい場所で、ほとんどの電子機器を動かしている部品である。
このページのまとめ
半導体は、電気の通りやすさが導体と絶縁体の間にある物質である。その価値は、温度や光、混ぜる元素、かける電圧などの条件で、電気の通りやすさを変えられることにある。この性質を使って、電気の流れを切り替えるトランジスタが作られ、電子機器の土台になっている。
次のページでは、半導体の中で電気を運ぶ「電子」と「正孔」と、混ぜる元素で性質を変える「n型」と「p型」を説明する。
- 用語:シリコンウェーハ:高純度のシリコン単結晶を薄い円板状に切り出し、表面を鏡のように磨いた基板。半導体チップの回路を作り込む土台となる。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
半導体の大きな特徴として、正しいものはどれか。
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答え:2. 条件によって、電気の通りやすさを大きく変えられる
半導体は、温度や光、混ぜる元素、かける電圧などの条件で、電気の通りやすさが大きく変わる。この性質が、スイッチとして使える理由である。
問2
電気の通りやすさを変えられる半導体で作る、電気の流れを切り替える部品を何と呼ぶか。
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答え:1. トランジスタ
トランジスタは、電圧をかけるだけで電気の流れを流したり止めたりできる、半導体で作るスイッチである。
問3
「半導体が不足している」というニュースの「半導体」は、多くの場合どの意味で使われているか。
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答え:3. 半導体を使って作った、集積回路やチップなどの部品
「半導体」は物質の意味と部品の意味の両方で使われる。ニュースの「不足」は、多くの場合、集積回路やチップなどの部品の意味である。