金属と半導体をつないだ接触にできる障壁の高さ(ショットキー障壁)が、ダイオードの電流を指数で決めることを、熱電子放出の式から読む。障壁の高さを0.7 eVと0.8 eVと仮定した例で、飽和電流と電流が流れ始める電圧の違いを確かめる。
障壁が0.1 eV高いと、電流の飽和値は約48分の1
- 接触のエネルギー図模式図
- 障壁の高さと飽和電流0.1 eVで、約48倍
図:左は、n型半導体と金属の接触のエネルギー図の模式図(高さは実際の比ではない)。右は、障壁の高さを0.7 eVと0.8 eVと仮定したときの、300 Kの飽和電流密度(横軸は対数の目盛り)。リチャードソン定数 110 A/(K²·cm²) はグラーツ工科大学の講義資料、計算は本サイト式
は電流密度、 は金属と半導体にかける電圧、 はショットキー障壁の高さである[1]。 はリチャードソン定数で、有効質量に依存する[2]。
n型半導体では、障壁の高さは金属の仕事関数 から半導体の電子親和力 を引いた値になる()[2]。p型では である[2]。
式のどこを見るか
見るのは、 の項である。この項により、電流の飽和値は、障壁の高さで指数的に決まる。障壁が高いほど、飽和値は小さい。温度も、 と指数の中の を通して、飽和値に強く効く。
角括弧の中は、「ダイオードの電流式」のページで見た式と同じ形である。順方向では電流が電圧の指数で増え、逆方向では飽和値で頭打ちになる。違いは、飽和値の決まり方にある。ここでは、障壁を越える電子の数、すなわち熱電子放出で決まる[1]。
式の理想係数は1で、ショットキーダイオードでは拡散による電流より熱電子放出が支配的である[1]。
実際の測定値は、式からのずれが出る。炭化ケイ素(SiC)の接触では、測った障壁の高さが計算値と違う。理由として、界面の化学反応、界面準位、界面の層、面の向き、洗浄の手順が挙げられている[2]。
数値例
n型シリコンのリチャードソン定数は 110 A/(K²·cm²) である[1]。障壁の高さは、例示のために 0.7 eV と 0.8 eV と仮定する(実際の金属で決まる値ではない)。温度は300 Kとし、熱エネルギー はボルツマン定数[3]から約25.85 meV になる(本サイトで計算)。
飽和電流密度 は、0.7 eV で約 A/cm²、0.8 eV で約 A/cm² になる(本サイトで計算)。障壁が0.1 eV高いと、飽和電流は約48分の1である(本サイトで計算)。
順方向で電流密度が 1 A/cm² に達する電圧は、 から、0.7 eV で約0.28 V、0.8 eV で約0.38 V である(本サイトで計算)。障壁が0.1 eV高いと、同じ電流を流すのに約0.1 V多く要る。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
金属と半導体の接触で、障壁の高さを大きくすると、飽和電流はどうなるか。
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答え:1. 指数的に小さくなる
飽和電流は exp(−qφB/kT) に比例する。障壁が高いほど、越えられる電子が減り、飽和電流は指数的に小さくなる。
問2
室温で、障壁の高さが0.1 eV違うと、飽和電流はおよそ何倍違うか。
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答え:3. 約48倍
比は exp(0.1 eV / kT) である。室温の kT は約25.9 meV なので、exp(3.87) で約48倍になる。