6. パワー半導体3 / 10ページ

ダイオード:電気の向きをそろえる

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. ダイオードは、何をするか
  2. 順方向と逆方向
  3. 厚い層をはさむ構造
  4. 順方向で、抵抗が下がる仕組み
  5. 切り替えのときの、逆回復
  6. ショットキーバリアダイオード
  7. 使い分けの考え方
  8. 順方向の電圧と、損失
  9. このページのまとめ
  10. 関係する工程と用語
  11. 次に読む
  12. 理解度チェック

パワー半導体の回路で、電気の向きをそろえ、電流の逃げ道を作るダイオードを説明する。厚い層で電圧を受け止める構造、順方向で電子と正孔がたまる仕組み、切り替えのときの逆回復、粒をためないショットキーバリアダイオードの違いと使い分けを扱う。

パワー用のダイオードの構造と、二つの種類の違い(模式図)

  1. p型厚い層ドーパントが少ないn型順方向では粒がたまるpn接合のダイオード厚い層が電圧を受け止める
  2. pn接合粒がたまる逆回復ありショットキー粒がたまらない逆回復ほぼなし高い電圧に向く速い切り替えに向く炭化ケイ素なら両立できる二つのダイオードたまる粒の有無で性質が違う
図:左は、パワー用のpn接合のダイオードの断面。p型とn型のあいだに、ドーパントの少ない厚い層があり、逆向きの電圧はこの層が受け止める。順方向では、この層に電子と正孔がたまる。右は、二つのダイオードの違い。pn接合は、粒がたまるので順方向の抵抗は小さいが、逆回復がある。ショットキーバリアダイオードは、粒がたまらず速いが、シリコンでは高い電圧に向かない。目盛りのない模式図、本サイトで作成

ダイオードは、何をするか

ダイオードは、電気を一方向にだけ流す部品である。パワー半導体の回路では、主に二つの役目で働く。

一つは、交流を直流に変える整流である。もう一つは、電流の逃げ道を作ることである。コイルやモーターのような部品は、スイッチを切っても、流れていた電流を流し続けようとする。行き場がなければ、高い電圧が生じて、スイッチが壊れるおそれがある。そこで、電流が回り込める道をダイオードで作る。この使い方のダイオードを、還流ダイオードと呼ぶ。

順方向と逆方向

ダイオードは、pn接合でできている(「pn接合とダイオード」のページ)。順方向に電圧をかけると、電流が流れる。逆方向に電圧をかけると、接合の近くに空乏層が広がり、電流はほとんど流れない。

パワー半導体のダイオードで大切なのは、逆方向に高い電圧がかかっても、電流を通さずに持ちこたえることである。電圧に耐える仕組みは、後のページで詳しく学ぶ。

厚い層をはさむ構造

高い電圧に耐えるため、パワー用のpn接合のダイオードは、p型とn型のあいだに、ドーパントの少ない厚い層をはさんだ形をしている。逆方向の電圧は、この厚い層が受け止める。

ところが、この層は、ドーパントが少ないので、電気が流れにくい。そのままでは、順方向に電流を流すときの抵抗が大きくなる。

順方向で、抵抗が下がる仕組み

順方向に電圧をかけると、p型の側から正孔が、n型の側から電子が、厚い層へ流れ込む。層の中に、電子と正孔がたくさんたまるので、電気を運ぶ粒が増え、抵抗が大きく下がる。この働きを、伝導度変調と呼ぶ。この仕組みのおかげで、耐える電圧が高くても、順方向の損失を小さくできる。

切り替えのときの、逆回復

ただし、この仕組みには代償がある。順方向でたまった電子と正孔は、すぐには消えない。順方向から逆方向に切り替えると、たまった粒を追い出すまでの短い間、逆向きの電流が流れる。これを、逆回復と呼ぶ。

逆回復の電流は、切り替えの損失を増やし、ノイズの原因にもなる。そこで、結晶にわざと欠陥を作り、粒が消えるまでの時間を短くして、回復を速くする工夫がある。ただし、粒が早く消えるほど、順方向の抵抗は上がる。回復の速さと、順方向の損失は、引っ張り合いの関係にある。

ショットキーバリアダイオード

別の仕組みのダイオードもある。ショットキーバリアダイオードは、半導体と金属を接触させて、電気を一方向に流す。電気を運ぶのは、n型なら電子だけで、反対の種類の粒はたまらない。そのため、逆回復がほとんどなく、速く切り替えられる。

弱点は、シリコンでは、高い電圧に耐えにくいことと、逆向きに漏れる電流が比較的大きいことである。炭化ケイ素で作ると、高い電圧にも耐えられるようになり、速い切り替えと高い電圧を両立できる。

使い分けの考え方

比較的低い電圧で速く切り替えるなら、シリコンのショットキーバリアダイオードが向く。高い電圧で大きな電流を流すなら、シリコンのpn接合のダイオードで、回復を速くしたものが使われる。高い電圧で、しかも速く切り替えたいなら、炭化ケイ素のショットキーバリアダイオードが選ばれる。

順方向の電圧と、損失

ダイオードに順方向の電流を流すと、部品の両端に、わずかな電圧が生じる。これを、順方向の電圧と呼ぶ。電流が大きいほど、この電圧と電流の積である電力が、熱として失われる。ショットキーバリアダイオードは、この順方向の電圧が比較的小さい。大きな電流を流す整流の回路では、ダイオードの損失が、電源全体の効率を左右することもある。

ダイオードの損失は、順方向の損失と、逆回復を含む切り替えの損失に分けられる。部品を選ぶときは、回路で流す電流の大きさと、切り替えの速さの両方を見て、どちらの損失が大きいかを考える。

このページのまとめ

ダイオードは、整流と電流の逃げ道に使われる。パワー用のpn接合のダイオードは、厚い層で電圧を受け止め、順方向では電子と正孔をためて抵抗を下げる。その代償として、切り替えのときに逆回復が起きる。ショットキーバリアダイオードは、粒をためないので速く切り替えられるが、シリコンでは高い電圧に向かない。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

コイルやモーターにつながる回路で、電流の逃げ道としてダイオードを入れる主な理由はどれか。

答えと解説を見る

答え:1. スイッチを切っても流れ続けようとする電流の行き場を作り、高い電圧の発生を防ぐため

コイルやモーターは、電流を流し続けようとする。行き場がないと高い電圧が生じてスイッチが壊れるので、還流ダイオードで逃げ道を作る。

問2

pn接合のダイオードで、逆回復が起きる原因はどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 順方向でたまった電子と正孔を、切り替え後に追い出すまで時間がかかるから

順方向で厚い層にたまった電子と正孔は、すぐには消えない。追い出すまでの間、逆向きの電流が流れる。

問3

ショットキーバリアダイオードの特徴として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 反対の種類の粒がたまらないので、逆回復がほとんどなく、速く切り替えられる

電気を運ぶのは一種類の粒だけで、反対の粒がたまらない。そのため逆回復がほとんどない。シリコンでは高い電圧に向かない。