6. パワー半導体3 / 3ページ

電力を変換する回路:インバーターとコンバーター

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 電力の形を変える四つの変換
  2. 交流を直流にする:整流
  3. 直流の電圧を変える:コンバーター
  4. 直流を交流にする:インバーター
  5. パルスの幅で、なめらかな波を作る
  6. 損失はどこで生まれるか
  7. このページのまとめ
  8. 関係する工程と用語
  9. 次に読む
  10. 理解度チェック

パワー半導体を組み合わせて電力の形を変える回路を説明する。交流を直流にする整流、直流の電圧を変えるコンバーター、直流を交流にするインバーター、パルスの幅で出力を調整する仕組みと、損失の内訳、切り替えを速くする利点を扱う。

インバーターとパルス幅変調(模式図)

  1. 直流S1S2S3S4負荷S1・S4 と S2・S3 を交互に入切四つのスイッチで向きを入れ替える直流から、向きの変わる電圧を作る
  2. 時間電圧パルス幅変調入の時間の長さで、平均の電圧を変える
図:左は、四つのスイッチで直流を交流にするインバーターの基本の形。S1とS4が入のときと、S2とS3が入のときで、負荷(モーターなど)にかかる電圧の向きが入れ替わる。右は、パルス幅変調。入の時間の長さ(四角の幅)を少しずつ変えると、平均の電圧はなめらかな波(線)に近づく。模式図、本サイトで作成

電力の形を変える四つの変換

電気には、直流と交流がある(「電気の基礎」のページ)。発電所から届く電気は交流で、電池や太陽電池が作る電気は直流である。電気を使う機器は、それぞれ決まった形の電気を求める。そこで、電力の形を変える回路が必要になる。

変換には、大きく四つの組み合わせがある。交流を直流にする、直流の電圧を変える、直流を交流にする、交流の電圧や周波数を変える、である。どれも、パワー半導体のスイッチと、電気をためるコンデンサやコイルを組み合わせて作る。

交流を直流にする:整流

交流を直流にするには、ダイオードで電気の向きをそろえる。ダイオードを四つ組み合わせると、交流の向きが入れ替わっても、出口ではいつも同じ向きの電流になる。

向きはそろっても、電圧の大きさは波打ったままである。コンデンサで電気をためて放すことで、波を小さくして直流に近づける。

直流の電圧を変える:コンバーター

直流の電圧を下げたり上げたりする回路を、DC-DCコンバーターと呼ぶ。

電圧を下げる回路では、スイッチを速く入切して、電気を細かく区切って送る。入の時間の割合を小さくすると、平均の電圧が下がる。区切られた電気は、コイルとコンデンサでならして、なめらかな直流にする。

コイルは、流れている電流を保とうとする部品である。電圧を上げる回路では、コイルに電流を流して蓄えたエネルギーを、スイッチを切ったときに出口へ押し出すことで、入口より高い電圧を作る。

パソコンやサーバーの中では、こうしたコンバーターで、プロセッサやメモリに合わせた低い電圧を作っている。

直流を交流にする:インバーター

直流を交流にする回路を、インバーターと呼ぶ。電気自動車では電池の直流をモーターを回す交流に、太陽光発電では直流を家庭や電力網で使う交流に変える。

基本の形では、四つのスイッチを、二つずつ組にして交互に入切する。片方の組が入のときは、出口に一方の向きの電圧がかかり、もう片方の組が入のときは、逆向きの電圧がかかる。こうして、向きが行ったり来たりする電圧を作る。モーターを回すには、三組のスイッチの対を使い、三つの相の交流を作ることが多い。

パルスの幅で、なめらかな波を作る

スイッチは入か切しかないので、そのままでは、角ばった電圧しか作れない。そこで、スイッチを非常に速く入切し、入の時間の長さ(パルスの幅)を少しずつ変える。入の時間が長い区間では平均の電圧が高く、短い区間では低くなる。

この平均をコイルやモーターの巻き線がならすと、なめらかな波に近い電流が流れる。この方法を、パルス幅変調(PWM)と呼ぶ。パルスの幅の変え方で、交流の大きさと周波数を自由に決められるので、モーターの回る速さや力を細かく制御できる。

損失はどこで生まれるか

変換の回路の損失は、主にパワー半導体で生まれる。一つは、入のときに抵抗を電流が流れることによる導通の損失である。もう一つは、入と切を切り替える途中で、電圧と電流が同時にかかる短い時間に生まれる切り替えの損失である(「パワー半導体の種類」のページ)。

切り替えの回数を増やすほど、切り替えの損失の合計は増える。一方で、切り替えを速くすると、電気をならすためのコイルやコンデンサを小さくでき、回路全体を小さく軽くできる。切り替えの損失が小さい炭化ケイ素や窒化ガリウムの部品は、変換の効率を保ったまま、回路を小さくするのに役立つ。

損失は熱になるので、熱を逃がす仕組みも回路の大きさを決める。損失を減らすことは、電力を無駄にしないだけでなく、冷やすための部品を小さくすることにもつながる。

このページのまとめ

電力の形を変える回路は、パワー半導体のスイッチと、コンデンサやコイルを組み合わせて作る。整流は交流を直流に、コンバーターは直流の電圧を、インバーターは直流を交流に変える。スイッチを速く入切し、パルスの幅を変えることで、平均の電圧や交流の波を作る。損失は導通と切り替えで生まれ、切り替えを速くすると回路を小さくできる。

  • 用語:パワー半導体:電力の変換や制御に使う半導体素子の総称。大きな電圧や電流を扱い、スイッチ動作で電力の形を変える。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

直流を交流に変える回路はどれか。

答えと解説を見る

答え:2. インバーター

インバーターは、スイッチを交互に入切して向きの入れ替わる電圧を作り、直流を交流に変える。

問2

パルス幅変調(PWM)で、出力の電圧を調整するために変えるものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. スイッチの入の時間の長さ(パルスの幅)

スイッチを速く入切し、入の時間の長さを変えることで、平均の電圧を変える。

問3

切り替えを速くすることの利点として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:2. 電気をならすコイルやコンデンサを小さくでき、回路を小さく軽くできる

切り替えを速くすると、電気をならすための部品を小さくできる。ただし、切り替えの回数が増えるので、切り替えの損失の小さい部品が求められる。