pn接合ダイオードの電流を、電圧の指数で表すショックレーの式から、順方向では電圧が約60 mV増えるごとに電流が10倍になり、逆方向では飽和電流の大きさで頭打ちになることを読む。実際のダイオードの測定例で、理想の式とのずれも確かめる。
順方向の電流は、電圧とともに指数で増える
- 電流と電圧縦は対数。直線に見える
- 電流を10倍にする電圧理想は約60 mV
図:左は、順方向の電流 I と飽和電流 IS の比の対数(縦は10の何乗かを表す)。右は、電流を10倍にするのに必要な電圧の増加。測定例の理想係数は arXiv:1608.05638 の値(47.8℃での報告値)。右の測定例は320.95 Kで計算、左の曲線は300 Kで計算。計算は本サイト式
はダイオードを流れる電流、 は両端にかける電圧である[1]。 は飽和電流で、ダイオードの作りで決まる[1]。 は理想係数で、理想的なpn接合では1、実際のダイオードでは1より大きい[1]。 は熱電圧で、室温で約25.8 mV である[1]。
式のどこを見るか
見るのは、指数の中の である。 が の数倍以上の順方向では、 が無視でき、電流は にほぼ比例する。電圧が少し増えるだけで、電流は桁で変わる。
電流を10倍にするのに必要な電圧の増加は、 である。 なら約60 mV で、 が大きいほど、より大きな電圧が要る。
逆方向( が負で、絶対値が の数倍以上)では、指数の項が0に近づき、 になる。電流は、飽和電流の大きさで頭打ちになる。逆向きには、ほとんど電流が流れない。
は、温度や材料で変わる。「真性キャリア濃度と温度」のページで見たとおり、熱で生まれるキャリアは温度で増えるため、逆方向のリークは温度とともに増える。
式は、順方向で、ある電圧を境に電流が急に流れ始める振る舞いを、すでに表している。
数値例
300 Kの熱電圧は、ボルツマン定数と電気素量[2]から、約25.9 mV になる(本サイトで計算)。 のとき、電流が10倍になる電圧の増加は約59.5 mV()である(本サイトで計算)。
V では、 から約 倍になる。0.1 V 増やして0.7 V にすると約 倍で、約48倍になる(本サイトで計算)。
実際のダイオードの測定例では、47.8℃で、飽和電流 が約10.5 nA、理想係数 が約1.79 と報告されている[1]。この値を式に入れると、0.3 V で約4.5 μA、0.5 V で約0.26 mA になる(本サイトで計算)。この場合、電流が10倍になる電圧の増加は、 から約114 mV で、300 Kの理想(約60 mV)の約1.9倍である(本サイトで計算)。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
理想的なpn接合(n = 1)の順方向で、電流を10倍にするには、室温でおよそ何 mV 電圧を上げればよいか。
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答え:2. 約60 mV
電流は exp(V/VT) に比例する。10倍にする電圧の増加は VT ln10 で、室温では約60 mV である。
問2
十分に大きな逆方向の電圧をかけたとき、電流はおよそいくつになるか。
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答え:2. 飽和電流の大きさで頭打ちになる
逆方向では、指数の項が0に近づき、I はほぼ −IS になる。電流は IS の大きさで頭打ちになる。