ダイオードの電流式:電圧0.06 Vで電流が10倍になる

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

pn接合ダイオードの電流を、電圧の指数で表すショックレーの式から、順方向では電圧が約60 mV増えるごとに電流が10倍になり、逆方向では飽和電流の大きさで頭打ちになることを読む。実際のダイオードの測定例で、理想の式とのずれも確かめる。

順方向の電流は、電圧とともに指数で増える

  1. 100104108101200.350.7順方向の電圧(V)I/ISn = 1n = 1.79電流と電圧縦は対数。直線に見える
  2. 理想(n=1)60 mV測定例(n≈1.79)114 mV電流10倍あたり電流を10倍にする電圧理想は約60 mV
図:左は、順方向の電流 I と飽和電流 IS の比の対数(縦は10の何乗かを表す)。右は、電流を10倍にするのに必要な電圧の増加。測定例の理想係数は arXiv:1608.05638 の値(47.8℃での報告値)。右の測定例は320.95 Kで計算、左の曲線は300 Kで計算。計算は本サイト

式

I=IS[exp⁡(VnVT)−1]

I はダイオードを流れる電流、V は両端にかける電圧である[1]。IS は飽和電流で、ダイオードの作りで決まる[1]。n は理想係数で、理想的なpn接合では1、実際のダイオードでは1より大きい[1]。VT=kT/q は熱電圧で、室温で約25.8 mV である[1]。

式のどこを見るか

見るのは、指数の中の V/(nVT) である。V が VT の数倍以上の順方向では、−1 が無視でき、電流は ISexp⁡(V/nVT) にほぼ比例する。電圧が少し増えるだけで、電流は桁で変わる。

電流を10倍にするのに必要な電圧の増加は、nVTln⁡10 である。n=1 なら約60 mV で、n が大きいほど、より大きな電圧が要る。

逆方向(V が負で、絶対値が VT の数倍以上)では、指数の項が0に近づき、I≈−IS になる。電流は、飽和電流の大きさで頭打ちになる。逆向きには、ほとんど電流が流れない。

IS は、温度や材料で変わる。「真性キャリア濃度と温度」のページで見たとおり、熱で生まれるキャリアは温度で増えるため、逆方向のリークは温度とともに増える。

式は、順方向で、ある電圧を境に電流が急に流れ始める振る舞いを、すでに表している。

数値例

300 Kの熱電圧は、ボルツマン定数と電気素量[2]から、約25.9 mV になる(本サイトで計算)。n=1 のとき、電流が10倍になる電圧の増加は約59.5 mV(VTln⁡10)である(本サイトで計算)。

V=0.6 V では、I/IS=exp⁡(0.6/0.0259) から約 1.2×1010 倍になる。0.1 V 増やして0.7 V にすると約 5.7×1011 倍で、約48倍になる(本サイトで計算)。

実際のダイオードの測定例では、47.8℃で、飽和電流 IS が約10.5 nA、理想係数 n が約1.79 と報告されている[1]。この値を式に入れると、0.3 V で約4.5 μA、0.5 V で約0.26 mA になる(本サイトで計算)。この場合、電流が10倍になる電圧の増加は、nVTln⁡10 から約114 mV で、300 Kの理想(約60 mV)の約1.9倍である(本サイトで計算)。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

理想的なpn接合(n = 1)の順方向で、電流を10倍にするには、室温でおよそ何 mV 電圧を上げればよいか。

答えと解説を見る

答え:2. 約60 mV

電流は exp(V/VT) に比例する。10倍にする電圧の増加は VT ln10 で、室温では約60 mV である。

問2

十分に大きな逆方向の電圧をかけたとき、電流はおよそいくつになるか。

答えと解説を見る

答え:2. 飽和電流の大きさで頭打ちになる

逆方向では、指数の項が0に近づき、I はほぼ −IS になる。電流は IS の大きさで頭打ちになる。

出典

  1. Measurements and analysis of current-voltage characteristic of a pn diode for an undergraduate physics laboratory(arXiv:1608.05638)(外部サイト)arXiv確認日:
  2. CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants: 2018(NIST SP 961)(外部サイト)米国国立標準技術研究所(NIST)確認日: