空乏層と電界:電圧で広がる幅と、耐圧の目安

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

pn接合の空乏層の幅が、不純物の濃度と電圧でどう決まるかを式から読む。逆方向の電圧で幅が広がり、電界の最大値も増える。シリコンの例で幅と電界を求め、絶縁破壊電界から耐圧の目安を見積もる。

逆方向の電圧で空乏層が広がり、濃度が低いほど耐圧が高い

  1. 0120510逆方向の電圧(V)幅(μm)空乏層の幅電圧の平方根で広がる
  2. 1015 cm⁻³約296 V1016 cm⁻³約30 V1017 cm⁻³約3 V耐圧の目安(V、対数)濃度と耐圧の目安濃度10分の1で、耐圧は10倍
図:左は、NA=ND=10の16乗 cm⁻³ のシリコンで、逆方向の電圧と空乏層の幅の関係(内蔵電位0.72 V)。右は、片側の濃度ごとの耐圧の目安(絶縁破壊電界3.0×10⁵ V/cm、横軸は対数の目盛り)。式は Hadley(グラーツ工科大学)、比誘電率は CERN、絶縁破壊電界は東芝デバイス&ストレージ。計算は本サイト

式

W=2ϵ(NA+ND)(Vbi−V)qNAND

W は空乏層の全体の幅、ϵ は半導体の誘電率、NA と ND はアクセプタとドナーの濃度、Vbi は内蔵電位、V は外からかけた電圧(順方向を正)、q は電気素量である[1]。

空乏層の最大の電界は、n型の側の端までの幅 xn を使って、次のように表せる[1]。

Emax=qNDxnϵ

式のどこを見るか

見るのは、平方根の中の Vbi−V である。逆方向の電圧をかけると V が負になり、Vbi−V が大きくなって、幅 W が広がる。電圧が4倍になれば、幅は約2倍である。

濃度は、分母に入っている。濃度が高いほど、幅は狭い。濃度が低い側ほど、空乏層は深くまで広がる[1]。

電界の最大値 Emax も、逆方向の電圧とともに大きくなる。この電界が、材料の絶縁破壊電界に達すると、電流が急に流れ始める。そこまでの電圧が、耐圧の目安になる。

片側の濃度がもう片側よりずっと低いpn接合では、近似で、Emax=2qN(Vbi−V)/ϵ となり、耐圧は ϵEc2/(2qN) で見積もれる。ここで N は濃度の低い側の濃度、Ec は絶縁破壊電界である。濃度を下げるほど、耐圧は高くなる。

数値例

シリコンの比誘電率は11.9である[2]。真空の誘電率と電気素量の値は、NISTの値[3]を使う。

NA=ND=1016 cm−3、Vbi=0.72 V(「内蔵電位」のページの値)とする。電圧がかかっていないとき、空乏層の幅は約0.44 μm、Emax は約 3.3×104 V/cm である。逆方向に5 V かけると、幅は約1.2 μm、Emax は約 9.3×104 V/cm に増える(本サイトで計算)。

シリコンの絶縁破壊電界の目安は、3.0×105 V/cm である[4]。この値と、片側の濃度 1016 cm−3 の近似式から、耐圧の目安は約30 V になる。濃度を 1015 cm−3 に下げると約300 V、1017 cm−3 に上げると約3 V である(本サイトで計算)。濃度が10分の1になると、耐圧は10倍になる。

絶縁破壊電界は、濃度などによっても変わるため、この耐圧は目安として読む。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

pn接合に逆方向の電圧をかけると、空乏層の幅はどうなるか。

答えと解説を見る

答え:2. 広くなる

幅は √(Vbi − V) に比例する。逆方向では V が負になり、Vbi − V が大きくなるため、幅が広がる。

問2

片側の濃度を10分の1にすると、耐圧の目安はどうなるか。

答えと解説を見る

答え:3. 10倍になる

耐圧の目安は ε Ec²/(2qN) で、濃度 N に反比例する。濃度が10分の1になると、10倍になる。

出典

  1. Abrupt pn junctions in the depletion approximation(外部サイト)グラーツ工科大学(W. Hadley)確認日:
  2. General Characteristics of Silicon(外部サイト)CERN(半導体検出器の資料)確認日:
  3. CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants: 2018(NIST SP 961)(外部サイト)米国国立標準技術研究所(NIST)確認日:
  4. ワイドバンドギャップ半導体とは(外部サイト)東芝デバイス&ストレージ株式会社確認日: