吸収係数と侵入長:光はシリコンの中をどこまで進むか

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

光が材料の中で弱まる様子を表す吸収係数の式から、光が1/eに弱まる深さである侵入長を読む。シリコンで波長が長いほど深くまで届くことを、400 nmから1,100 nmの値で確かめ、10 μmの層でどれだけ吸収されるかを見積もる。

波長が長いほど、光は深くまで届く

  1. 1001021044007001100波長(nm)吸収係数(cm⁻¹)吸収係数と波長長い波長ほど、吸収されにくい
  2. 400 nmほぼ100%600 nm98%800 nm57%900 nm26%1000 nm6%10 μmで吸収される割合波長が長いと、大半が通り抜ける
図:左は、シリコンの吸収係数の波長変化(縦は対数の目盛り。1目盛りで10倍)。右は、厚さ10 μmの層で吸収される光の割合。吸収係数はPVEducation「Optical Properties of Silicon」(300 K)、割合は本サイトで計算

式

I(x)=I0exp⁡(−αx)

I0 は表面での光の強さ、I(x) は表面から深さ x に届いた光の強さである。α は吸収係数で、材料と波長で決まり、単位は cm−1 を使う[2]。光は、深さとともに指数関数の形で弱まる。

光が表面の約36%(1/e)に弱まる深さを、侵入長と呼ぶ[3]。

δ=1α

吸収係数は、光の波長 λ と、材料の消衰係数 k から α=4πk/λ と表せる[2]。

式のどこを見るか

見るのは、指数の中の αx である。α が大きいほど、浅いところで光が吸収される。侵入長 1/α は、その深さの目安になる。

半導体の α は、波長で桁違いに変わる。バンドギャップより光子のエネルギーが小さい光は、価電子帯の電子を持ち上げられないので、吸収されにくい[2]。バンドギャップの付近では、光に反応できる電子が限られるため、吸収は弱い。光子のエネルギーが大きくなるほど、反応できる電子が増え、吸収は強まる[2]。

したがって、波長が短いほど表面の近くで吸収され、波長が長いほど深くまで届く。

層の厚さ d で吸収される割合は、1−exp⁡(−αd) で求められる。光を電気に変える部品では、必要な厚さがこの式で見積もれる。

数値例

300 Kのシリコンの吸収係数は、400 nmで 9.52×104 cm−1、600 nmで 4.14×103 cm−1、800 nmで 8.5×102 cm−1、1,000 nmで 6.4×101 cm−1、1,100 nmで 3.5 cm−1 である[1]。

侵入長 1/α は、400 nmで約0.11 μm、600 nmで約2.4 μm、800 nmで約12 μm、900 nmで約33 μm、1,000 nmで約160 μm、1,100 nmで約2.9 mm になる(本サイトで計算)。波長が2.5倍になるだけで、侵入長は4桁以上長くなる。

厚さ10 μmの層で吸収される割合は、600 nmで約98%、800 nmで約57%、900 nmで約26%、1,000 nmで約6%である(本サイトで計算)。波長の短い光は薄い層でほぼ吸収され、波長の長い光は、10 μmでは大半が通り抜ける。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

シリコンで、吸収係数が大きい光は、どう進むか。

答えと解説を見る

答え:2. 表面の近くで吸収される

侵入長は 1/α である。α が大きいほど侵入長が短く、表面の近くで吸収される。

問2

シリコンに波長400 nmの光と1,000 nmの光を当てたとき、深くまで届くのはどちらか。

答えと解説を見る

答え:2. 1,000 nm

400 nm の侵入長は約0.11 μm、1,000 nm は約160 μm である。波長が長いほど、深くまで届く。

出典

  1. Optical Properties of Silicon(外部サイト)PVEducation(C. Honsberg、S. Bowden)確認日:
  2. Absorption Coefficient(外部サイト)PVEducation(C. Honsberg、S. Bowden)確認日:
  3. Absorption Depth(外部サイト)PVEducation(C. Honsberg、S. Bowden)確認日: