直接遷移と間接遷移:光を出せる材料と出せない材料

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

電子と正孔が結びついて光を出すとき、運動量をそろえる必要がある。バンドの底が同じ位置にある直接遷移型と、ずれている間接遷移型で、光の出やすさが約1,000倍違うことを読む。シリコンとヒ化ガリウムで、出せる波長も確かめる。

伝導帯の底と価電子帯の頂上が、そろっているか、ずれているか

  1. 光運動量 →運動量が変わらない直接遷移GaAs など。光を出しやすい
  2. フォノン光運動量がずれ、フォノンが必要間接遷移Si、Ge など。光を出しにくい
図:横軸は結晶の中での電子の運動量、縦軸はエネルギーの模式図。左の直接遷移では、運動量を変えずに光を出して結びつく。右の間接遷移では、結晶の振動(フォノン)が運動量の差を埋める必要がある

式

hν≈Eg(直接遷移)
hν≈Eg±Eph(間接遷移)

hν は光の粒(光子)1個のエネルギー、Eg はバンドギャップである。Eph は、結晶の原子の振動の粒(フォノン)が持つエネルギーで、間接遷移では、このフォノンが加わる。

光を出すときは、電子が伝導帯から価電子帯に落ちて、正孔と結びつく。このとき、電子の運動量が保たれる必要がある。

式のどこを見るか

見るのは、フォノンの有無である。光子は、バンドギャップ付近のエネルギーでは、運動量がほぼ0である[1]。伝導帯の底と価電子帯の頂上が同じ運動量の位置にあれば(直接遷移)、運動量を変えずに、光だけを出して結びつける[1]。

二つの位置がずれていれば(間接遷移)、光子は運動量を渡せない。フォノンが差を埋めたときだけ、光を出して結びつける[1]。フォノンが関わる段階が入るため、光を出す過程は、直接遷移より大幅に遅くなる[1]。

結果として、間接遷移の材料では、電子と正孔が光を出さずに、結晶の振動などで熱になって失われる割合が増える[2]。

発光ダイオード(LED)や半導体レーザーが、ほとんど直接遷移の材料で作られるのは、この違いによる[1]。

式の Eg から、出る光の波長の目安も読める。λ[nm]≈1240/Eg[eV] である。

数値例

結晶のシリコンとゲルマニウムは、間接遷移の材料である。ヒ化ガリウム(GaAs)は、直接遷移の材料である[1]。

発光の効率の目安として、直接遷移の材料では約1、間接遷移の材料では約0.001とされる[2]。約1,000倍の違いである。

バンドギャップは、シリコンが1.12 eV、GaAsが1.43 eV である[3]。hc は約1,240 eV·nm(プランク定数と光の速さは NIST の値[4]から計算)なので、出せる光の波長の目安は、シリコンで約1,107 nm、GaAsで約867 nm になる(本サイトで計算)。どちらも近赤外である。

シリコンはバンドギャップから見て近赤外の光なら出せそうに見えるが、間接遷移のため、効率が桁違いに低い。光を出す部品に、シリコンではなくGaAsなどの化合物半導体が使われる理由は、ここにある。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

間接遷移の材料で、光を出して電子と正孔が結びつくとき、運動量の差を埋めるのは何か。

答えと解説を見る

答え:2. フォノン

光子の運動量はほぼ0なので、差を埋められない。結晶の振動の粒であるフォノンが関わる必要があり、そのため光を出す過程が遅くなる。

問2

LEDやレーザーに、ほとんど直接遷移の材料が使われるのはなぜか。

答えと解説を見る

答え:1. 光を出す効率が高いから

直接遷移では、運動量を保ったまま光を出して結びつけるため、効率が高い。間接遷移とは、約1,000倍の違いがあるとされる。

出典

  1. Direct and indirect band gaps(外部サイト)Wikipedia確認日:
  2. Light Emission(Integrated Photonic Devices 講義資料)(外部サイト)国立清華大学(M.-C. Lee)確認日:
  3. ワイドバンドギャップ半導体とは(外部サイト)東芝デバイス&ストレージ株式会社確認日:
  4. CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants: 2018(NIST SP 961)(外部サイト)米国国立標準技術研究所(NIST)確認日: