二つ以上の元素を組み合わせて作る化合物半導体が、シリコンとどう違い、どんな場面で使われるのかを説明する。周期表での元素の組み合わせ方、電子の動きやすさとバンドギャップの違い、光を出す性質、作る難しさと使い分けを扱う。
化合物半導体の組み合わせと使い分け(模式図)
- 元素の組み合わせ方Gaはガリウム、Asはヒ素、Nは窒素、Siはケイ素
- 得意なことによる使い分けどちらが優れているかではなく、得意なことが違う
図:左は、化合物半導体の元素の組み合わせ方。外側の電子が三つの元素と五つの元素を組み合わせると、平均して四つになり、シリコンと同じように隣の原子と手をつなげる。右は、材料と得意な用途の組み合わせの例。模式図、本サイトで作成半導体は、シリコンだけではない
ここまでのページでは、半導体の代表としてシリコンを使って説明してきた。シリコンは、一種類の元素だけでできた半導体である。このような半導体を「元素半導体」と呼ぶ。
一方、二つ以上の元素を組み合わせて作る半導体もある。これを「化合物半導体」と呼ぶ。分野「デバイス」で登場した炭化ケイ素や窒化ガリウムも、化合物半導体である。このページでは、化合物半導体がどのようなもので、なぜ使われるのかを見ていく。
元素の組み合わせ方
シリコンの原子は、外側に四つの電子を持ち、隣の四つの原子と電子を出し合って、手をつなぐように結びついている。分野の二つ目のページで学んだ、この結びつき方が、半導体の性質のもとになっている。
化合物半導体は、外側の電子の数が違う元素を組み合わせて、平均すると四つになるようにして作ることが多い。たとえば、外側の電子が三つの元素と、五つの元素を組み合わせる。元素の周期表で言えば、三つ目の列の仲間と五つ目の列の仲間の組み合わせである。ガリウムとヒ素を組み合わせたヒ化ガリウム、ガリウムと窒素を組み合わせた窒化ガリウムなどがある。
外側の電子が二つの元素と六つの元素を組み合わせたものや、同じ四つの仲間であるケイ素と炭素を組み合わせた炭化ケイ素もある。さらに、三種類や四種類の元素を混ぜて、性質を細かく調整したものもある。
電子の動きやすさが違う
化合物半導体の中には、電子がシリコンの中よりも動きやすいものがある。電子が動きやすいと、トランジスタのスイッチの切り替えを速くでき、非常に高い周波数の信号を扱える。
分野「デバイス」の通信用の半導体のページで、送るための増幅器に化合物の半導体が使われることがあると書いたのは、この性質のためである。
バンドギャップが違う
分野の前のページで学んだバンドギャップの大きさも、材料によって違う。化合物半導体では、元素の組み合わせや混ぜる割合を変えることで、バンドギャップの大きさを広い範囲で選べる。
バンドギャップの大きい炭化ケイ素や窒化ガリウムは、強い電圧をかけても壊れにくく、高い温度でも性質を保ちやすい。そのため、パワー半導体に使われる。
光を出しやすい
化合物半導体の大きな特徴の一つが、光を出しやすいことである。
伝導帯の電子が価電子帯の正孔と結びつくと、すき間の分のエネルギーが出てくる。シリコンでは、このエネルギーの多くが、光ではなく、結晶の揺れ(熱)として出ていきやすい。電子と正孔が結びつくときに、結晶の揺れの助けが必要になる性質があるためである。
一方、ヒ化ガリウムや窒化ガリウムなどの多くの化合物半導体では、電子と正孔が直接結びついて、エネルギーを光として出しやすい。そのため、発光ダイオードや半導体レーザーには、化合物半導体が使われる。
バンドギャップの大きさによって、出る光の色が決まる。元素の組み合わせや割合を変えてバンドギャップを選べることは、出したい色の光を作るうえで役に立つ。
作る難しさ
化合物半導体には、シリコンにない良さがある一方で、作る難しさもある。
まず、大きく、欠陥の少ない結晶を作るのが難しい。二つ以上の元素の割合を、結晶の全体で正確にそろえる必要があるからである。そのため、ウェーハはシリコンより小さく、高価になりやすい。
また、別の材料の基板の上に、化合物半導体の薄い結晶の膜を育てて使うことも多い。このとき、基板と膜で原子の並ぶ間隔が違うと、境目に結晶の乱れが生まれやすい。乱れを抑えるための工夫が、性能を左右する。
さらに、シリコンでは表面に質のよい酸化膜を簡単に作れたが、多くの化合物半導体では、それが難しい。そのため、トランジスタの作り方も、シリコンとは違う工夫が必要になる。
使い分けの考え方
こうした違いから、半導体の材料は、用途に応じて使い分けられている。
* たくさんの回路を一つのチップに集め、計算や記憶をする部品には、シリコンが使われる。大きく質のよい結晶と、良い酸化膜を作れ、製造の技術も積み重ねられているからである。* 光を出す部品には、光を出しやすい化合物半導体が使われる。* 非常に高い周波数を扱う部品には、電子が動きやすい化合物半導体が使われることがある。* 高い電圧や大きな電力を扱う部品には、シリコンのほか、バンドギャップの大きい炭化ケイ素や窒化ガリウムが使われる。
シリコンと化合物半導体は、どちらかが優れているというより、得意なことが違う材料である。
このページのまとめ
化合物半導体は、二つ以上の元素を組み合わせて作る半導体で、外側の電子の数が平均して四つになる組み合わせが多い。電子が動きやすいもの、バンドギャップの大きいもの、光を出しやすいものがあり、組み合わせや割合でバンドギャップを選べる。一方で、大きく質のよい結晶や、良い酸化膜を作るのが難しい。計算や記憶にはシリコン、光にはヒ化ガリウムや窒化ガリウムなど、電力には炭化ケイ素や窒化ガリウムと、得意なことに応じて使い分けられる。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
化合物半導体の説明として、正しいものはどれか。
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答え:2. 二つ以上の元素を組み合わせて作る半導体
化合物半導体は、二つ以上の元素を組み合わせて作る半導体である。一種類の元素だけでできたシリコンのようなものは、元素半導体と呼ぶ。
問2
発光ダイオードに、シリコンではなく化合物半導体が使われる理由として、正しいものはどれか。
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答え:2. 多くの化合物半導体では、電子と正孔が直接結びついて、エネルギーを光として出しやすいから
シリコンでは、電子と正孔が結びつくときのエネルギーの多くが熱として出やすい。多くの化合物半導体では、直接結びついて光を出しやすいので、光を出す部品に使われる。
問3
化合物半導体を作る難しさとして、本文で挙げているものはどれか。
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答え:1. 大きく欠陥の少ない結晶を作るのが難しく、多くの場合、表面に質のよい酸化膜を作るのも難しい
二つ以上の元素の割合を結晶の全体でそろえる必要があり、大きく質のよい結晶を作るのが難しい。また、多くの化合物半導体では、シリコンのように質のよい酸化膜を簡単には作れない。