異なる材料の結晶を重ねるとき、原子の間隔(格子定数)の差の割合である格子不整合の式から、どこまで重ねられるかの目安を読む。シリコンとヒ化ガリウムの値で、約4.1%という差が何を意味するかを確かめる。
原子の間隔が違うと、並びがずれていく
- 原子の並びの食い違い模式図。ずれは強調している
- 格子定数の比べ目盛りは5.4 Åから始めている
図:左は、下地と膜の原子の並びが食い違っていく様子の模式図(ずれは実際より大きく描いている)。右は、シリコンとヒ化ガリウム(GaAs)の格子定数を数直線に置いたもの。値は Schubert「Materials II」、差の割合は本サイトで計算式
は下地(基板)の結晶の格子定数、 はその上に成長させる膜の結晶の格子定数である。格子定数は、結晶の中で原子が並ぶ間隔の基準になる長さで、単位にはオングストローム(Å、0.1 nm)を使う。 は、その差を下地の値で割った割合で、格子不整合と呼ぶ。
式のどこを見るか
見るのは、分子の符号と大きさである。 が より大きいとき、 は正になる。膜の原子は、下地に合わせて間隔を縮めた状態で並ぶことになる。逆に が小さいと、 は負で、膜は引き伸ばされる。
膜が薄いうちは、下地の原子の並びに合わせてひずむことで、欠陥を作らずにすき間を吸収できる[2]。膜が厚くなってひずみのエネルギーが増えると、原子の列が線に沿ってずれた場所(転位)を作って、ひずみを逃がす状態に移る[2]。転位の間隔は、 が大きいほど狭くなる[2]。
分母が であることにも注意する。同じ二つの材料でも、どちらを下地にするかで、 の値は少し変わる。符号も逆になる。
転位が入り始める厚さを、臨界膜厚と呼ぶ。臨界膜厚は が大きいほど薄くなる[2]。本ページでは、その厚さの計算は扱わない。
数値例
室温付近の格子定数は、シリコンが5.43095 Å、ヒ化ガリウム(GaAs)が5.6533 Åである[1]。
シリコンを下地にし、GaAsを膜として重ねると、 で約0.041、つまり約4.1%になる(本サイトで計算)。
4.1%は、原子の並びを約24個分進むごとに、1個分ずれる大きさである(1 ÷ 0.041 で計算。本サイトで計算)。膜と下地の原子の並びは、この間隔で食い違っていく。差が数%でも、原子の並びのずれとしては小さくない。格子定数が近い材料を組み合わせるのは、 を小さくするためである。
窒化ガリウム(GaN)は、結晶の形がシリコンと異なる六方晶で、格子定数は Å、 Å と、二つの値を持つ[1]。この場合は、面内の原子の間隔どうしを比べる必要があり、本ページの式を単純には当てはめられない。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
格子不整合の式で、分母にある値は何か。
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答え:2. 下地の格子定数
差を下地の格子定数で割って、割合にしている。そのため、どちらを下地にするかで値が少し変わる。
問2
格子不整合が大きいまま結晶を重ねると、何が起こりやすいか。
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答え:1. 原子の列が線に沿ってずれた場所である転位が入りやすい
ひずみを抱えきれなくなった膜は、原子の列が線に沿ってずれた場所(転位)を作って、ひずみを逃がす。