シリコンを熱で酸化するときの膜厚の増え方を、ディール・グローブのモデルの式から読む。薄いうちは時間に比例し、厚くなると時間の平方根に比例して遅くなる。ドライ酸化とウェット酸化の速さの違いを、1,000℃の値で比べる。
酸化膜は、厚くなるほど増え方が鈍る
- 膜厚と時間線は上に向かうほど寝る
- 1時間での膜厚ウェットは約7倍厚い
図:左は、1,000℃でのウェット酸化とドライ酸化の膜厚の時間変化(ディール・グローブのモデル、τ=0)。右は、1時間での膜厚。定数はワシントン大学の講義資料(Chapter 6)、計算は本サイト式
は酸化膜の厚さ、 は酸化の時間である。 は、酸化を始める前にすでにあった膜の分を補う時間である。これをディール・グローブのモデルと呼ぶ。
と は温度と雰囲気で決まる定数である。 は、酸化剤(酸素や水蒸気)が膜の中を進む速さに関わる。 は、シリコンとの境目で反応が進む速さに関わる。それぞれ、アレニウスの式で温度に依存する。
式のどこを見るか
見るのは、 と の大小である。膜が薄いうちは の項が効き、 になる。膜厚は時間に比例して増える。このとき、速さを決めるのは境目での反応である。
膜が厚くなると の項が効き、 になる。膜厚は時間の平方根に比例し、増え方が鈍る。酸化剤が厚い膜の中を通ってシリコンの境目まで届くのに、時間がかかるためである。
厚く作るほど、同じ厚さを足すのに、より長い時間が要る。厚さを2倍にするには、時間が約4倍必要になる。
雰囲気による違いは、 と に現れる。水蒸気を使うウェット酸化は、酸素だけのドライ酸化より、 が大きい。そのため、厚い膜を短時間で作るにはウェット酸化が向く。ドライ酸化は遅く、同じ時間では膜が薄いままである。
数値例
定数は、ドライ酸化で μm/h、 eV、 μm/h、 eV、ウェット酸化(資料の表記は Wet O₂)で μm/h、 eV、 μm/h、 eV で表される[1]。
ボルツマン定数 eV/K[2]を使って、1,000℃で計算する。ドライ酸化は μm/h、 μm/h、ウェット酸化は μm/h、 μm/h になる(本サイトで計算)。ウェット酸化の は、ドライ酸化の約32倍である。
として、1時間酸化したときの膜厚を式から求める。ドライ酸化は約0.054 μm(54 nm)、ウェット酸化は約0.38 μm(380 nm)になる(本サイトで計算)。同じ1時間で、ウェット酸化は約7倍厚い。
ウェット酸化で1時間後の厚さ380 nmを、4時間まで延ばすと約0.93 μmになる(本サイトで計算)。時間は4倍だが、厚さは約2.4倍である。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
酸化膜が十分に厚くなったとき、膜厚は時間とどう関係するか。
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答え:2. 時間の平方根に比例する
膜が厚いと x² の項が効き、x はほぼ √(Bt) になる。酸化剤が膜の中を進むのに時間がかかり、増え方が鈍る。
問2
1,000℃で厚い酸化膜を短時間で作りたいとき、向いているのはどちらか。
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答え:2. ウェット酸化
ウェット酸化は B が大きく、ドライ酸化の約30倍の値になる。厚い膜を作るには、ウェット酸化のほうが短い時間で済む。