金属、絶縁体、半導体の違いを、電子がとれるエネルギーの帯(バンド)と帯の間のすき間(バンドギャップ)で説明する。熱や光で電子がすき間を越える仕組み、n型とp型の見方、材料によるすき間の違いと使い分けを扱う。
金属・半導体・絶縁体のバンド(模式図)
- 金属帯が埋まりきっておらず、すき間を越えなくても電子が動ける
- 半導体すき間が中くらい。熱や光で一部の電子が越える
- 絶縁体すき間が大きく、電子がほとんど越えられない
図:縦がエネルギーで、帯は電子がとれるエネルギーの範囲。下の帯(価電子帯)は電子で埋まり、上の帯(伝導帯)との間にすき間(バンドギャップ)がある。半導体では、熱や光で一部の電子がすき間を越えて伝導帯に上がり、価電子帯に正孔(縁取りの丸)が残る。すき間の大きさの比は実際と異なる。模式図、本サイトで作成電子が取れるエネルギーには、段がある
ここまでのページでは、電子と正孔、pn接合の働きを、粒の動きとして説明してきた。このページでは、同じことを、電子の持つエネルギーの段という見方で整理し直す。少し抽象的だが、材料の違いや、光を出す部品、パワー半導体の材料を理解する土台になる見方である。
原子の中の電子は、どんなエネルギーでも自由に持てるわけではない。とれるエネルギーは、とびとびの決まった値に限られている。階段の段の上にしか立てず、段と段の間には立てない様子に似ている。
固体の中では、非常に多くの原子が集まって並んでいる。すると、それぞれの原子の段が少しずつずれて重なり合い、細かい段がぎっしり集まった帯のようになる。この帯を「バンド(エネルギー帯)」と呼ぶ。電子は、帯の中のエネルギーはとれるが、帯と帯の間のエネルギーはとれない。
価電子帯と伝導帯
半導体や絶縁体を考えるときに大切なのは、二つの帯である。
一つは、原子どうしの結びつきに使われている電子が入っている帯である。これを「価電子帯」と呼ぶ。分野の最初のページで学んだ、シリコンの原子どうしが手をつなぐのに使っている電子が、ここにいる。
もう一つは、その上にある、結びつきから外れて自由に動ける電子が入る帯である。これを「伝導帯」と呼ぶ。
二つの帯の間には、電子がとれないエネルギーのすき間がある。このすき間を「バンドギャップ(禁制帯)」と呼ぶ。
なぜ電気を通したり、通さなかったりするのか
電気が流れるには、電子が少しエネルギーを受け取って動ける必要がある。
価電子帯が電子でぎっしり埋まっていると、電子は帯の中で動く余地がない。満員の電車の中で、人が身動きできないのに似ている。そこで、電子が動くには、すき間を越えて、空いている伝導帯に上がる必要がある。
* 絶縁体は、すき間が大きい。電子は、ふつうの温度ではすき間を越えられず、伝導帯にほとんど電子がない。そのため、電気をほとんど通さない。* 半導体は、すき間が中くらいである。熱や光のエネルギーを受け取ると、一部の電子がすき間を越えて伝導帯に上がる。そのため、条件によって電気を通すようになる。* 金属では、帯が電子で埋まりきっておらず、すき間を越えなくても電子が動ける。そのため、電気をよく通す。
分野の最初のページで、半導体は温度が上がると電気を通しやすくなると学んだ。温度が上がると、すき間を越える電子が増えるからである。
正孔は、価電子帯の空き
電子がすき間を越えて伝導帯に上がると、価電子帯には電子の抜けた空きが一つできる。これが、前に学んだ「正孔」である。
満員だった価電子帯に空きができると、隣の電子がその空きに移り、その電子がいた場所が新しい空きになる。こうして、空きが動いていくように見える。プラスの電気を持つ粒が動くように振る舞うのは、このためである。
つまり、熱や光で電子が一つすき間を越えると、伝導帯の電子と価電子帯の正孔が、一組できる。
n型とp型を、段で見る
ドーパントを混ぜたn型とp型も、この見方で説明できる。
n型では、ドーパントが持ち込んだ余分な電子が、伝導帯のすぐ下の、すき間の中のエネルギーにいる。伝導帯に近いので、少しの熱で伝導帯に上がり、自由に動ける電子になる。
p型では、ドーパントが、価電子帯のすぐ上に、電子を受け入れる空きを作る。価電子帯の電子は、少しの熱でその空きに移り、価電子帯に正孔が残る。
どちらも、すき間を丸ごと越えるよりずっと小さいエネルギーで、電気を運ぶ粒を作れる。わずかなドーパントで性質が大きく変わるのは、このためである。
すき間の大きさは、材料によって違う
バンドギャップの大きさは、材料によって違う。この違いが、材料の使い分けにつながっている。
光を出す部品では、伝導帯の電子が価電子帯の正孔と結びつくときに、すき間の分のエネルギーを光として出す。すき間の大きさによって出る光のエネルギーが変わり、光の色が決まる。そのため、出したい色に合わせて、すき間の大きさの違う化合物の半導体が選ばれる。シリコンは、光を出す効率が低いので、光を出す部品にはあまり使われない。
光を受ける部品では反対に、すき間より大きなエネルギーの光が当たると、電子がすき間を越えて、電子と正孔の組ができる。イメージセンサーや太陽電池は、この働きを使う。
分野「デバイス」のパワー半導体のページで、炭化ケイ素や窒化ガリウムは「電子を動ける状態にするのに必要なエネルギーが、シリコンより大きい材料」と説明した。これは、バンドギャップがシリコンより大きいということである。すき間が大きい材料は、強い電圧をかけても電子がすき間を越えて流れ出しにくく、高い温度でも性質が保たれやすい。
このページのまとめ
固体の中の電子がとれるエネルギーは、帯(バンド)に分かれている。結びつきの電子がいる価電子帯と、自由に動ける電子が入る伝導帯の間には、すき間(バンドギャップ)がある。すき間が大きいと絶縁体、中くらいだと半導体になり、熱や光で電子がすき間を越えると、電子と正孔が一組できる。n型とp型は、すき間の中にドーパントの段ができる見方で説明できる。すき間の大きさは材料によって違い、光の色や、パワー半導体の材料の選び方に関わる。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
価電子帯と伝導帯の間の、電子がとれないエネルギーのすき間を何と呼ぶか。
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答え:1. バンドギャップ
二つの帯の間の、電子がとれないエネルギーのすき間をバンドギャップ(禁制帯)と呼ぶ。
問2
半導体で、温度が上がると電気を通しやすくなる理由を、バンドの見方で説明したものとして、正しいものはどれか。
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答え:2. 温度が上がると、すき間を越えて伝導帯に上がる電子が増えるから
熱のエネルギーを受け取ってすき間を越える電子が増え、伝導帯で動ける電子と、価電子帯の正孔が増えるため、電気を通しやすくなる。
問3
炭化ケイ素や窒化ガリウムが、高い電圧に耐えやすい理由として、正しいものはどれか。
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答え:3. バンドギャップがシリコンより大きく、強い電圧をかけても電子がすき間を越えて流れ出しにくいから
バンドギャップが大きい材料は、強い電圧をかけても電子がすき間を越えにくい。そのため、高い電圧に耐えやすく、高い温度でも性質が保たれやすい。