電子がエネルギーの席をどんな確率で埋めるかを表すフェルミ分布の式から、フェルミ準位の意味と、伝導帯の電子の濃度が指数で決まることを読む。シリコンで、濃度を10倍にするとフェルミ準位が約60 meV動くことを確かめる。
席の埋まる確率は、フェルミ準位を境に切り替わる
- フェルミ分布EFで確率1/2になる
- 濃度とフェルミ準位10倍で約60 meV近づく
図:左は、フェルミ分布 f(E)。横軸はフェルミ準位からの差を kT で割った値(E−EF)/kT。右は、300 Kのシリコンで、電子の濃度ごとに必要な、伝導帯の底とフェルミ準位の差 Ec−EF(Nc は MIT 6.720J の値、計算は本サイト)式
は、エネルギー の席が電子で埋まっている確率である[1]。 はフェルミ準位、 はボルツマン定数、 は絶対温度である。 のとき、 になる。
伝導帯の底 が よりも の何倍も上にあるとき、伝導帯の電子の濃度は、次の形で近似できる[1]。
は伝導帯の実効状態密度で、電子が入れる席の数の目安である。
式のどこを見るか
見るのは、 である。 が より高いほど、この値は大きくなり、席が埋まる確率は小さくなる。 が より低ければ、確率は1に近づく。
が より の数倍以上高い領域では、分母の1が小さくなり、式は指数の形に近づく。近似の式の は、この領域の式である[1]。濃度が に比べてずっと小さいときに成り立つ[1]。
近似の式から、濃度 と の関係は、指数と対数で結ばれる。濃度が10倍になるたび、 は だけ縮む。ドーピングで電子を増やすことは、フェルミ準位を伝導帯に近づけることと、同じ意味である。
フェルミ準位は、電子が実際にいるエネルギーの席ではなく、確率が1/2になる基準の位置である。バンドギャップの中に、席がなくても置ける。
数値例
300 Kでは、ボルツマン定数 eV/K[2]から、 は約0.0259 eV(25.9 meV)になる(本サイトで計算)。
の席が埋まっている確率は約0.27、0.1 eV 高い席では約0.020、0.56 eV 高い席(シリコンのバンドギャップ1.12 eV の半分)では約 になる(本サイトで計算)。
シリコンの は300 Kで約 cm である[1]。電子の濃度を cm にするには、 から、約0.206 eV だけ、 が伝導帯の底より下にあればよい。濃度を cm に10倍にすると約0.147 eV、 cm では約0.087 eV になる(本サイトで計算)。10倍ごとに約60 meV()ずつ近づく。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
エネルギー E がフェルミ準位 EF に等しい席が、電子で埋まっている確率はいくつか。
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答え:2. 1/2
E = EF のとき、指数の中が0になり、f = 1/(1+1) = 1/2 になる。
問2
300 Kのシリコンで、伝導帯の電子の濃度を10倍にすると、フェルミ準位はおよそどれだけ動くか。
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答え:2. 約60 meV 伝導帯に近づく
濃度が10倍になると、EC − EF は kT ln10、つまり約60 meV 縮む。