フェルミ分布:電子の席の埋まり方と、フェルミ準位

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

電子がエネルギーの席をどんな確率で埋めるかを表すフェルミ分布の式から、フェルミ準位の意味と、伝導帯の電子の濃度が指数で決まることを読む。シリコンで、濃度を10倍にするとフェルミ準位が約60 meV動くことを確かめる。

席の埋まる確率は、フェルミ準位を境に切り替わる

  1. 00.51-606(E−EF)/kTf(E)フェルミ分布EFで確率1/2になる
  2. 1016 cm⁻³0.206 eV1017 cm⁻³0.147 eV1018 cm⁻³0.087 eVEc−EF(eV)濃度とフェルミ準位10倍で約60 meV近づく
図:左は、フェルミ分布 f(E)。横軸はフェルミ準位からの差を kT で割った値(E−EF)/kT。右は、300 Kのシリコンで、電子の濃度ごとに必要な、伝導帯の底とフェルミ準位の差 Ec−EF(Nc は MIT 6.720J の値、計算は本サイト)

式

f(E)=11+exp⁡(E−EFkT)

f(E) は、エネルギー E の席が電子で埋まっている確率である[1]。EF はフェルミ準位、k はボルツマン定数、T は絶対温度である。E=EF のとき、f=1/2 になる。

伝導帯の底 EC が EF よりも kT の何倍も上にあるとき、伝導帯の電子の濃度は、次の形で近似できる[1]。

n≈Ncexp⁡(−EC−EFkT)

Nc は伝導帯の実効状態密度で、電子が入れる席の数の目安である。

式のどこを見るか

見るのは、(E−EF)/kT である。E が EF より高いほど、この値は大きくなり、席が埋まる確率は小さくなる。E が EF より低ければ、確率は1に近づく。

E が EF より kT の数倍以上高い領域では、分母の1が小さくなり、式は指数の形に近づく。近似の式の exp⁡ は、この領域の式である[1]。濃度が Nc に比べてずっと小さいときに成り立つ[1]。

近似の式から、濃度 n と EC−EF の関係は、指数と対数で結ばれる。濃度が10倍になるたび、EC−EF は kTln⁡10 だけ縮む。ドーピングで電子を増やすことは、フェルミ準位を伝導帯に近づけることと、同じ意味である。

フェルミ準位は、電子が実際にいるエネルギーの席ではなく、確率が1/2になる基準の位置である。バンドギャップの中に、席がなくても置ける。

数値例

300 Kでは、ボルツマン定数 8.617×10−5 eV/K[2]から、kT は約0.0259 eV(25.9 meV)になる(本サイトで計算)。

E−EF=kT の席が埋まっている確率は約0.27、0.1 eV 高い席では約0.020、0.56 eV 高い席(シリコンのバンドギャップ1.12 eV の半分)では約 4×10−10 になる(本サイトで計算)。

シリコンの Nc は300 Kで約 2.9×1019 cm−3 である[1]。電子の濃度を 1016 cm−3 にするには、EC−EF=kTln⁡(Nc/n) から、約0.206 eV だけ、EF が伝導帯の底より下にあればよい。濃度を 1017 cm−3 に10倍にすると約0.147 eV、1018 cm−3 では約0.087 eV になる(本サイトで計算)。10倍ごとに約60 meV(kTln⁡10)ずつ近づく。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

エネルギー E がフェルミ準位 EF に等しい席が、電子で埋まっている確率はいくつか。

答えと解説を見る

答え:2. 1/2

E = EF のとき、指数の中が0になり、f = 1/(1+1) = 1/2 になる。

問2

300 Kのシリコンで、伝導帯の電子の濃度を10倍にすると、フェルミ準位はおよそどれだけ動くか。

答えと解説を見る

答え:2. 約60 meV 伝導帯に近づく

濃度が10倍になると、EC − EF は kT ln10、つまり約60 meV 縮む。

出典

  1. 6.720J Lecture 3(キャリアの統計)(外部サイト)MIT OpenCourseWare 6.720J(ocw.iti.hr 掲載の講義資料)確認日:
  2. CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants: 2018(NIST SP 961)(外部サイト)米国国立標準技術研究所(NIST)確認日: