電子と正孔、n型とp型

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このページの目次
  1. 電気が流れるとは、何かが動くこと
  2. 純粋なシリコンの中の電子
  3. 電子が抜けた跡の「正孔」
  4. ごくわずかな元素を混ぜる「ドーピング」
  5. n型半導体:電子が主役
  6. p型半導体:正孔が主役
  7. 多数キャリアと少数キャリア
  8. 製造工程とのつながり
  9. このページのまとめ
  10. 関係する工程と用語
  11. 次に読む
  12. 理解度チェック

半導体の中で電気を運ぶ「電子」と「正孔」の働きと、ごくわずかな元素を混ぜてn型・p型の半導体を作る仕組みを、シリコンを例に説明する。

シリコンの結晶と、n型・p型(模式図)

  1. 純粋なシリコンすべての原子が結びつきに電子を使い、動ける電子はほとんどない
  2. n型(リンなどを混ぜる)混ぜた原子のまわりに、結びつきに使われない電子が余る
  3. p型(ホウ素などを混ぜる)混ぜた原子のまわりに、電子が一つ足りない場所(正孔)ができる
図:シリコンの原子は、周りの原子と電子を出し合って結びつく。リンなどを混ぜると電子が余り(n型)、ホウ素などを混ぜると正孔ができる(p型)。原子の数や結びつきの形は簡単にした模式図、本サイトで作成

電気が流れるとは、何かが動くこと

電気が流れるとは、電気を帯びた粒が物質の中を動くことである。金属の中では、原子に縛られずに自由に動ける電子がたくさんあり、それが電気を運ぶ。

では、半導体の中では何が電気を運ぶのか。答えは「電子」と「正孔」の二つである。このページでは、シリコンを例に、この二つを説明する。

純粋なシリコンの中の電子

シリコンの結晶では、一つ一つの原子が、外側の電子を周りの原子と出し合い、手をつなぐように結びついている。この結びつきを「共有結合」と呼ぶ。

不純物を含まない純粋なシリコンでは、外側の電子はこの結びつきに使われていて、ほとんど動けない。そのため、低い温度では電気をあまり通さない。

ところが、熱や光のエネルギーを受け取ると、結びつきから外れて自由に動ける電子が出てくる。この電子が、電気を運ぶ役目を果たす。温度が上がると半導体が電気を通しやすくなるのは、このためである。

電子が抜けた跡の「正孔」

電子が結びつきから外れると、もとの場所には電子が一つ足りない「穴」が残る。この穴を「正孔」(ホール)と呼ぶ。

正孔のあるところへ、隣の結びつきの電子が移ってくると、今度は隣に穴ができる。これが次々に起こると、穴が動いていくように見える。電子はマイナスの電気を持つので、電子が足りない穴は、プラスの電気を持つ粒が動いているのと同じように振る舞う。

満員の座席の列で、一つだけ空いた席を思い浮かべるとよい。隣の人が空席に詰めると、空席は反対の方向へ移っていく。人が電子、空席が正孔に当たる。

このように、半導体の中では、マイナスの電子と、プラスに振る舞う正孔の両方が電気を運ぶ。電気を運ぶものを、まとめて「キャリア」と呼ぶ。

ごくわずかな元素を混ぜる「ドーピング」

純粋なシリコンは、そのままでは電気の通りやすさを思いどおりに決められない。そこで、ごくわずかな別の元素をわざと混ぜる。これを「ドーピング」と呼び、混ぜる元素を「ドーパント」と呼ぶ。

混ぜる量はほんの少しだが、電気の通りやすさは大きく変わる。どの元素を混ぜるかによって、電気を運ぶ主役を電子にするか、正孔にするかを決められる。

n型半導体:電子が主役

シリコンに、リンやヒ素のような、シリコンより外側の電子が一つ多い元素を混ぜると、結びつきに使われずに余る電子が出てくる。この余った電子は、少しのエネルギーで自由に動けるようになる。

このように、電子が電気を運ぶ主役になる半導体を「n型半導体」と呼ぶ。nは、マイナスを表す英語のnegativeの頭文字である。電子を与える元素なので、リンやヒ素を「ドナー」と呼ぶ。

p型半導体:正孔が主役

反対に、ホウ素のような、シリコンより外側の電子が一つ少ない元素を混ぜると、結びつきに電子が一つ足りない場所、つまり正孔ができる。

このように、正孔が電気を運ぶ主役になる半導体を「p型半導体」と呼ぶ。pは、プラスを表す英語のpositiveの頭文字である。電子を受け取る元素なので、ホウ素を「アクセプター」と呼ぶ。

n型でもp型でも、半導体全体としては電気的に中性であることに注意したい。混ぜた元素の原子そのものが、余った電子や正孔と釣り合う電気を持っているためである。

多数キャリアと少数キャリア

n型の半導体にも、正孔がまったくないわけではない。熱のエネルギーによって、電子と正孔の組がわずかに生まれ続けているためである。p型の半導体にも、同じ理由で電子がわずかにある。

そこで、数の多いほうのキャリアを「多数キャリア」、少ないほうを「少数キャリア」と呼ぶ。n型では電子が多数キャリアで正孔が少数キャリア、p型では正孔が多数キャリアで電子が少数キャリアである。

少数キャリアは数が少ないが、無視できるわけではない。n型とp型をくっつけた部分や、光を電気に変える部品では、少数キャリアの動きが働きを決める大切な役目を持つ。どちらがどちらの型で多いのかを、ここで押さえておくと、この先のページが読みやすくなる。

製造工程とのつながり

ドーピングは、実際の製造工程では、シリコンウェーハの決められた場所にだけドーパントを入れる作業として行う。代表的な方法は、ドーパントの原子に電気を帯びさせ、加速してウェーハに打ち込む「イオン注入」である。打ち込んだ後は、熱を加えて結晶の乱れを直し、ドーパントを働くようにする。

一枚のウェーハの上に、n型の場所とp型の場所を細かく作り分けることで、トランジスタやダイオードができる。

このページのまとめ

半導体の中で電気を運ぶのは、自由に動ける電子と、電子が抜けた跡の正孔である。ごくわずかな元素を混ぜるドーピングで、電子が主役のn型と、正孔が主役のp型を作れる。

次のページでは、n型とp型をくっつけた「pn接合」が、電気を一方向にだけ流す仕組みを説明する。

  • 用語:シリコンウェーハ:高純度のシリコン単結晶を薄い円板状に切り出し、表面を鏡のように磨いた基板。半導体チップの回路を作り込む土台となる。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

半導体の中の「正孔」とは何か。

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答え:2. 電子が結びつきから抜けた跡の、電子が一つ足りない場所

正孔は、電子が結びつきから抜けた跡の、電子が足りない場所である。隣の電子が移ってくることで動いていくように見え、プラスの電気を持つ粒のように振る舞う。

問2

シリコンにリンを混ぜてできる半導体について、正しいものはどれか。

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答え:2. 電子が主役のn型半導体になる

リンはシリコンより外側の電子が一つ多い元素で、混ぜると余る電子が出てくる。電子が電気を運ぶ主役になるので、n型半導体になる。

問3

ごくわずかな別の元素を混ぜて、半導体の電気の通りやすさを変えることを何と呼ぶか。

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答え:2. ドーピング

ごくわずかな元素をわざと混ぜることをドーピングと呼ぶ。製造工程では、イオン注入などの方法で、ウェーハの決められた場所に行う。