真性キャリア濃度と温度:指数の中のEgとT

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

不純物を入れない半導体で熱によって生まれる電子と正孔の濃度(真性キャリア濃度)の式から、温度が上がるとリークが増える理由と、バンドギャップの大きい材料が高い温度で動ける理由を読む。シリコンの値で桁を確かめる。

真性キャリア濃度は、温度と Eg で桁が変わる

  1. 101010111012101310141015300400500温度(K)cm⁻³シリコンの温度変化100 K上げると、2桁以上増える
  2. Si224H-SiC63Eg/2kT(300 K)指数の中の値大きいほど、熱で越える電子が少ない
図:左は、シリコンの真性キャリア濃度の温度変化(縦は対数の目盛り。1目盛りで10倍)。PVEducation「Intrinsic Carrier Concentration」の近似式から本サイトで計算。右は、300 K での指数の中の値 Eg/2kT(バンドギャップは東芝デバイス&ストレージ、ボルツマン定数はNISTのCODATA 2018。本サイトで計算)。この値が大きいほど、真性キャリア濃度は小さい

式

ni=NcNvexp⁡(−Eg2kT)

ni は真性キャリア濃度で、不純物を入れない半導体の中で、熱によって伝導帯に上がった電子の濃度である。価電子帯には同じ数の正孔が残る。Nc と Nv は、伝導帯と価電子帯に電子と正孔が入れる席の数の目安(実効状態密度)である。Eg はバンドギャップ、k はボルツマン定数、T は絶対温度である。

Nc と Nv は、それぞれ温度の1.5乗に比例する。まとめると、次の形になる。

ni∝T3/2exp⁡(−Eg2kT)

式のどこを見るか

見るのは、指数の中の Eg/2kT である。Eg が分子、T が分母にある。指数の外の T3/2 も温度で増えるが、指数の変化に比べるとゆるやかで、振る舞いをほぼ決めるのは指数のほうである。

分母に2があるのは、電子と正孔が対で生まれるためである。電子の濃度と正孔の濃度の積が exp⁡(−Eg/kT) に比例し、ni はその平方根になる。

温度を上げると、指数の中の値が小さくなり、ni は桁で増える。不純物を入れた半導体でも、熱で生まれる電子と正孔は同じように増える。pn接合に逆向きの電圧をかけたときに流れる小さな電流(リークの電流)は、この熱で生まれるキャリアが元になる。そのため、温度が上がるとリークが増える。さらに温度が上がり、ni が不純物の濃度に近づくと、n型とp型の区別が薄れ、素子として働かなくなる。

Eg が大きい材料では、同じ温度でも指数の中の値が大きく、ni は桁違いに小さい。バンドギャップの大きい炭化ケイ素や窒化ガリウムが、シリコンより高い温度で動ける理由の一つが、ここにある。

数値例

300 Kのシリコンの ni は 9.65×109 cm−3 で、およそ 1×1010 cm−3 である[1]。シリコンの原子は1 cm3に 5.0×1022 個ある[2]。熱で伝導帯に上がる電子は、原子およそ5兆個に1個という少なさである(本サイトで計算)。

温度の効き方は、PVEducationが示すシリコンの ni の近似式[1]で確かめられる。この式で計算すると、300 K(約27℃)から400 K(約127℃)に上げたとき、ni は約560倍の 5.5×1012 cm−3 になる(本サイトで計算)。100 Kの差で、2桁以上増える。

材料の違いは、指数の部分だけで比べられる。バンドギャップをシリコン1.12 eV、炭化ケイ素(4H-SiC)3.26 eVとし[3]、300 Kの kT を約0.026 eV[4]とする。Nc と Nv の違いを無視して指数の部分だけを比べると、炭化ケイ素の ni はシリコンの約 10−18 倍になる(本サイトで計算)。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

真性キャリア濃度の式で、温度による変化をほぼ決めているのはどこか。

答えと解説を見る

答え:2. 指数の中の、バンドギャップを2kTで割った部分

温度の1.5乗も増えるが、指数の変化に比べるとゆるやかである。振る舞いをほぼ決めるのは、指数の中の Eg/2kT である。

問2

バンドギャップの大きい材料が、高い温度でも素子として働きやすい理由はどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 熱で生まれる電子と正孔の濃度が、同じ温度で桁違いに小さいため

Eg が大きいと、指数の中の値が大きくなり、真性キャリア濃度は桁違いに小さくなる。温度を上げても、不純物の濃度に近づきにくい。

出典

  1. Intrinsic Carrier Concentration(外部サイト)PVEducation(C. Honsberg、S. Bowden)確認日:
  2. 半導体デバイス・プロセス工学(2017年版、Web掲載用の見本版)(外部サイト)広島大学(横山新)確認日:
  3. ワイドバンドギャップ半導体とは(外部サイト)東芝デバイス&ストレージ株式会社確認日:
  4. CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants: 2018(NIST SP 961)(外部サイト)米国国立標準技術研究所(NIST)確認日: