不純物を入れない半導体で熱によって生まれる電子と正孔の濃度(真性キャリア濃度)の式から、温度が上がるとリークが増える理由と、バンドギャップの大きい材料が高い温度で動ける理由を読む。シリコンの値で桁を確かめる。
真性キャリア濃度は、温度と Eg で桁が変わる
- シリコンの温度変化100 K上げると、2桁以上増える
- 指数の中の値大きいほど、熱で越える電子が少ない
図:左は、シリコンの真性キャリア濃度の温度変化(縦は対数の目盛り。1目盛りで10倍)。PVEducation「Intrinsic Carrier Concentration」の近似式から本サイトで計算。右は、300 K での指数の中の値 Eg/2kT(バンドギャップは東芝デバイス&ストレージ、ボルツマン定数はNISTのCODATA 2018。本サイトで計算)。この値が大きいほど、真性キャリア濃度は小さい式
は真性キャリア濃度で、不純物を入れない半導体の中で、熱によって伝導帯に上がった電子の濃度である。価電子帯には同じ数の正孔が残る。 と は、伝導帯と価電子帯に電子と正孔が入れる席の数の目安(実効状態密度)である。 はバンドギャップ、 はボルツマン定数、 は絶対温度である。
と は、それぞれ温度の1.5乗に比例する。まとめると、次の形になる。
式のどこを見るか
見るのは、指数の中の である。 が分子、 が分母にある。指数の外の も温度で増えるが、指数の変化に比べるとゆるやかで、振る舞いをほぼ決めるのは指数のほうである。
分母に2があるのは、電子と正孔が対で生まれるためである。電子の濃度と正孔の濃度の積が に比例し、 はその平方根になる。
温度を上げると、指数の中の値が小さくなり、 は桁で増える。不純物を入れた半導体でも、熱で生まれる電子と正孔は同じように増える。pn接合に逆向きの電圧をかけたときに流れる小さな電流(リークの電流)は、この熱で生まれるキャリアが元になる。そのため、温度が上がるとリークが増える。さらに温度が上がり、 が不純物の濃度に近づくと、n型とp型の区別が薄れ、素子として働かなくなる。
が大きい材料では、同じ温度でも指数の中の値が大きく、 は桁違いに小さい。バンドギャップの大きい炭化ケイ素や窒化ガリウムが、シリコンより高い温度で動ける理由の一つが、ここにある。
数値例
300 Kのシリコンの は cm で、およそ cm である[1]。シリコンの原子は1 cmに 個ある[2]。熱で伝導帯に上がる電子は、原子およそ5兆個に1個という少なさである(本サイトで計算)。
温度の効き方は、PVEducationが示すシリコンの の近似式[1]で確かめられる。この式で計算すると、300 K(約27℃)から400 K(約127℃)に上げたとき、 は約560倍の cm になる(本サイトで計算)。100 Kの差で、2桁以上増える。
材料の違いは、指数の部分だけで比べられる。バンドギャップをシリコン1.12 eV、炭化ケイ素(4H-SiC)3.26 eVとし[3]、300 Kの を約0.026 eV[4]とする。 と の違いを無視して指数の部分だけを比べると、炭化ケイ素の はシリコンの約 倍になる(本サイトで計算)。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
真性キャリア濃度の式で、温度による変化をほぼ決めているのはどこか。
答えと解説を見る
答え:2. 指数の中の、バンドギャップを2kTで割った部分
温度の1.5乗も増えるが、指数の変化に比べるとゆるやかである。振る舞いをほぼ決めるのは、指数の中の Eg/2kT である。
問2
バンドギャップの大きい材料が、高い温度でも素子として働きやすい理由はどれか。
答えと解説を見る
答え:1. 熱で生まれる電子と正孔の濃度が、同じ温度で桁違いに小さいため
Eg が大きいと、指数の中の値が大きくなり、真性キャリア濃度は桁違いに小さくなる。温度を上げても、不純物の濃度に近づきにくい。