半導体の製品が長く使えるかを確かめる信頼性の試験を、温度、湿度、温度の変化のくり返し、電圧、静電気といった、製品が受ける負担ごとに説明する。どんな壊れ方を調べるのかと、用途によって求められる厳しさの違いも扱う。
信頼性の試験で調べる壊れ方(模式図)
- 温度の変化で、つなぎ目に力がかかるくり返すと、つなぎ目にひびが入ることがある
- 静電気から守る中の回路の薄い絶縁膜を、高い電圧から守る
図:左は、温度の変化をくり返す試験で調べる壊れ方。チップと基板は温まったときの伸び方が違い(矢印の長さの違い)、間のつなぎ目に力がかかって、ひび(ギザギザの線)が入ることがある。右は、静電気から守る保護の回路。電極から入った静電気を、中の回路に届く前に、保護の回路が安全な道へ逃がす。模式図、本サイトで作成製品が受ける負担を、試験で再現する
分野の最初のページでは、厳しい条件で材料の傷み方を速め、長く使ったときの様子を短い期間で確かめる「加速試験」を学んだ。このページでは、その試験に、どのような種類があるのかを見ていく。
半導体の製品が使われる間に受ける負担は、使われる場所と使われ方で決まる。熱い場所か、湿った場所か、電源を入れたり切ったりする回数が多いか、人の手に触れるか。信頼性の試験は、こうした負担を一つずつ取り出し、厳しくして再現する。そして、どこが、どのように壊れるかを調べる。
高い温度で動かし続ける
基本の試験の一つが、高い温度の中で、電圧をかけて動かし続ける試験である。
温度が高いと、材料の中の原子が動きやすくなり、多くの種類の傷みが速く進む。トランジスタのゲートの下の絶縁膜が少しずつ傷んだり、トランジスタの性質が少しずつずれたりする様子を、短い期間で確かめられる。配線の金属の原子が電気の流れに押されて移動する現象も、高い温度で速く進む。
試験の途中や後で、電気の特性を測り、決まりの範囲から外れていないかを調べる。
湿気に耐えるか
チップを守るパッケージの樹脂は、水分をわずかに通す。長く湿った場所にあると、水分がパッケージの中に入り込み、配線の金属をさびさせたり、電気を漏らしたりすることがある。
そこで、高い温度と高い湿度の中に製品を置き、電圧をかけたまま、長い時間おく試験が行われる。さらに、圧力をかけて、水分を速く入り込ませる試験もある。
温度の変化をくり返す
製品は、熱くなったり冷えたりをくり返す。電源を入れると温まり、切ると冷える。自動車の部品なら、冬の朝の寒さと、動いているときの熱さの両方を受ける。
チップ、パッケージの樹脂、配線、基板は、それぞれ材料が違い、温まったときの伸び方も違う。温度が上下するたびに、材料の境目に力がかかる。これをくり返すと、つなぎ目にひびが入ったり、はがれたりすることがある。
そこで、低い温度と高い温度の間を、何度もくり返して行き来させる試験を行う。急に温度を変えて、より強い力をかける試験もある。
静電気に耐えるか
人がものに触れたときにぱちっと感じる静電気は、半導体にとって大きな脅威である。静電気は、一瞬だけだが、とても高い電圧になる。チップの中の非常に薄い絶縁膜は、この高い電圧で壊れることがある。
そのため、チップの電極の近くには、静電気が入ってきたときに、その電気を安全な道へ逃がす保護の回路が作り込まれている。信頼性の試験では、人の体や、組み立ての装置からの静電気を模した電気をかけて、保護の回路がきちんと働くかを確かめる。
工場でも、作業する人が体の静電気を逃がす道具を身に着けるなど、静電気を起こさない、ためない工夫がされている。
試験の結果から、使える年月を推し量る
加速試験では、厳しい条件の下で、決まった時間がたつまでに、どれだけの製品が壊れるかを調べる。条件を何段階かに変えて試験を行えば、条件の厳しさと壊れるまでの時間の関係が分かる。
その関係を、実際に使われる条件にあてはめると、ふつうの使い方で、どれくらいの年月にわたって使えるかを推し量れる。こうして、製品の寿命についての見通しを、短い期間の試験から立てる。
そのほかの試験
このほかにも、使われ方に応じた試験がある。
* 落としたり、揺らしたりする機械的な試験。携帯機器や自動車の部品で大切になる。* 高い温度の中に、電圧をかけずに長い時間おく試験。材料そのものの傷み方を調べる。* 基板にはんだ付けするときの熱に耐えるかを確かめる試験。パッケージが吸った水分が、はんだ付けの熱で急に膨らみ、パッケージを割ることがあるためである。
用途によって、求められる厳しさが違う
どの試験を、どれだけ厳しい条件で行うかは、製品が使われる場所によって違う。
自動車の部品は、寒い場所から暑い場所まで、長い年月にわたって使われ、壊れると安全に関わる。そのため、家庭で使う機器の部品より、厳しい条件で、多くの試験に合格することが求められる。試験の項目や条件をまとめた、業界の共通の決まりもある。
人の命に関わる医療の機器や、交換が難しい宇宙の機器などでも、特に高い信頼性が求められる。
壊れた理由を、設計と製造に戻す
試験で壊れた製品は、故障解析で、どこが、なぜ壊れたかを調べる。チップの表面を顕微鏡で見たり、断面を切り出したりして、壊れた場所を突き止める。
分かった原因は、設計や材料、製造の工程に戻され、次の製品の改良に生かされる。信頼性の試験は、合格か不合格かを決めるだけでなく、製品をより丈夫にするための手がかりを集める役割を持っている。
このページのまとめ
信頼性の試験は、製品が受ける負担を一つずつ取り出し、厳しくして再現する。高い温度で動かし続ける試験、湿気の試験、温度の変化をくり返す試験、静電気の試験などがある。それぞれ、絶縁膜や配線の傷み、さび、材料の境目のひびやはがれ、薄い膜の破壊といった壊れ方を調べる。求められる厳しさは用途によって違い、自動車の部品などでは特に厳しい。壊れた理由は、設計と製造に戻して生かす。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
温度の変化をくり返す試験で、主に調べる壊れ方として、正しいものはどれか。
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答え:1. 材料ごとの伸び方の違いで、境目に力がかかり、つなぎ目にひびが入ったりはがれたりすること
チップ、樹脂、配線、基板は、温まったときの伸び方が違う。温度が上下するたびに境目に力がかかり、くり返すとひびやはがれが起きることがある。
問2
チップの電極の近くに、静電気を安全な道へ逃がす保護の回路が作り込まれている理由として、正しいものはどれか。
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答え:2. 静電気は一瞬だが高い電圧になり、非常に薄い絶縁膜を壊すことがあるから
静電気は一瞬だけとても高い電圧になる。チップの中の薄い絶縁膜はこれで壊れることがあるので、保護の回路で電気を安全な道へ逃がす。
問3
自動車の部品に、家庭で使う機器の部品より厳しい信頼性の試験が求められる理由として、本文で挙げているものはどれか。
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答え:2. 寒い場所から暑い場所まで長い年月使われ、壊れると安全に関わるから
自動車の部品は、厳しい温度の中で長い年月使われ、壊れると安全に関わる。そのため、厳しい条件で多くの試験に合格することが求められる。