故障が熱で進む現象なら、高い温度で試験をすると、使う温度での寿命を短い時間で見積もれる。アレニウスの式で表す加速係数から、活性化エネルギーの違いで見積もりがどう変わるかを、試験と使用の温度の例で読む。
試験の温度を上げると、寿命の見積もりが何倍にも縮む
- 試験温度と加速係数Ea が大きいほど、急に増える
- 資料の例の加速係数約17倍の差が出る
図:左は、素子内部の試験温度と加速係数の関係(使用時は素子内部75℃、縦は対数の目盛り)。右は、素子内部170℃での加速係数で、ルネサス エレクトロニクスの資料に載る値。左の計算は本サイト式
は加速係数で、高温の試験が、使用時の何倍の速さで故障を進めるかを表す[1]。 は故障を進める現象の活性化エネルギー、 はボルツマン定数である。 は使用時、 は試験時の温度で、どちらも絶対温度(K)で入れる。
使用時の寿命は、試験で故障が出るまでの時間に を掛けて見積もる。
式のどこを見るか
見るのは、指数の中の括弧である。 のほうが より大きいので、括弧の中は正になり、 は1より大きくなる。試験の温度を使用時より高くするほど、 は大きくなる。
この形は、拡散や酸化の速さを表すアレニウスの式の比と同じである。故障が熱で進む現象であれば、同じ式で温度の影響を読める。
重要なのは である。 が分子にあるため、 が大きいほど は大きく変わる。試験の結果を使用時の寿命に直すとき、 の値の選び方で、見積もりが桁で変わる。故障の原因によって は異なるので、原因ごとの値を使う[1]。
この式が成り立つのは、試験の温度でも、使用時と同じ現象で故障が進む場合だけである。温度を上げすぎて別の現象が起きると、見積もりは当てにならない。
数値例
ルネサス エレクトロニクスの資料の例では、使用時を55℃、試験時を150℃とし、どちらも素子内部の温度が周囲より20℃高いとして、 K(75℃)、 K(170℃)とする[1]。ボルツマン定数は eV/K である[1]。
eV(フォトレジストの欠陥による故障)では、 になる[1]。 eV(酸化膜の欠陥による故障)では、 になる[1]。同じ温度の組み合わせでも、 の違いで約17倍の差が出る。
eV で試験を1,000時間続けたとすると、使用時の見積もりは約148,000時間になる。1年は約8,760時間なので、約17年分にあたる(本サイトで計算)。
NISTの値 eV/K[2]で計算し直しても、 は約149で、ほぼ変わらない(本サイトで計算)。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
試験の温度を使用時より高くすると、加速係数はどうなるか。
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答え:3. 大きくなる
括弧の中が正の値で大きくなるため、AF は1より大きくなる。温度差が大きいほど AF は大きい。
問2
同じ温度の組み合わせで、活性化エネルギーが 0.7 eV の故障と 0.3 eV の故障を比べると、加速係数はどうなるか。
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答え:1. 0.7 eV のほうが大きい
Ea は指数の分子にあるので、大きいほど AF が大きい。資料の例では、0.7 eV で148.2、0.3 eV で8.52である。