加速試験:高温で寿命を縮めて確かめる

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

故障が熱で進む現象なら、高い温度で試験をすると、使う温度での寿命を短い時間で見積もれる。アレニウスの式で表す加速係数から、活性化エネルギーの違いで見積もりがどう変わるかを、試験と使用の温度の例で読む。

試験の温度を上げると、寿命の見積もりが何倍にも縮む

  1. 1101001000100150200試験の温度(℃、素子内部)縦:加速係数0.7 eV0.3 eV試験温度と加速係数Ea が大きいほど、急に増える
  2. 0.3 eV8.520.7 eV148.2170℃と75℃の組み合わせ資料の例の加速係数約17倍の差が出る
図:左は、素子内部の試験温度と加速係数の関係(使用時は素子内部75℃、縦は対数の目盛り)。右は、素子内部170℃での加速係数で、ルネサス エレクトロニクスの資料に載る値。左の計算は本サイト

式

AF=exp⁡[Eak(1Tuse−1Tstress)]

AF は加速係数で、高温の試験が、使用時の何倍の速さで故障を進めるかを表す[1]。Ea は故障を進める現象の活性化エネルギー、k はボルツマン定数である。Tuse は使用時、Tstress は試験時の温度で、どちらも絶対温度(K)で入れる。

使用時の寿命は、試験で故障が出るまでの時間に AF を掛けて見積もる。

tuse=AF×tstress

式のどこを見るか

見るのは、指数の中の括弧である。1/Tuse のほうが 1/Tstress より大きいので、括弧の中は正になり、AF は1より大きくなる。試験の温度を使用時より高くするほど、AF は大きくなる。

この形は、拡散や酸化の速さを表すアレニウスの式の比と同じである。故障が熱で進む現象であれば、同じ式で温度の影響を読める。

重要なのは Ea である。Ea が分子にあるため、Ea が大きいほど AF は大きく変わる。試験の結果を使用時の寿命に直すとき、Ea の値の選び方で、見積もりが桁で変わる。故障の原因によって Ea は異なるので、原因ごとの値を使う[1]。

この式が成り立つのは、試験の温度でも、使用時と同じ現象で故障が進む場合だけである。温度を上げすぎて別の現象が起きると、見積もりは当てにならない。

数値例

ルネサス エレクトロニクスの資料の例では、使用時を55℃、試験時を150℃とし、どちらも素子内部の温度が周囲より20℃高いとして、Tuse=348 K(75℃)、Tstress=443 K(170℃)とする[1]。ボルツマン定数は 8.63×10−5 eV/K である[1]。

Ea=0.7 eV(フォトレジストの欠陥による故障)では、AF=148.2 になる[1]。Ea=0.3 eV(酸化膜の欠陥による故障)では、AF=8.52 になる[1]。同じ温度の組み合わせでも、Ea の違いで約17倍の差が出る。

Ea=0.7 eV で試験を1,000時間続けたとすると、使用時の見積もりは約148,000時間になる。1年は約8,760時間なので、約17年分にあたる(本サイトで計算)。

NISTの値 8.617×10−5 eV/K[2]で計算し直しても、AF は約149で、ほぼ変わらない(本サイトで計算)。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

試験の温度を使用時より高くすると、加速係数はどうなるか。

答えと解説を見る

答え:3. 大きくなる

括弧の中が正の値で大きくなるため、AF は1より大きくなる。温度差が大きいほど AF は大きい。

問2

同じ温度の組み合わせで、活性化エネルギーが 0.7 eV の故障と 0.3 eV の故障を比べると、加速係数はどうなるか。

答えと解説を見る

答え:1. 0.7 eV のほうが大きい

Ea は指数の分子にあるので、大きいほど AF が大きい。資料の例では、0.7 eV で148.2、0.3 eV で8.52である。

出典

  1. Calculation of Semiconductor Failure Rates(外部サイト)ルネサス エレクトロニクス確認日:
  2. CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants: 2018(NIST SP 961)(外部サイト)米国国立標準技術研究所(NIST)確認日: