気相成長の速度:温度で決まる領域と、供給で決まる領域

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

気体の原料から結晶を成長させるとき、成長の速さが温度にどう依存するかを読む。低い温度では表面の反応で決まり、アレニウスの式に従う。高い温度では原料の供給で決まり、温度にほとんど依存しない。低温のシリコンのエピタキシーの実測値で確かめる。

成長の速さは、温度が低いほど温度に敏感

  1. 0100200600650700温度(℃)縦:nm/分54130215成長速度の実測値100℃の上昇で約4倍
  2. 低温高温表面の反応で決まる原料の供給で決まる縦:成長の速さ(対数)二つの領域(模式図)高温側は、温度にほとんど依存しない
図:左は、低温のシリコンのエピタキシーの成長速度の実測値(原料はネオペンタシラン、分圧20 mtorr)。Chung ほか、Applied Physics Letters 92, 113506。右は、温度による成長の速さの変わり方の模式図で、縦は対数の目盛り(数値ではない)

式

G=G0exp⁡(−EakT)

G は結晶の成長の速さ(単位時間に増える厚さ)である。G0 は温度によらない定数、Ea は表面の反応の活性化エネルギー、k はボルツマン定数、T は絶対温度である。この式は、成長が表面の反応で決まる領域で成り立つ[2]。

式のどこを見るか

気相成長の速さを決める段階は、温度によって入れ替わる。原料の気体は、まず基板の表面まで運ばれ、次に表面で反応して結晶になる。二つの段階のうち、遅いほうが全体の速さを決める。

温度が低い領域では、表面の反応が遅い。このとき成長の速さは、上の式のとおり exp⁡(−Ea/kT) に比例し、温度に敏感である[2]。ここでは、温度の管理が成長の速さの管理になる。

温度が高い領域では、表面の反応は速く、原料が基板まで運ばれる速さが全体を決める。この領域の速さは、温度にほとんど依存しない[1]。

式で見るのは、指数の中の Ea/kT と、領域の切り替わりである。ln⁡G を 1/T に対して描くと、反応で決まる領域は右下がりの直線になる。供給で決まる領域に入ると、直線が寝て、傾きが小さくなる。

シリコンの成長では、不純物が広がらないよう、低い温度が求められることがある[1]。その場合は、反応で決まる領域で動かすことになり、温度の管理が重要になる。

数値例

低温のシリコンのエピタキシーで、原料にネオペンタシラン(Si₅H₁₂)を使い、分圧を20 mtorr、水素の圧力を6 torr とした実測値がある。成長の速さは、600℃で約54 nm/分、650℃で約130 nm/分、700℃で約215 nm/分である[1]。この範囲は、表面の反応で決まる領域とされている[1]。

600℃から700℃への100℃の上昇で、速さは約4倍になる。ボルツマン定数 8.617×10−5 eV/K[3]を使い、この2点から Ea を見積もると、約1.0 eV になる(本サイトで計算)。

600〜650℃の区間では約1.2 eV、650〜700℃では約0.8 eV となり、温度が高いほど傾きが小さくなる(本サイトで計算)。供給で決まる領域に近づくことと合致するが、この資料は活性化エネルギーの値を示していないため、約1.0 eV は目安として読む。

同じ600℃で、原料を変えると速さは大きく変わる。シランは約0.6 nm/分、ジシラン(Si₂H₆)は約8 nm/分で、ネオペンタシランは約54 nm/分である[1]。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

成長が表面の反応で決まる低温の領域で、温度を上げると成長の速さはどうなるか。

答えと解説を見る

答え:2. 指数関数の形で大きくなる

この領域の速さは exp(−Ea/kT) に比例するため、温度とともに指数関数の形で大きくなる。

問2

原料の供給で成長の速さが決まる高温の領域では、温度を上げると成長の速さはどうなるか。

答えと解説を見る

答え:3. ほとんど変わらない

この領域では、原料が基板まで運ばれる速さが全体を決める。この速さは、温度にほとんど依存しない。

出典

  1. Low-temperature silicon epitaxy by chemical vapor deposition using neopentasilane(Applied Physics Letters 92, 113506)(外部サイト)Chung ほか(プリンストン大学の公開ページ)確認日:
  2. ELEG667 課題6(化学気相成長の速度)(外部サイト)デラウェア大学(Kolodzey)確認日:
  3. CODATA Recommended Values of the Fundamental Physical Constants: 2018(NIST SP 961)(外部サイト)米国国立標準技術研究所(NIST)確認日: