ウェーハの上に薄い膜をつける成膜の方法を説明する。金属の粒をたたき出して付けるスパッタ、ガスの反応で付ける化学気相成長、一層ずつ重ねる原子層堆積について、段差への付き方と使い分けを扱う。
三つの成膜の方法と、溝への付き方(模式図)
- 三つの成膜の方法付け方と得意なことが違う
- 溝への付き方均一に付く方法が細かい部分に向く
図:左は、三つの成膜の方法の特徴。右は、深い溝への膜の付き方。スパッタは上面に厚く付き、溝の側面や底は薄い。原子層堆積は、ほぼ均一に付く。目盛りのない模式図、本サイトで作成成膜とは
チップは、薄い膜を何層も重ねて作る。膜には、電気を通さない絶縁の膜、電気を通す金属の膜、半導体の膜などがある。ウェーハの上に、こうした膜をつける工程が、成膜である。
膜は、ただ付ければよいのではない。厚さがそろっていること、狙った性質を持つこと、細かい凹凸のある表面にもむらなく付くことが求められる。このページでは、代表的な成膜の方法と、その使い分けを見ていく。
粒をたたき出して付ける:スパッタ
金属の膜によく使われるのが、スパッタである。真空の容器の中で、膜にしたい材料の板(ターゲット)に、勢いのあるイオンをぶつける。すると、ターゲットから材料の粒がたたき出され、向かい側のウェーハに降り積もって、膜になる。
材料を、そのまま飛ばして付けるので、金属の膜を作りやすい。一方で、粒がまっすぐ飛ぶため、深い溝の底や側面には付きにくい。
ガスの反応で付ける:化学気相成長
もう一つの代表が、化学気相成長(CVD)である。膜の材料のもとになるガスを容器に入れ、ウェーハの表面で反応させて、膜を作る。ウェーハを温めたり、プラズマを使ったりして、反応を進める。
ガスが表面に回り込むので、スパッタよりも、凹凸の表面にむらなく付けやすい。絶縁の膜をはじめ、さまざまな材料の膜に使われる。反応の条件を変えることで、膜の性質も調整できる。
一層ずつ重ねる:原子層堆積
さらに細かく制御する方法が、原子層堆積(ALD)である。二種類のガスを、交互に、短い時間ずつ流す。一回の流れで付くのは、ほぼ一層分だけで、これを繰り返して厚くする。
一層ずつ付くので、膜の厚さを非常に細かく決められる。深く細い溝の奥にも、むらなく付く。ただし、一回に付く量が少ないので、時間がかかる。トランジスタの極めて薄い膜など、精密さが要る場面で使われる。
凹凸への付き方の違い
チップの表面には、溝や穴がある。成膜の方法によって、溝の底や側面への付き方が違う。スパッタは、上面に厚く付き、側面や底には薄い。CVDは、それよりむらが小さい。ALDは、ほぼ均一に付く。
回路が細かくなり、溝が深く細くなるほど、均一に付ける方法が重要になる。そのため、細かい部分には、ALDのように、付き方が均一な方法が選ばれる。
使い分けの考え方
どの方法を選ぶかは、付ける材料、必要な厚さ、表面の形、許せる時間で決まる。厚い膜を速く付けたいときは、速い方法を選ぶ。極めて薄い膜を精密に付けたいときは、遅くても精密な方法を選ぶ。
また、銅の配線には、成膜のほかに、めっきという方法も使われる。配線の工程は、別のページで学ぶ。
このページのまとめ
成膜には、材料をたたき出して付けるスパッタ、ガスの反応で付ける化学気相成長、一層ずつ付ける原子層堆積がある。凹凸への付き方、厚さの精密さ、かかる時間が、方法ごとに違う。回路が細かくなるほど、均一に付ける方法が重要になる。
- 工程:成膜(CVD、PVD、ALD)
- 用語:ALD:原料ガスを交互に供給し、薄膜を原子層単位で積み重ねる成膜手法。
- 用語:CVD:原料ガスの化学反応で、ウェーハ表面に薄い膜をつくる成膜法。
- 用語:スパッタリング:真空中でプラズマのイオンをターゲットに衝突させ、はじき出した原子を基板に付着させて薄い膜をつくる成膜法。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
深く細い溝の奥にも、むらなく膜を付けやすい方法はどれか。
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答え:1. 原子層堆積
原子層堆積は、一層ずつ付くため、深く細い溝にも均一に付きやすい。
問2
スパッタの説明として、正しいものはどれか。
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答え:1. ターゲットにイオンをぶつけ、たたき出した粒をウェーハに付ける
スパッタは、ターゲットから粒をたたき出して、ウェーハに降り積もらせる方法である。