6. パワー半導体10 / 10ページ

作り方と信頼性:製造、パッケージ、試験

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 作り方も、論理回路とは違う
  2. ウェーハを薄くして、裏側を作る
  3. 材料による、工場の違い
  4. 大きな電気と熱を扱う、パッケージ
  5. 試験:耐圧と、切り替え
  6. 信頼性:長く使えるか
  7. 品質を保つ工夫
  8. このページのまとめ
  9. 関係する工程と用語
  10. 次に読む
  11. 理解度チェック

パワー半導体の作り方と、長く安定して使えることを確かめる考え方を説明する。ウェーハを薄くして裏側に電極を付ける製造、大電流と放熱に向くパッケージとパワーモジュール、耐圧や切り替えを調べる試験、熱の繰り返しなどの信頼性の試験を扱う。

製造の流れと、パワーモジュールの断面(模式図)

  1. 表側の回路を作る裏側から削って薄くする裏側の層と電極を作る耐圧などを試験するパッケージにする製造の流れウェーハを薄くして裏側を作る
  2. チップチップはんだ絶縁の基板放熱板熱を逃がすパワーモジュールの断面熱は下へ逃げる
図:左は、パワー半導体に特有の製造の流れ。表側の回路を作ったあと、ウェーハを裏側から削って薄くし、裏側の層と電極を作り、試験をしてパッケージにする。右は、パワーモジュールの断面。チップで生じた熱は、はんだ、絶縁の基板、放熱板を通って逃げる。目盛りのない模式図、本サイトで作成

作り方も、論理回路とは違う

パワー半導体も、ウェーハの上に、成膜、リソグラフィ、エッチング、イオン注入などの工程で作る。基本は、論理回路の工程と同じである。ただし、電気を縦に流し、大きな電気と高い電圧を扱うので、工程にも、パッケージにも、試験にも、特有の点がある。このページでは、それらを順に見ていく。

ウェーハを薄くして、裏側を作る

電気を縦に流すパワー半導体では、ウェーハの裏側にも、電極や、不純物の層が必要になる。表側の回路を作り終えたウェーハを、裏側から削って、薄くする。薄くするのは、電気が通る距離を短くして、入のときの抵抗を下げるためである。

薄くしたウェーハの裏側に、不純物を打ち込み、熱処理をして、IGBTのp型の層などを作る。そして、金属の膜を付けて、裏側の電極にする。薄いウェーハは、割れやすく、反りやすいので、扱いに注意が要る。

材料による、工場の違い

シリコンのパワー半導体は、論理回路と近い設備で作れるので、大きなウェーハで効率よく作れる。炭化ケイ素や窒化ガリウムは、結晶の育て方や、熱処理の温度が違い、専用の装置や条件が必要になる。ウェーハの大きさも、シリコンほど大きくない。この違いが、費用に表れる。

大きな電気と熱を扱う、パッケージ

パワー半導体のパッケージには、大きな電流を流す太い配線と、チップの熱を逃がす構造が求められる。チップを、熱をよく伝える絶縁の基板の上に載せ、金属の放熱板に固定する。配線には、太い金属の線や、金属の板を使うことがある。チップと基板の接合には、はんだや、金属の粒を焼き固めた材料が使われる。

複数のチップを、一つのパッケージにまとめたものを、パワーモジュールと呼ぶ。インバーターには、スイッチが複数必要なので、それらを一つのモジュールにまとめると、配線が短くなり、扱いやすくなる。高い電圧に耐えるため、チップのまわりは、絶縁の樹脂やゲルで固める。

試験:耐圧と、切り替え

完成したチップは、試験で確かめる。まず、耐圧の試験である。高い電圧をかけて、漏れる電流を測り、決められた耐圧を満たすかを調べる。次に、入のときの抵抗や、スイッチの切り替えの性質を測る。大きな電流を流すので、試験の装置の針も、大きな電流に耐えるものが要る。

試験は、ウェーハの状態と、パッケージにした後の、両方で行う。高い温度や、低い温度でも、性質が変わらないかを確かめる。

信頼性:長く使えるか

パワー半導体は、車や、鉄道、電力の設備のように、長い期間使われる。そのため、長く使っても性質が変わらないことを、信頼性の試験で確かめる。

代表的な試験に、温度を繰り返し上げ下げする試験がある。温度が変わると、チップや接合の材料が、伸び縮みを繰り返す。材料ごとに伸び縮みが違うので、接合の部分に力がかかり、ひびが入ることがある。実際に電流を流して、自ら熱を出させながら繰り返す試験もある。

このほか、高い電圧をかけたまま、高い温度や湿度に置く試験、ゲートの絶縁膜の寿命を調べる試験などがある。車に使う部品には、車向けの品質の規格に沿った試験が求められる。問題が見つかった部品は、原因を調べ、設計や工程に戻して改善する。

品質を保つ工夫

信頼性は、試験だけで決まるわけではない。まず、欠陥の少ない結晶と、清浄な工程で作ることが基本である。そのうえで、出荷前に、全数に近い形で試験を行い、基準に合わないものを除く。

初期の不良を取り除くため、高い温度や電圧をかけて、一定の時間動かす試験(バーンイン)を行うこともある。弱い部品は、この段階で壊れるので、出荷前に取り除ける。

また、どの工程で、どの条件で作られたかを、記録しておくことが重要である。のちに問題が見つかったとき、同じ条件で作られた部品を特定して、対応できるからである。故障した部品は、断面を調べるなどして原因を突き止め、設計や工程の改善に生かす。

このページのまとめ

パワー半導体の作り方は、論理回路と基本は同じだが、ウェーハを薄くして裏側に電極を作る点などが特有である。パッケージには、大きな電流と放熱が求められ、複数のチップをまとめたパワーモジュールも使われる。耐圧や切り替えを調べる試験と、熱の繰り返しなどの信頼性の試験で、長く安定して使えることを確かめる。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

パワー半導体で、ウェーハの裏側を削って薄くする目的として、適切なものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 電気が通る距離を短くして、入のときの抵抗を下げるため

電気を縦に流すので、薄いほど通る距離が短く、入のときの抵抗が下がる。

問2

温度を繰り返し上げ下げする信頼性の試験で調べていることはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 材料の伸び縮みの違いで、接合の部分にひびなどが入らないか

温度の変化で材料が伸び縮みし、材料ごとの違いが接合の部分に力をかける。長く使っても壊れないかを調べる。

問3

パワーモジュールの説明として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 複数のチップを一つのパッケージにまとめたもの

インバーターのようにスイッチが複数必要な回路で、複数のチップを一つにまとめて、配線を短く扱いやすくする。