温度、圧力、動き、音などを電気の信号に変えるセンサーの仕組みと、半導体の製造の技術で小さな機械の形を作るMEMSを説明する。動きを感じるセンサー、圧力のセンサー、マイクの例と、作り方の特徴、信号を処理する回路とのつながりを扱う。
MEMSのセンサーの仕組み(模式図)
- 動きを感じるセンサーおもりのずれを、電極の間の電気の量の変化で測る
- 部品を浮かせる足場の層を溶かして、動けるすき間を作る
図:左は、動きを感じるセンサーを上から見た図。細い梁(ジグザグの線)で支えたおもりに、くしの歯のような電極が付き、枠の側の電極と向かい合う。動くとおもりがずれ、電極の間の距離が変わる。右は、部品を浮かせる作り方の断面。上は、あとで取り除く層の上に部品の層を作ったところ。下は、取り除く層を溶かして、部品が浮いたところ。模式図、本サイトで作成センサーは、機器の感覚
スマートフォンは、画面の向きを変えると表示を回し、歩数を数え、声を聞き取る。自動車は、ぶつかったことを感じて安全の装置を動かし、タイヤの空気の圧力を見張る。こうした働きを支えているのが「センサー」である。
センサーは、温度、圧力、光、音、動きなど、周りの世界の変化を感じ取り、電気の信号に変える部品である。人でいえば、目や耳、皮膚の感覚に当たる。前のページで学んだアナログ半導体は、センサーが作った信号を大きくし、デジタルの信号に変える役割を受け持つ。
分野「デバイス」で学んだイメージセンサーは、光を感じるセンサーの代表である。このページでは、それ以外のセンサーと、小さな機械の形を持つセンサーを作る技術を見ていく。
半導体で作る、小さな機械:MEMS
センサーの中には、内部に、動く小さな部品を持つものがある。たとえば、揺れると動くおもりや、押されるとたわむ薄い膜である。
こうした小さな機械の形を、半導体の製造の技術を使ってシリコンなどの上に作り込んだものを「MEMS」と呼ぶ。微小な電気と機械のしくみ、という意味の英語の頭文字である。
MEMSは、チップの上の回路を作るのと同じように、成膜、リソグラフィ、エッチングをくり返して作る。違うのは、回路だけでなく、動く部品やすき間、穴といった立体的な形を作る点である。
動く部品を作る工夫
動く部品を作るには、部品の下にすき間を空けて、浮かせる必要がある。
そのための方法の一つが、あとで取り除く層を使うことである。まず、あとで取り除く層を膜として付け、その上に、動く部品になる層を重ねて形を作る。最後に、下の層だけを溶かして取り除くと、上の部品が浮いた状態で残る。この下の層は、足場のような役割を果たす。
また、シリコンを深く垂直に掘るエッチングも使われる。分野「デバイス」で学んだ、メモリのセルを縦に積むための深い穴を掘る技術と、考え方は同じである。
動きを感じる:加速度とかたむき
動きを感じるMEMSのセンサーでは、ばねのような細い梁で支えたおもりを、チップの中に作る。機器が動くと、おもりは止まっていようとするので、まわりの枠に対して少しずれる。
おもりと枠には、くしの歯のように向かい合った電極が付いている。おもりがずれると、向かい合う電極の間の距離が変わり、電極の間にためられる電気の量が変わる。この変化を回路で測れば、どれだけ動いたかが分かる。
この仕組みで、速さの変わり方(加速度)や、地面に対するかたむきを知ることができる。回転の速さを感じるセンサーも、振動させたおもりが、回転によって受ける力を測る仕組みで作られる。
押されて、たわむ:圧力とマイク
圧力を感じるセンサーでは、シリコンを薄く削って、たわむ膜を作る。膜の片側と反対側で圧力が違うと、膜がたわむ。
膜のたわみは、電気で測る。膜の上に、引っ張られると電気の通りやすさが変わる部分を作っておく方法や、膜と向かい合う電極の間の電気の量の変化を測る方法がある。
マイクも、同じ考え方で作れる。音は、空気の圧力の細かい揺れである。音が届くと薄い膜が揺れ、その揺れを電気の量の変化として取り出す。MEMSのマイクは小さく、多くの携帯機器に入っている。
包み方も、センサーの一部
MEMSのセンサーは、パッケージの作り方も特別である。ふつうのチップは樹脂などで封じ込めるが、動く部品を持つMEMSでは、部品が動けるように、まわりに空間を残す必要がある。
さらに、センサーの種類によって、外とつながる必要があるかどうかが違う。圧力のセンサーやマイクは、外の空気の圧力や音を受けるために、穴を開けておく。一方、動きを感じるセンサーは、ごみや湿気から守るために、ふたで密閉する。
このように、MEMSでは、後工程のパッケージも、センサーの働きを決める大切な部分になる。
回路と組み合わせて使う
MEMSのセンサーが作る信号は、とても小さい。そこで、信号を大きくする増幅器や、デジタルに変える変換器と組み合わせて使う。センサーの部品と回路を、同じチップに作ることもあれば、別々のチップに作って、一つのパッケージにまとめることもある。
さらに、計算をする回路で、複数のセンサーの値を組み合わせて、向きや位置をより正しく求めることもある。センサーは、アナログとデジタルの半導体と一緒になって、機器の感覚として働いている。
このページのまとめ
センサーは、周りの世界の変化を電気の信号に変える部品である。MEMSは、半導体の製造の技術で、動く小さな部品を持つ機械の形を作り込んだもので、あとで取り除く層や深いエッチングを使って作る。動きを感じるセンサーは、おもりのずれを電極の間の電気の量の変化で測る。圧力のセンサーやマイクは、薄い膜のたわみを測る。動く部品のために、パッケージにも特別な工夫が要る。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
MEMSの説明として、正しいものはどれか。
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答え:1. 半導体の製造の技術を使って、動く小さな部品を持つ機械の形をチップに作り込んだもの
MEMSは、成膜、リソグラフィ、エッチングなどの技術で、回路だけでなく、動く部品やすき間などの立体的な形を作り込んだものである。
問2
MEMSで、動く部品を浮かせて作る方法として、本文で説明したものはどれか。
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答え:2. あとで取り除く層の上に部品の層を作り、最後に下の層だけを溶かして取り除く
あとで取り除く層を足場のように使い、その上に部品の層を作ってから、下の層だけを溶かして取り除くと、部品が浮いた状態で残る。
問3
動きを感じるMEMSのセンサーが、動きを測る仕組みとして、正しいものはどれか。
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答え:1. おもりのずれで、向かい合う電極の間の距離が変わり、ためられる電気の量が変わるのを測る
機器が動くとおもりが枠に対して少しずれ、くしの歯のように向かい合った電極の間の距離が変わる。電極の間にためられる電気の量の変化を測ると、動きが分かる。