半導体が消費する電力は熱になり、素子の内部の温度(接合温度)を上げる。熱抵抗を使った接合温度の式と、シリコンのチップ自体の熱抵抗の見積もりから、温度上昇を決める量を読む。
接合温度は、消費電力と熱抵抗の積だけ上がる
- 消費電力と接合温度傾きが熱抵抗にあたる
- 熱抵抗の比べ桁が大きく違う
図:左は、周囲60℃、熱抵抗100℃/Wと仮定したときの、消費電力と接合温度の関係(実際の製品の値ではない)。右は、熱抵抗の比べで、横軸は対数の目盛り。チップ自身は面積1 cm²、厚さ0.5 mmとして、CERNの資料のシリコンの熱伝導率から本サイトで計算した式
は接合温度で、素子の内部の温度である。 は周囲の温度、 は素子が消費する電力、 は接合から周囲までの熱抵抗(単位は ℃/W)である[1]。右辺の第2項が、温度の上昇分 にあたる[1]。
熱抵抗は、データシートの絶対最大定格から、次のように求められる[1]。
は最大の接合温度、 は周囲25℃での許容損失である[1]。
式のどこを見るか
見るのは、 が温度の上昇分を決めていることである。電力 が同じでも、 が大きいほど、素子の内部は高温になる。 が1 ℃/W なら、1 W の消費で1 ℃上がる。
温度の上昇は、熱の流れる道筋の熱抵抗の合計で決まる。素子が放熱板に取り付けてあるときは、接合からケースまでの熱抵抗 を使う[1]。
素材そのものの熱抵抗は、厚さ 、断面積 、熱伝導率 から、次のように見積もれる。
シリコンのチップ自身の熱抵抗は、この式で見積もれる(数値例)。
接合温度は、信頼性にも関わる。温度が上がると、劣化の進みが速くなる(「アレニウス則」「加速試験」のページ)。
数値例
シリコンの熱伝導率は、1.5 W/(cm·K) である[2]。面積1 cm、厚さ0.05 cm(0.5 mm)のチップの熱抵抗は、 から、約0.033 ℃/W になる(本サイトで計算)。1 W を消費しても、チップの表と裏の差は約0.03 ℃である。次の仮定の値(100 ℃/W)に比べて、桁違いに小さい。
接合温度の式は、次の仮定の値で確かめる。データシートの値を、 ℃、 W と仮定すると、 ℃/W になる。周囲が60 ℃、消費電力が0.5 W のとき、温度の上昇は ℃で、 ℃ である(いずれも本サイトで計算)。
この例の数値は、式の読み方を確かめるために置いた仮定である。実際の製品の値ではない。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
消費電力が同じとき、熱抵抗が大きい素子は、接合温度がどうなるか。
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答え:2. 高くなる
温度の上昇分は R × P である。P が同じなら、R が大きいほど上昇分が大きく、接合温度は高くなる。
問2
熱抵抗が100 ℃/W の素子で、周囲が60 ℃、消費電力が0.5 W のときの接合温度はいくつか。
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答え:3. 110 ℃
温度の上昇は 100 × 0.5 = 50 ℃ である。周囲の60 ℃ に足して、110 ℃ になる。