熱設計と接合温度:消費電力が温度に変わる式

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

半導体が消費する電力は熱になり、素子の内部の温度(接合温度)を上げる。熱抵抗を使った接合温度の式と、シリコンのチップ自体の熱抵抗の見積もりから、温度上昇を決める量を読む。

接合温度は、消費電力と熱抵抗の積だけ上がる

  1. 6011015000.51消費電力(W)接合温度(℃)最大の接合温度(仮定)消費電力と接合温度傾きが熱抵抗にあたる
  2. チップ自身0.0333仮定の素子10010-2100102熱抵抗(℃/W)熱抵抗の比べ桁が大きく違う
図:左は、周囲60℃、熱抵抗100℃/Wと仮定したときの、消費電力と接合温度の関係(実際の製品の値ではない)。右は、熱抵抗の比べで、横軸は対数の目盛り。チップ自身は面積1 cm²、厚さ0.5 mmとして、CERNの資料のシリコンの熱伝導率から本サイトで計算した

式

Tj=Ta+Rth(j-a)×P

Tj は接合温度で、素子の内部の温度である。Ta は周囲の温度、P は素子が消費する電力、Rth(j-a) は接合から周囲までの熱抵抗(単位は ℃/W)である[1]。右辺の第2項が、温度の上昇分 ΔTj にあたる[1]。

熱抵抗は、データシートの絶対最大定格から、次のように求められる[1]。

Rth(j-a)=Tj(max)−25℃PC

Tj(max) は最大の接合温度、PC は周囲25℃での許容損失である[1]。

式のどこを見るか

見るのは、Rth が温度の上昇分を決めていることである。電力 P が同じでも、Rth が大きいほど、素子の内部は高温になる。Rth が1 ℃/W なら、1 W の消費で1 ℃上がる。

温度の上昇は、熱の流れる道筋の熱抵抗の合計で決まる。素子が放熱板に取り付けてあるときは、接合からケースまでの熱抵抗 Rth(j-c) を使う[1]。

素材そのものの熱抵抗は、厚さ L、断面積 A、熱伝導率 κ から、次のように見積もれる。

R=LκA

シリコンのチップ自身の熱抵抗は、この式で見積もれる(数値例)。

接合温度は、信頼性にも関わる。温度が上がると、劣化の進みが速くなる(「アレニウス則」「加速試験」のページ)。

数値例

シリコンの熱伝導率は、1.5 W/(cm·K) である[2]。面積1 cm2、厚さ0.05 cm(0.5 mm)のチップの熱抵抗は、R=0.05/(1.5×1) から、約0.033 ℃/W になる(本サイトで計算)。1 W を消費しても、チップの表と裏の差は約0.03 ℃である。次の仮定の値(100 ℃/W)に比べて、桁違いに小さい。

接合温度の式は、次の仮定の値で確かめる。データシートの値を、Tj(max)=150 ℃、PC=1.25 W と仮定すると、Rth(j-a)=(150−25)/1.25=100 ℃/W になる。周囲が60 ℃、消費電力が0.5 W のとき、温度の上昇は 100×0.5=50 ℃で、Tj=110 ℃ である(いずれも本サイトで計算)。

この例の数値は、式の読み方を確かめるために置いた仮定である。実際の製品の値ではない。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

消費電力が同じとき、熱抵抗が大きい素子は、接合温度がどうなるか。

答えと解説を見る

答え:2. 高くなる

温度の上昇分は R × P である。P が同じなら、R が大きいほど上昇分が大きく、接合温度は高くなる。

問2

熱抵抗が100 ℃/W の素子で、周囲が60 ℃、消費電力が0.5 W のときの接合温度はいくつか。

答えと解説を見る

答え:3. 110 ℃

温度の上昇は 100 × 0.5 = 50 ℃ である。周囲の60 ℃ に足して、110 ℃ になる。

出典

  1. 半導体の接合温度の計算方法(外部サイト)東芝デバイス&ストレージ株式会社確認日:
  2. General Characteristics of Silicon(外部サイト)CERN(半導体検出器の資料)確認日: