複数のチップを一つのパッケージの中で並べたり重ねたりして、一つの製品として働かせる先端パッケージの考え方を説明する。チップの間をつなぐ細かい配線の層、チップを縦に貫く電極、細かい接続の方法と、熱や検査の課題を扱う。
チップを並べる・重ねる(断面の模式図)
- 横に並べる中継の板の細かい配線で、チップどうしを短くつなぐ
- 縦に重ねるチップを貫く電極で、上下を最短の距離でつなぐ
図:左は、チップを横に並べる形。計算をするチップと、メモリのチップを、細かい配線を持つ中継の板の上に並べ、板の中の配線(線)でチップどうしを短くつなぐ。右は、チップを縦に重ねる形。薄く削ったチップを重ね、チップを上下に貫く電極(縦の線)でつなぐ。模式図、本サイトで作成パッケージの役割が変わってきた
工程の「パッケージング」のページで学んだとおり、パッケージは、切り分けたチップを守り、外の基板とつなぐための入れ物である。長いあいだ、パッケージの主な役割は、一つのチップを守って、電気の出入り口を作ることだった。
ところが、パッケージが製品の性能を大きく左右する場面が増えてきた。複数のチップを、一つのパッケージの中で並べたり重ねたりして、まるで一つの大きなチップのように働かせる技術が広がっているからである。こうした技術を、まとめて「先端パッケージ」と呼ぶことがある。
なぜ、チップを分けて組み合わせるのか
すべての機能を一枚の大きなチップに作り込めば、チップの中の配線は短く、信号は速く伝わる。それでも、チップを分けて組み合わせる理由がある。
一つ目は、歩留まりである。チップが大きいほど、その中に欠陥が入る確率が高くなり、良品の割合が下がる。小さなチップに分ければ、一つ一つの良品の割合は上がり、良いチップだけを選んで組み合わせられる。
二つ目は、機能ごとに合った製造の技術を選べることである。計算の部分は微細化を進めた技術で、入出力やアナログの部分は前の世代の技術で、メモリはメモリの技術で、と作り分けられる。
三つ目は、作れるチップの大きさに限りがあることである。リソグラフィで一度に写せる面積には限りがあり、それより大きなチップは作れない。チップを分ければ、その限りを超える大きさの製品を作れる。
分野「業界の構造と企業」で学んだチップレットは、この考え方に立つものである。
横に並べて、細かい配線でつなぐ
複数のチップを横に並べる場合、チップどうしを、たくさんの細かい配線で短くつなぐ必要がある。ふつうのパッケージの基板では、配線が太く、間隔も広いので、十分な数の配線を通せない。
そこで、チップと基板の間に、細かい配線の層を持つ中継の板を入れる方法がある。中継の板は、シリコンや、細かい配線を作れる樹脂などで作られる。その上にチップを並べ、板の中の細かい配線で、チップどうしを結ぶ。計算をするチップの隣に、メモリのチップを並べる使い方が代表的である。
中継の板を使わず、基板の一部に細かい配線の小さな橋を埋め込んで、隣り合うチップの縁どうしだけをつなぐ方法もある。
縦に重ねて、貫く電極でつなぐ
チップを縦に重ねる方法もある。重ねれば、チップどうしの距離はさらに短くなり、パッケージの面積も小さくできる。
重ねたチップどうしをつなぐために、チップを上下に貫く細い電極を作る。シリコンに深く細い穴を掘り、穴の内側を絶縁し、金属で埋めて作る。この貫く電極を使えば、チップの表と裏を、最短の距離でつなげる。
分野「デバイス」で学んだHBMは、DRAMのチップを何枚も重ね、この貫く電極で上下をつないだメモリである。イメージセンサーの積層型も、チップを重ねる技術を使っている。
重ねるチップは、貫く電極の穴を通すため、また全体を薄くするために、裏側を削って非常に薄くする。薄いチップは割れやすく、反りやすいので、扱いには高い技術が必要になる。
つなぎ目を、さらに細かく
チップどうしのつなぎ目は、小さなはんだの粒(バンプ)で作るのが一般的である。つなぎ目の数を増やすには、粒を小さくし、間隔を狭くする必要がある。
さらに進んだ方法として、はんだを使わずに、二つのチップの表面の銅の電極どうしを、直接くっつける方法がある。表面を極めて平らに磨き、位置を正確に合わせて重ね、熱を加えて、銅どうしと絶縁膜どうしを一度に貼り合わせる。この方法なら、はんだの粒よりはるかに狭い間隔で、非常に多くのつなぎ目を作れる。
表面を極めて平らにするには、CMPの技術が欠かせない。先端パッケージでは、前工程で使われてきた技術が、後工程にも使われるようになっている。
熱と検査の課題
チップを近くに並べたり重ねたりすると、熱がこもりやすくなる。特に、重ねたチップの間にある部分は、熱が逃げにくい。熱が高くなると、チップの性能が落ちたり、寿命が短くなったりする。そのため、熱をうまく外へ逃がす設計が欠かせない。
検査も難しくなる。組み合わせたあとで、一つでも不良のチップが入っていると、製品全体が不良になる。高価なチップを組み合わせる場合、その損失は大きい。そこで、組み合わせる前に、一つ一つのチップを十分に確かめておくことが大切になる。
前工程と後工程の境目が変わる
先端パッケージでは、細かい配線、深い穴、極めて平らな表面など、これまで前工程で使われてきた技術が多く使われる。そのため、チップを作る会社が先端パッケージも手がけたり、後工程の会社が前工程に近い設備を持ったりと、前工程と後工程の境目が変わりつつある。
このページのまとめ
先端パッケージは、複数のチップを一つのパッケージの中で並べたり重ねたりして、一つの製品として働かせる技術である。歩留まり、機能ごとの作り分け、作れる大きさの限りから、チップを分けて組み合わせる。横に並べるときは細かい配線の中継の板や小さな橋で、縦に重ねるときはチップを貫く電極でつなぐ。銅の電極どうしを直接くっつける細かい接続も使われる。熱と検査が大きな課題である。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
機能を一枚の大きなチップに作らず、小さなチップに分けて組み合わせる理由として、本文で挙げていないものはどれか。
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答え:4. チップを分けると、熱がまったく出なくなるから
チップを分ける理由は、歩留まり、機能ごとの作り分け、作れる大きさの限りである。チップを近くに並べたり重ねたりすると、かえって熱がこもりやすくなる。
問2
縦に重ねたチップどうしをつなぐために、チップを上下に貫いて作る電極の作り方として、正しいものはどれか。
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答え:2. シリコンに深く細い穴を掘り、内側を絶縁し、金属で埋める
シリコンに深く細い穴を掘り、内側を絶縁してから金属で埋めると、チップの表と裏を最短の距離でつなぐ電極ができる。
問3
はんだの粒を使わずに、二つのチップの表面の銅の電極どうしを直接くっつける方法の利点として、正しいものはどれか。
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答え:2. はんだの粒よりはるかに狭い間隔で、非常に多くのつなぎ目を作れる
表面を極めて平らに磨き、位置を合わせて銅どうしと絶縁膜どうしを貼り合わせる方法では、はんだの粒より狭い間隔で、多くのつなぎ目を作れる。