不良になったチップや、試験で壊れた製品が、どこで、なぜ壊れたのかを突き止める故障解析の進め方を説明する。電気で症状を調べる、壊れた場所を探す、中を開けて削って見る、原因を製造や設計に戻す、という流れと、使われる道具を扱う。
故障解析の進め方(模式図)
- 進め方手がかりを集めて、少しずつ場所を絞り込む
- 断面を出して見るその場所だけを削って、中の様子を確かめる
図:左は、故障解析の進め方。電気で症状を確かめ、熱や光で壊れた場所を探し、開ける前に外から調べ、開けて削って見て、分かった原因を製造と設計に戻す。右は、壊れた場所の断面を見る様子。細く絞ったイオンの線で、その場所だけを削って断面を出し、電子顕微鏡で拡大して見る。模式図、本サイトで作成壊れた理由が分からなければ、直せない
分野のこれまでのページで、製造の途中の検査、ウェーハテスト、最終テスト、信頼性の試験を学んだ。こうした確かめ方で、不良や壊れた製品が見つかる。
見つかった不良品を取り除くだけでは、同じ不良は、また起きる。不良を減らすには、どこが、なぜ壊れたのかを突き止め、その原因を直す必要がある。この、壊れた理由を突き止める作業を「故障解析」と呼ぶ。
チップの中には、非常に多くのトランジスタと配線がある。その中から、壊れた一つの場所を見つけ出すのは、とても根気のいる作業である。故障解析は、手がかりを集めながら、少しずつ場所を絞り込んでいく、探偵の調査に似ている。
まず、症状を確かめる
最初に、どのように壊れているのかを、電気で確かめる。
決まった信号を入れたときに、どの出力が間違っているか。電源にふつうより多くの電気が流れていないか。温度や電圧を変えると、症状が変わるか。こうした症状を調べると、チップの中のどの部分が怪しいのかが、ある程度分かる。
テストの記録や、設計のデータと照らし合わせると、間違った出力を作る回路をたどって、壊れている可能性が高い場所を、計算で絞り込むこともできる。
壊れた場所を探す
次に、チップの上で、壊れた場所を実際に探す。
壊れた場所では、電気が漏れていて、わずかに熱を出したり、かすかな光を出したりすることがある。そこで、チップに電気を流しながら、熱をとらえるカメラや、かすかな光をとらえるカメラで、チップの表面を観察する。熱や光が出ている点が、壊れた場所の候補になる。
チップの表面は、何層もの配線でおおわれていて、下のトランジスタが見えにくい。そのため、配線の少ない裏側から、シリコンを通して観察することも多い。シリコンは、ある種類の光を通すので、裏側から中の様子をとらえられる。
中を開けて、見る
場所の候補が見つかったら、その場所を、実際に開けて見る。
まず、パッケージの樹脂を、薬液などで取り除いて、チップを取り出す。次に、上の層から順に、膜を少しずつ削ったり溶かしたりして、壊れている層まで掘り下げる。各層で、顕微鏡で形を確かめる。
特定の場所の断面を見たいときは、細く絞ったイオンの線で、その場所だけを削り、断面を出す。出した断面を、電子顕微鏡で拡大して見ると、配線の切れ目や、膜のわずかな傷、異物などが見えてくる。さらに細かいものを見るには、薄く削り出した試料に電子の線を通して観察する装置も使う。
見つかった異物が何の物質かは、電子の線を当てたときに出る、物質ごとに決まった信号などから調べる。
開ける前に、外から調べる
中を開けると、元には戻せない。そこで、開ける前に、外から調べられることは調べておく。
たとえば、X線を使うと、パッケージを開けずに、中の配線のつながりや、つなぎ目のひびを透かして見られる。音の波を当てて、はね返り方から、パッケージの中のはがれやすき間を見つける方法もある。
見つけにくい壊れ方もある
壊れ方の中には、いつも起きるのではなく、温度が高いときだけ、あるいは特定の信号の組み合わせのときだけ起きるものがある。こうした壊れ方は、症状を再現するだけでも難しい。温度や電圧を変えながら、症状が出る条件を根気よく探す。
また、細かくなったチップでは、壊れた場所そのものが非常に小さく、見つけても形の変化が分かりにくいことがある。電気の測り方と、拡大して見る方法を組み合わせて、手がかりを積み重ねていく。
原因を、製造と設計に戻す
壊れた場所と壊れ方が分かったら、なぜそうなったのかを考える。
異物が見つかったなら、どの工程で入り込んだのかを、その異物の種類と、ウェーハの処理の記録から探す。分野「工場を支える技術」で学んだ、処理の記録が、ここで役に立つ。配線が細っていたなら、製造の条件の問題か、設計で流す電気が大きすぎたのかを調べる。
原因が分かれば、製造の工程の条件を直したり、装置を整えたり、設計を見直したりする。直した結果、同じ不良が減ったかを確かめて、ようやく一つの解析が終わる。
歩留まりを上げる力
チップの製造が始まったばかりのころは、良品の割合(歩留まり)が低いことが多い。不良品を一つずつ解析して原因を取り除いていくことで、歩留まりは少しずつ上がっていく。
故障解析は、目立たない作業だが、製品の品質と、製造の費用を左右する大切な仕事である。解析の道具も、チップが細かくなるのに合わせて、より細かいものを見分けられるように進歩し続けている。
このページのまとめ
故障解析は、壊れたチップの、どこが、なぜ壊れたのかを突き止める作業である。まず電気で症状を確かめ、計算で怪しい場所を絞り込む。熱や光をとらえるカメラで壊れた場所を探し、裏側から観察することもある。開ける前にX線や音の波で外から調べ、その後、パッケージを開け、層を掘り下げ、断面を電子顕微鏡で見る。分かった原因を製造と設計に戻して直し、歩留まりを上げていく。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
チップの上で壊れた場所を探す方法として、本文で説明したものはどれか。
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答え:1. チップに電気を流しながら、壊れた場所が出すわずかな熱やかすかな光をカメラでとらえる
壊れた場所では電気が漏れて、わずかな熱やかすかな光が出ることがある。電気を流しながら、熱や光をとらえるカメラで観察し、場所の候補を見つける。
問2
パッケージを開ける前に、外から調べる理由として、正しいものはどれか。
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答え:1. 開けると元には戻せないので、外から調べられることを先に調べておくため
中を開けると元には戻せない。そのため、X線で中のつながりを透かして見たり、音の波ではがれを見つけたりして、外から調べられることを先に調べる。
問3
故障解析で、見つかった異物がどの工程で入り込んだのかを探す手がかりとして、本文で挙げているものはどれか。
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答え:1. 異物の種類と、ウェーハの処理の記録
異物の種類と、どのウェーハがいつどの装置で処理されたかという記録を照らし合わせると、異物が入り込んだ工程を探せる。