チップの中の不良を、完成後に見つけやすくするための設計の考え方を説明する。内部に手が届かない難しさ、回路の途中を読み書きする仕組み、チップが自分で確かめる仕組み、テストにかかる時間と費用の考え方を扱う。
スキャンと、限られた端子(模式図)
- スキャン外から値を流し込み、結果を読み出す
- 限られた端子内部は外から見えない
図:左は、スキャン。テストのときだけ、回路の途中の記憶素子を一本の列につなぎ、外から値を流し込み、結果を外へ読み出す。右は、チップの内部と端子。内部には多数の素子があるが、外からつなげる端子は限られる。目盛りのない模式図、本サイトで作成内部は、外から見えない
チップの中には、非常に多くのトランジスタが入っている。しかし、外から直接つなげる端子は、ごく限られた数しかない。内部の大部分は、外から見えず、触れることもできない。
テストの装置は、この限られた端子から信号を入れ、出てきた信号を調べて、チップの中の不良を見つける。ところが、端子から遠い回路の奥にある不良は、外から信号を入れても、結果が出てこないことがある。何も工夫をしなければ、不良を見つけるのが、非常に難しくなる。
設計の段階から、テストを考える
そこで、チップの設計の段階から、テストしやすい回路にしておく。これを、テストのための設計と呼ぶ。通常の働きには必要ない回路を、テストのために付け加える。回路が少し大きくなる代わりに、不良を見つけやすくなる。
付け加える回路が大きすぎると、チップの面積が増えて、費用が上がる。逆に、付け加えなければ、不良を見逃す。そのつり合いを、設計で決める。テストのための設計は、設計の流れの一部として、設計ツールを使って行われる。
回路の途中を、読み書きする
テストしやすくする代表的な方法が、回路の途中の記憶素子を、数珠つなぎにすることである。記憶素子は、論理回路の途中で、値を一時的に覚える回路である。通常は、それぞれが別々に働いている。
テストのときだけ、すべての記憶素子を、一本の長い列につなぐ。この列を使って、値を外から順に流し込み、回路を決まった状態にする。次に、回路を一回だけ動かし、その結果を記憶素子に取り込む。最後に、列を使って、結果を外へ順に読み出す。これで、回路の奥の値を、外から読み書きできる。この方法をスキャンと呼ぶ。
テストの信号を、自動で作る
スキャンで回路の奥を操作できると、どんな信号を入れて不良を見つけるかを、計算で決められる。たとえば、回路の特定の場所が、いつも決まった値のままになる不良を考える。その場所を通る信号の経路で、正常なら変わる値が、不良なら変わらないような、入力の組み合わせを探す。
この計算は、設計ツールが自動で行い、テストに使う信号の並び(テストパターン)を作る。多くの種類の不良を、できるだけ少ないテストパターンで見つけることが、目標である。見つけられる不良の割合を、故障検出率と呼ぶ。
チップが、自分で確かめる
メモリのように、同じ形の素子が大量に並んだ回路では、チップの中に、確かめるための回路を作り込む方法もある。この回路が、チップの中で、メモリに値を書き、読み出し、書いた値と合うかを確かめる。外から信号を入れ続ける必要がなく、速く確かめられる。
さらに、メモリの一部に不良が見つかったとき、あらかじめ用意した予備の素子に置きかえる仕組みもある。これにより、完全には良品でないチップを、良品として使え、歩留まりを上げられる。
時間と費用
テストには、時間がかかる。テストの装置は高価で、動かす時間に応じて、一つのチップのテストの費用が決まる。テストに時間がかかるほど、チップの費用が上がる。
そのため、テストにかかる時間を短くする工夫が、重要になる。スキャンの列を複数に分けて並行に読み書きする、テストパターンを圧縮して装置に入れる、といった方法が使われる。一方で、短くしすぎると、不良の見逃しが増える。時間と、見つけられる不良の割合のつり合いを取る。
このページのまとめ
チップの内部は外から見えないので、設計の段階から、テストしやすい回路を付け加える。記憶素子を数珠つなぎにして、回路の奥を外から読み書きするスキャンが、代表的な方法である。テストに使う信号の並びは、設計ツールが自動で作る。メモリでは、チップが自分で確かめる回路や、予備の素子への置きかえも使われる。テストの時間は費用に直結するので、見つけられる不良の割合とのつり合いを取る。
- 工程:回路設計(設計ツールを含む)
- 工程:最終検査(テスト)
- 用語:EDA(設計ツール):半導体の回路を設計し、検証し、製造用のデータにまとめるためのソフトウェアの総称である。
- 用語:プローバ:ウェーハ上のチップの電極に探針を接触させ、電気的特性を測る検査のために、ウェーハを位置合わせして移動させる装置。
- 用語:半導体テスタ:半導体チップに電気信号を与え、動作や電気的特性が仕様どおりかを調べて良否を判定する検査装置。
- 用語:歩留まり:製造した製品のうち、規格を満たす良品が占める割合。半導体では、ウェーハ上のチップのうち検査に合格したものの割合を指すことが多い。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
チップの内部を外から確かめるための代表的な方法として、正しいものはどれか。
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答え:1. テストのときだけ、記憶素子を一本の列につなぎ、外から値を読み書きする
テストのときだけ、すべての記憶素子を一本の長い列につなぎ、外から値を流し込んだり、結果を読み出したりする。これをスキャンと呼ぶ。
問2
テストのための回路を付け加えることの欠点として、正しいものはどれか。
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答え:1. 回路が大きくなり、チップの面積と費用が増える
テストのための回路は、通常の働きには必要ない。付け加えるとチップの面積が増え、費用が上がる。