発光と再結合:電子と正孔の積で決まる光の量

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 式
  2. 式のどこを見るか
  3. 数値例
  4. 基礎編のどこに効くか
  5. 次に読む
  6. 理解度チェック
  7. 出典

電子と正孔が結びついて光を出す割合を表す式から、キャリアの濃度が10倍になると発光が100倍になることと、結びつくまでの時間が短くなることを読む。直接遷移の材料の再結合係数の目安で、桁を確かめる。

濃度が上がると、再結合は急に増え、時間は短くなる

  1. 10221024102610281016101710181019濃度(cm⁻³)R(cm⁻³s⁻¹)再結合の数 R濃度が10倍で、100倍になる
  2. 10-910-810-710-61016101710181019濃度(cm⁻³)τ(秒)結びつくまでの時間 τ濃度が10倍で、1/10になる
図:再結合係数 B を10の−10乗 cm³/s と置いて計算した、濃度 n(n と p が等しい場合)と、再結合の数 R(左)、結びつくまでの時間 τ(右)の関係。横軸は濃度の指数、縦軸は対数の目盛り。B の値は、直接遷移の材料の桁の目安で、本サイトで計算した

式

R=B(np−ni2)

R は、単位体積あたり、単位時間に光を出して結びつく電子と正孔の対の数である。n は電子の濃度、p は正孔の濃度、ni は真性キャリア濃度である。B は再結合係数で、材料で決まり、単位は cm3/s である[1]。

濃度が十分高いときは、ni2 の項が無視でき、R≈Bnp になる。電子の濃度が正孔の濃度よりずっと高い状況では、結びつくまでの平均の時間 τ は、次の形で表せる。

τ=1Bn

式のどこを見るか

見るのは、積 np である。光を出して結びつくには、電子と正孔が出会う必要がある。出会う数は、二つの濃度の積に比例する。

n と p が同じ割合で増えるとき(電流を流して注入したときなど)、R は濃度の2乗で増える。濃度が10倍になると、R は100倍になる。

熱の平衡では np=ni2 となり、R は0になる。式の括弧は、平衡からのずれを表す。外から電子と正孔を注入して、np を ni2 より大きくしたときだけ、光が出る。

B は、材料で桁が変わる。前のページで読んだ直接遷移の材料では大きく、間接遷移の材料では、光を出す効率が約1,000分の1とされる[2]。

τ は、濃度が高いほど短くなる。

数値例

再結合係数 B の桁は、直接遷移の材料で、およそ 10−10 cm3/s とされる[1]。ここでは B=10−10 cm3/s として、式の読み方を確かめる。

n=p=1017 cm−3 のとき、R≈Bnp=10−10×1034=1024 cm−3s−1 である。濃度を 1018 cm−3 に10倍にすると、R は 1026 cm−3s−1 で、100倍になる(本サイトで計算)。

電子の濃度が 1018 cm−3 のとき、τ=1/(Bn)=1/(10−10×1018)=10−8 s で、10 ns(ナノ秒)になる。濃度が 1016 cm−3 なら1 μs、1019 cm−3 なら1 ns になる(本サイトで計算)。

この数値は、桁の目安として置いた値の計算である。実際の材料の値は、材料や温度で異なる。

基礎編のどこに効くか

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

電子と正孔の濃度を、どちらも10倍にすると、光を出して結びつく数 R はどうなるか。

答えと解説を見る

答え:2. 100倍になる

R は電子と正孔の濃度の積 np にほぼ比例する。両方が10倍なら、積は100倍になる。

問2

熱の平衡で、電子と正孔が結びついて出す光の正味の量はどうなるか。

答えと解説を見る

答え:3. 0になる

平衡では np = ni² で、式の括弧が0になる。外から電子と正孔を注入して np を大きくしたときだけ、光が出る。

出典

  1. direct recombination(nextnano3 データベースの解説)(外部サイト)nextnano確認日:
  2. Light Emission(Integrated Photonic Devices 講義資料)(外部サイト)国立清華大学(M.-C. Lee)確認日: