MOS構造とMOSFETの動き

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このページの目次
  1. トランジスタは、電気の流れを切り替えるスイッチ
  2. MOS構造:三つの層の重なり
  3. MOSFETの部品
  4. ゲートに電圧をかけないとき:流れない
  5. ゲートにプラスの電圧をかけたとき:流れる
  6. ゲートにはほとんど電気が流れない
  7. nMOSとpMOS
  8. 製造工程とのつながり
  9. このページのまとめ
  10. 関係する工程と用語
  11. 次に読む
  12. 理解度チェック

金属・酸化膜・半導体を重ねたMOS構造と、ゲートにかける電圧でソースとドレインの間に電子の通り道をつくるMOSFETの仕組みを、pn接合の知識をもとに説明する。

nMOSの断面(模式図)

  1. ソースゲートドレインnnp型の基板ゲートに電圧をかけないとき(切)ソースとドレインの間に二つのpn接合があり、電気はほとんど流れない
  2. ソースゲートドレインnnp型の基板+ゲートにプラスの電圧(入)酸化膜の下に電子が集まって反転層(チャネル)ができ、電気が流れる
図:nMOSでは、p型の基板にn型のソースとドレインを作り、その間の表面の上に酸化膜とゲートを載せる。ゲートにしきい値電圧より高いプラスの電圧をかけると、酸化膜の下に電子の通り道ができ、ソースからドレインへ電子が流れる。寸法は簡単にした模式図、本サイトで作成

トランジスタは、電気の流れを切り替えるスイッチ

分野「半導体の基礎」で、半導体は条件によって電気の通りやすさを変えられること、p型とn型をつなぐと電気が一方向にだけ流れることを学んだ。この分野では、その性質を使って作る部品「トランジスタ」を見ていく。

トランジスタは、小さな信号で電気の流れを入れたり切ったりする部品である。今のチップの中で数の上で中心になっているのは、「MOSFET」と呼ばれる種類のトランジスタである。このページでは、MOSFETの形と動きを説明する。

MOS構造:三つの層の重なり

MOSは、金属(Metal)、酸化膜(Oxide)、半導体(Semiconductor)の頭文字である。半導体の上に薄い酸化膜があり、その上に電極が載った三層の重なりを「MOS構造」と呼ぶ。

シリコンの場合、酸化膜には主にシリコンの酸化物が使われてきた。酸化膜は絶縁体なので、上の電極と下の半導体の間に電気はほとんど流れない。ただし、電極に電圧をかけると、酸化膜をはさんで、半導体の表面に電気を帯びた粒を引き寄せたり、遠ざけたりできる。これは、二枚の板で電気をためるコンデンサーと同じ働きである。

名前は最初の材料に由来している。今では、電極に金属以外の材料を使うことや、酸化膜の代わりに別の絶縁膜を使うこともあるが、呼び方はそのまま使われている。

MOSFETの部品

MOSFETは、MOS構造の両側に、電気の出入り口を付けた形をしている。ここでは、電子が主役になる「nMOS」を例にする。

土台はp型のシリコンで、「基板」と呼ぶ。その表面の二か所に、n型の領域を作る。電子が入ってくる側を「ソース」、出ていく側を「ドレイン」と呼ぶ。ソースとドレインの間の表面の上に、薄い酸化膜と電極が載っている。この電極を「ゲート」と呼ぶ。

名前のとおり、ソースは電子の源、ドレインは電子の出口、ゲートはその間の門である。門を開け閉めするのが、ゲートにかける電圧である。

ゲートに電圧をかけないとき:流れない

ゲートに電圧をかけないとき、ソースからドレインへ電気は流れるだろうか。

ソースとドレインはn型、その間の基板はp型である。電子がソースからドレインへ進むには、n型からp型へ、さらにp型からn型へと、二つのpn接合を通らなければならない。前の分野で学んだとおり、pn接合には電気の壁がある。ソースとドレインの間に電圧をかけても、どちらか一方の接合が逆方向になり、電気はほとんど流れない。

これが、スイッチの「切」の状態である。

ゲートにプラスの電圧をかけたとき:流れる

ゲートにプラスの電圧をかけると、酸化膜をはさんだ真下の基板の表面に、マイナスの電気を持つ電子が引き寄せられる。同時に、p型の多数キャリアである正孔は、表面から遠ざけられる。

ゲートの電圧を上げていくと、ある電圧を超えたところで、表面には正孔よりも電子が多い薄い層ができる。もともとp型だった表面の一部が、n型のように振る舞う状態である。この層を「反転層」と呼ぶ。

反転層は、n型のソースとn型のドレインを、電子の通り道としてつなぐ。この通り道を「チャネル」と呼ぶ。チャネルができると、ソースとドレインの間に電圧をかければ電気が流れる。これが、スイッチの「入」の状態である。

チャネルができ始めるゲートの電圧を「しきい値電圧」と呼ぶ。しきい値電圧より低ければ切、高ければ入となる。ゲートの電圧をさらに上げると、チャネルの電子が増え、流れる電気も増える。

ゲートにはほとんど電気が流れない

MOSFETの大きな利点は、ゲートと基板の間が酸化膜で隔てられていることである。ゲートの電圧で流れを操っても、ゲート自体にはほとんど電気が流れない。そのため、スイッチを入れたままにしておくのに、ほとんど電力を使わない。

この性質のおかげで、非常に多くのMOSFETを一つのチップに並べても、制御のための電力を抑えやすい。MOSFETが集積回路の中心になった理由の一つである。

nMOSとpMOS

ここまでのnMOSとは反対に、n型の基板の上にp型のソースとドレインを作ったものを「pMOS」と呼ぶ。pMOSでは、ゲートにマイナスの電圧をかけると表面に正孔が集まってチャネルができ、正孔が電気を運ぶ。

nMOSとpMOSは、入と切になる電圧の向きが反対である。この二つを組み合わせて使う回路の作り方を「CMOS」と呼ぶ。CMOSは、計算の回路で電力を抑えるための基本の形で、分野「論理回路」で詳しく扱う。

製造工程とのつながり

MOSFETは、ここまでに学んだ製造工程の組み合わせで作られる。ゲートの下の薄い絶縁膜は、酸化や成膜でつくる。ゲートの形は、リソグラフィで描き、エッチングで削り出す。ソースとドレインは、イオン注入でドーパントを入れて作る。

回路の微細化とは、このMOSFETを小さく作ることでもある。ゲートを短くすると、スイッチが速くなり、同じ面積により多くのトランジスタを並べられる。一方で、小さくするほど、切のときにも漏れる電気を抑えるのが難しくなる。微細化の工夫と課題は、この分野の先のページで扱う。

このページのまとめ

MOS構造は、半導体、薄い酸化膜、電極の重なりである。MOSFETは、その両側にソースとドレインを付けた形をしている。ゲートにかける電圧がしきい値電圧を超えると、酸化膜の下に反転層ができ、ソースとドレインをつなぐチャネルになって電気が流れる。ゲートにはほとんど電気が流れないため、少ない電力で多くのスイッチを動かせる。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

MOSの三つの文字が表す層の組み合わせとして、正しいものはどれか。

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答え:1. 金属、酸化膜、半導体

MOSは、金属(Metal)、酸化膜(Oxide)、半導体(Semiconductor)の頭文字である。今では電極に金属以外の材料を使うこともあるが、呼び方はそのまま使われている。

問2

nMOSのゲートにしきい値電圧より高いプラスの電圧をかけたとき、何が起きるか。

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答え:2. 酸化膜の下の表面に電子が集まって反転層ができ、ソースとドレインをつなぐチャネルになる

ゲートのプラスの電圧で、酸化膜の下の表面に電子が引き寄せられる。しきい値電圧を超えると反転層ができ、ソースとドレインをつなぐチャネルになって電気が流れる。

問3

MOSFETで、ゲート自体にほとんど電気が流れない理由として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. ゲートが基板と、絶縁体の酸化膜で隔てられているから

ゲートと基板の間には絶縁体の酸化膜があるため、ゲートには電気がほとんど流れない。そのため、スイッチを入れたままにするのに、ほとんど電力を使わない。