トランジスタを小さく作る「微細化」で何がよくなるのかと、小さくするほど切のときにも電気が漏れやすくなる課題、それを抑えるためにゲートでチャネルを囲む構造へ移ってきた流れを説明する。
ゲートがチャネルを押さえる形(断面の模式図)
- プレーナ型ゲートが、平らなチャネルを上の一面から押さえる
- FinFET板(フィン)のように立てたチャネルを、ゲートが三方から包む
- ゲート・オール・アラウンド(GAA)細い板のチャネルを重ね、ゲートが周りをすべて囲む
図:電気が流れる向きに直角に切った断面。プレーナ型ではゲートが上の一面から、FinFETでは立てたチャネルを三方から、ゲート・オール・アラウンド(GAA)では周りをすべて囲んで、チャネルを押さえる。囲む面が多いほど、切のときの漏れを抑えやすい。寸法は簡単にした模式図、本サイトで作成微細化とは
前のページで、MOSFETはゲートにかける電圧でソースとドレインの間のチャネルを開け閉めするスイッチであることを学んだ。このMOSFETを、より小さく作ることを「微細化」と呼ぶ。
微細化は、半導体の進歩の中心にあった考え方である。トランジスタを小さくすると、同じ面積のチップにより多くのトランジスタを並べられる。チップに入るトランジスタの数が一定の期間ごとに増えていく、という見通しは「ムーアの法則」と呼ばれ、業界の開発の目標にもなってきた。
小さくすると、何がよくなるのか
微細化のよい点は、主に三つある。
一つ目は、数が増えることである。同じ面積に多くのトランジスタを並べられれば、一つのチップでより多くの計算や記憶ができる。
二つ目は、速くなることである。ゲートが短いほど、ソースからドレインまでの距離が短くなり、スイッチの切り替えが速くなる。
三つ目は、一回の切り替えに使う電力が小さくなることである。トランジスタが小さいと、切り替えのたびに出し入れする電気の量が少なくて済む。
さらに、一枚のウェーハからとれるチップの数が増えれば、チップ一つあたりの製造の費用も下げやすい。このため、長いあいだ、微細化は性能と費用の両方をよくする道として進められてきた。
小さくするほど、電気が漏れやすくなる
ところが、トランジスタを小さくしていくと、困ったことが起きる。スイッチを切にしているのに、電気が漏れるようになるのである。
ゲートが長いときは、ゲートの電圧がチャネルをしっかり押さえ、切のときには電気がほとんど流れない。ゲートを短くすると、ソースとドレインが近づき、ドレインの電圧の影響がチャネルにまで及ぶようになる。すると、ゲートが「閉じろ」と命じても、チャネルを押さえきれず、ソースからドレインへ電気が漏れる。このように、ゲートが短くなることで起きる困りごとを、まとめて「短チャネル効果」と呼ぶ。
漏れる電気は、計算をしていないときにも電力を使い、熱を生む。トランジスタの数が増えるほど、その合計は大きくなる。
ゲートの下の絶縁膜も問題になった。絶縁膜を薄くするとゲートの効きはよくなるが、薄くしすぎると、絶縁膜を通り抜けて電気が漏れるようになる。そこで、同じ効き目を、より厚い膜で得られる別の絶縁材料が使われるようになった。
ゲートでチャネルを囲む
漏れを抑えるには、ゲートがチャネルをもっと強く押さえればよい。そのための工夫が、トランジスタの形そのものを変えることだった。
従来のMOSFETは、平らなシリコンの表面にチャネルがあり、ゲートはその上の一面だけからチャネルを押さえていた。この形を「プレーナ型」と呼ぶ。
次に使われるようになったのが、チャネルを薄い板のように立て、ゲートで三方から包む形である。板がひれ(フィン)のように見えることから「FinFET」と呼ぶ。ゲートが三つの面からチャネルを押さえるので、切のときの漏れを抑えやすい。
さらに進んだ形として、チャネルを細い板やワイヤのようにして横に通し、ゲートで周りをすべて囲む形がある。「ゲート・オール・アラウンド(GAA)」と呼ぶ。ゲートが四方からチャネルを押さえるので、さらに漏れを抑えやすい。
このように、微細化は単に寸法を小さくするだけでなく、トランジスタを立体的な形に作り替えることで続けられてきた。
製造の難しさと、工程とのつながり
微細な形を作るには、製造工程の一つ一つに高い精度が求められる。より細かい回路の形を写すため、露光には短い波長の光が使われるようになった。極端紫外線を使う露光(EUV)は、その代表である。
立体的なトランジスタを作るには、細く高い形を垂直に削るエッチングや、凹凸のある表面に均一な膜を付ける成膜が欠かせない。原子の層を一層ずつ重ねるALDは、こうした場面で使われる。
「プロセスノード」という言葉は、どの世代の微細化の技術で作ったかを表す呼び名である。昔は回路の寸法を表していたが、今は世代の名前としての意味が強く、実際の寸法とは必ずしも一致しない。
微細化だけに頼らない工夫
微細化を進めるほど、必要な装置や工程は複雑になり、開発と製造の費用も大きくなる。そのため、微細化だけに頼らずに性能を上げる工夫も広がっている。
その一つが、機能ごとに分けた小さなチップを一つのパッケージの中でつなぎ、一つの製品として働かせる「チップレット」の考え方である。すべてを一枚の大きなチップに作り込むのではなく、それぞれの機能に合った製造の技術で作ったチップを組み合わせる。この場合、チップ同士を短い距離で多くの配線でつなぐ後工程の技術が、性能を左右する。
このページのまとめ
微細化は、トランジスタを小さく作ることで、数を増やし、速くし、一回の切り替えの電力を小さくする。一方で、小さくするほど、切のときにも電気が漏れる短チャネル効果が問題になった。これを抑えるため、トランジスタはプレーナ型から、ゲートで三方を包むFinFET、周りをすべて囲むGAAへと形を変えてきた。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
トランジスタの微細化で得られる利点として、本文で挙げていないものはどれか。
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答え:4. 切のときに漏れる電気が必ずなくなる
微細化は数を増やし、速くし、一回の切り替えの電力を小さくする。一方で、小さくするほど切のときに電気が漏れやすくなる。漏れがなくなるわけではない。
問2
ゲートが短くなることで、ゲートがチャネルを押さえきれず、切のときにも電気が漏れるなどの困りごとをまとめて何と呼ぶか。
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答え:2. 短チャネル効果
ゲートを短くすると、ドレインの電圧の影響がチャネルに及び、ゲートが押さえきれなくなる。こうした困りごとをまとめて短チャネル効果と呼ぶ。
問3
ゲートでチャネルの周りをすべて囲む形のトランジスタを何と呼ぶか。
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答え:3. ゲート・オール・アラウンド(GAA)
プレーナ型は上の一面、FinFETは三方からチャネルを押さえる。周りをすべて囲む形はゲート・オール・アラウンド(GAA)と呼ぶ。