ウェーハの結晶に生じる乱れ(欠陥)と、意図しない不純物が、半導体の性能に与える影響を説明する。原子が抜ける、線状にずれる、面状にずれるといった欠陥の種類、酸素や金属の不純物、欠陥の発生を抑え、減らす考え方を扱う。
結晶の欠陥と不純物(模式図)
- 点の欠陥と不純物規則正しい並びが乱れる
- 線の欠陥転位
図:左は、原子の規則正しい並びと、原子が抜けた場所(空孔)、余分な原子、別の種類の原子。右は、並びが線に沿ってずれている欠陥(転位)。目盛りのない模式図、本サイトで作成理想の結晶と、現実の結晶
シリコンの単結晶では、原子が規則正しく並んでいる。これが理想の姿である。しかし、現実の結晶には、並びの乱れや、混じってしまった別の原子が、わずかに含まれる。
結晶の乱れを、欠陥と呼ぶ。欠陥や不純物は、トランジスタの性能や信頼性に影響する。このページでは、その種類と、影響、減らす考え方を見ていく。
欠陥の種類
欠陥は、形によって、いくつかに分けられる。
一つは、一つの原子の大きさほどの欠陥である。原子が一つ抜けた場所(空孔)や、並びの間に余分な原子が入り込んだ場所である。
二つめは、線のように連なる欠陥である。結晶の並びが、線に沿ってずれている状態で、転位と呼ばれる。三つめは、面のように広がる欠陥で、並びの積み重なり方が、ある面から変わってしまった状態である。
不純物
結晶には、意図しない原子が混じることもある。たとえば、結晶を作る容器から入る酸素や炭素、工程の途中で付く金属である。
金属の不純物は、特に問題になる。ごく少量でも、電気の性質を変えたり、電気を漏らす原因になったりする。そのため、金属の汚れは、前工程で厳しく管理される。
酸素は、悪い面ばかりではない。結晶の中の酸素は、条件によっては、金属の不純物を捕まえる働きをする。この性質は、前のページで学んだゲッタリングに使われることがある。
欠陥が、どう影響するか
欠陥があると、電気を運ぶ粒(電子や正孔)が、そこで捕まったり、消えたりする。電気が漏れたり、トランジスタの性質がばらついたり、長く使うと性能が落ちたりする。
影響は、欠陥の場所にも左右される。トランジスタが働く表面の近くにあると、特に問題になる。一方で、ウェーハの内部の深い場所にあるものは、影響が小さい場合もある。
欠陥を、減らす
欠陥を減らす第一歩は、結晶を作る段階での工夫である。結晶をゆっくり、安定した条件で成長させると、欠陥が少なくなる。結晶を引き上げる速さや、温度の分布を、細かく制御する。
また、ウェーハの表面に、結晶の膜をさらに育てる方法(エピタキシャル成長)を使うと、表面近くの結晶を、きれいな状態にできる。
工程で、新たに生じる欠陥
結晶を作ったあとの工程でも、欠陥は生じる。たとえば、イオン注入では、勢いよくぶつかる粒が、結晶を乱す。この乱れは、あとで熱処理をして、できるだけ元に戻す。急な温度の変化で、ウェーハに力がかかり、欠陥が増えることもある。
このページのまとめ
結晶には、原子が抜けた場所、線状のずれ、面状のずれなどの欠陥と、意図しない不純物がある。特に金属の不純物は、電気の性質に大きく影響する。欠陥は、結晶を作る段階で減らし、工程の中で新たに生じたものは、熱処理などで回復させる。
- 工程:シリコンウェーハの製造
- 用語:シリコンウェーハ:高純度のシリコン単結晶を薄い円板状に切り出し、表面を鏡のように磨いた基板。半導体チップの回路を作り込む土台となる。
- 用語:単結晶インゴット:原子が規則正しく並んだ単結晶のシリコンを、円柱状に成長させた塊。シリコンウェーハの元になる素材。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
結晶の線のように連なる欠陥を、何と呼ぶか。
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答え:1. 転位
結晶の並びが、線に沿ってずれている欠陥を、転位と呼ぶ。
問2
金属の不純物が、特に問題になる理由はどれか。
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答え:1. ごく少量でも、電気の性質を変えたり、電気を漏らしたりするから
金属は、ごく少量でも電気の性質に影響する。そのため、前工程で厳しく管理される。