2. 半導体材料とウェーハ4 / 11ページ

結晶の乱れ:欠陥と不純物

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 理想の結晶と、現実の結晶
  2. 欠陥の種類
  3. 不純物
  4. 欠陥が、どう影響するか
  5. 欠陥を、減らす
  6. 工程で、新たに生じる欠陥
  7. このページのまとめ
  8. 関係する工程と用語
  9. 次に読む
  10. 理解度チェック

ウェーハの結晶に生じる乱れ(欠陥)と、意図しない不純物が、半導体の性能に与える影響を説明する。原子が抜ける、線状にずれる、面状にずれるといった欠陥の種類、酸素や金属の不純物、欠陥の発生を抑え、減らす考え方を扱う。

結晶の欠陥と不純物(模式図)

  1. 破線:空孔 黒:余分な原子色付き:別の種類の原子点の欠陥と不純物規則正しい並びが乱れる
  2. 下の列が一つ少ない列が途中で途切れる線の欠陥転位
図:左は、原子の規則正しい並びと、原子が抜けた場所(空孔)、余分な原子、別の種類の原子。右は、並びが線に沿ってずれている欠陥(転位)。目盛りのない模式図、本サイトで作成

理想の結晶と、現実の結晶

シリコンの単結晶では、原子が規則正しく並んでいる。これが理想の姿である。しかし、現実の結晶には、並びの乱れや、混じってしまった別の原子が、わずかに含まれる。

結晶の乱れを、欠陥と呼ぶ。欠陥や不純物は、トランジスタの性能や信頼性に影響する。このページでは、その種類と、影響、減らす考え方を見ていく。

欠陥の種類

欠陥は、形によって、いくつかに分けられる。

一つは、一つの原子の大きさほどの欠陥である。原子が一つ抜けた場所(空孔)や、並びの間に余分な原子が入り込んだ場所である。

二つめは、線のように連なる欠陥である。結晶の並びが、線に沿ってずれている状態で、転位と呼ばれる。三つめは、面のように広がる欠陥で、並びの積み重なり方が、ある面から変わってしまった状態である。

不純物

結晶には、意図しない原子が混じることもある。たとえば、結晶を作る容器から入る酸素や炭素、工程の途中で付く金属である。

金属の不純物は、特に問題になる。ごく少量でも、電気の性質を変えたり、電気を漏らす原因になったりする。そのため、金属の汚れは、前工程で厳しく管理される。

酸素は、悪い面ばかりではない。結晶の中の酸素は、条件によっては、金属の不純物を捕まえる働きをする。この性質は、前のページで学んだゲッタリングに使われることがある。

欠陥が、どう影響するか

欠陥があると、電気を運ぶ粒(電子や正孔)が、そこで捕まったり、消えたりする。電気が漏れたり、トランジスタの性質がばらついたり、長く使うと性能が落ちたりする。

影響は、欠陥の場所にも左右される。トランジスタが働く表面の近くにあると、特に問題になる。一方で、ウェーハの内部の深い場所にあるものは、影響が小さい場合もある。

欠陥を、減らす

欠陥を減らす第一歩は、結晶を作る段階での工夫である。結晶をゆっくり、安定した条件で成長させると、欠陥が少なくなる。結晶を引き上げる速さや、温度の分布を、細かく制御する。

また、ウェーハの表面に、結晶の膜をさらに育てる方法(エピタキシャル成長)を使うと、表面近くの結晶を、きれいな状態にできる。

工程で、新たに生じる欠陥

結晶を作ったあとの工程でも、欠陥は生じる。たとえば、イオン注入では、勢いよくぶつかる粒が、結晶を乱す。この乱れは、あとで熱処理をして、できるだけ元に戻す。急な温度の変化で、ウェーハに力がかかり、欠陥が増えることもある。

このページのまとめ

結晶には、原子が抜けた場所、線状のずれ、面状のずれなどの欠陥と、意図しない不純物がある。特に金属の不純物は、電気の性質に大きく影響する。欠陥は、結晶を作る段階で減らし、工程の中で新たに生じたものは、熱処理などで回復させる。

  • 工程:シリコンウェーハの製造
  • 用語:シリコンウェーハ:高純度のシリコン単結晶を薄い円板状に切り出し、表面を鏡のように磨いた基板。半導体チップの回路を作り込む土台となる。
  • 用語:単結晶インゴット:原子が規則正しく並んだ単結晶のシリコンを、円柱状に成長させた塊。シリコンウェーハの元になる素材。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

結晶の線のように連なる欠陥を、何と呼ぶか。

答えと解説を見る

答え:1. 転位

結晶の並びが、線に沿ってずれている欠陥を、転位と呼ぶ。

問2

金属の不純物が、特に問題になる理由はどれか。

答えと解説を見る

答え:1. ごく少量でも、電気の性質を変えたり、電気を漏らしたりするから

金属は、ごく少量でも電気の性質に影響する。そのため、前工程で厳しく管理される。