チップが使う正確なクロックの合図を作る仕組みを説明する。水晶の振動を基準にする方法、基準の周波数を整数倍にする位相同期回路(PLL)の構成と働き、揺らぎ(ジッタ)が通信や処理に与える影響を扱う。
位相同期回路の構成と、ジッタ(模式図)
- PLLの構成基準の整数倍の出力を作る
- ジッタ切り替わる時刻が前後する
図:左は、位相同期回路(PLL)の構成。基準の合図と、出力を割った合図を比べ、ずれに応じて発振器を調整し、基準の整数倍の出力を得る。右は、ジッタ。切り替わる時刻が、理想の位置から前後に揺らぐ。目盛りのない模式図、本サイトで作成クロックは、どこで作られるか
前に学んだように、チップの回路は、共通のクロックという合図で動く。その合図は、どこで作られるのだろうか。チップの外から、基準になる合図をもらい、チップの中で、必要な速さの合図に作り直すことが多い。
このページでは、クロックの基準になるものと、それを必要な速さに作り直す回路(PLL)の仕組みを見ていく。
基準になる、水晶
基準の合図には、水晶の振動がよく使われる。水晶は、電気を加えると、決まった速さで振動する性質を持つ。振動の速さは、とても安定している。その振動から、電気の合図を取り出すと、正確な基準の合図になる。
ただし、水晶の振動の速さは、そのままでは、プロセッサーの速さに比べると、ずっと遅い。そこで、基準の合図を、何倍にも速くする必要がある。
位相同期回路(PLL)
基準の合図を、整数倍の速さに変える回路が、位相同期回路(PLL)である。PLLは、四つの部分でできている。
一つは、速さを自分で変えられる発振器で、これが、実際に出力する合図を作る。二つめは、発振器の出力を、整数で割って遅くする部分である。三つめは、割った合図と、基準の合図を比べて、ずれを見つける部分である。四つめは、そのずれに応じて、発振器の速さを調整する部分である。
動き方はこうである。発振器の出力を割った合図が、基準より遅れていれば、発振器を速くする。進んでいれば、遅くする。これを繰り返すと、割った合図が基準とそろい、発振器の出力は、基準の整数倍になる。割る数を変えると、出力の速さも変えられる。
揺らぎ(ジッタ)
理想のクロックは、一定の間隔で切り替わる。しかし、実際のクロックは、雑音のせいで、切り替わる時刻が、わずかに前後する。この揺らぎを、ジッタと呼ぶ。
ジッタが大きいと、記憶素子が値を取り込む時刻がずれ、誤りが起きやすくなる。高速の通信では、受け取る側が信号を読み取る時刻がずれ、誤りが増える。そのため、ジッタの小さなクロックが求められる。
雑音を抑える
ジッタを小さくするには、電源の揺らぎや、まわりの回路の雑音から、PLLを守る。専用の電源を使う、配線を離す、といった工夫をする。PLLは、アナログの回路なので、アナログ設計の知識が生きる。
このページのまとめ
チップのクロックは、水晶などの基準の合図から、PLLで必要な速さに作る。PLLは、発振器の出力を割って基準と比べ、ずれがなくなるように調整する。クロックの揺らぎ(ジッタ)は、処理や通信の誤りにつながるので、小さく抑える。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
PLLの働きとして、正しいものはどれか。
答えと解説を見る
答え:1. 基準の合図を、整数倍の速さのクロックに変える
PLLは、基準の合図と比べながら発振器を調整して、基準の整数倍のクロックを作る。
問2
クロックのジッタが大きいと、起きやすいことはどれか。
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答え:1. 値を取り込む時刻がずれ、誤りが起きやすくなる
ジッタは切り替わる時刻の揺らぎである。大きいと、取り込みや読み取りの時刻がずれて誤りが増える。