8. 通信・信号処理5 / 7ページ

正確な時刻の合図を作る:クロックの生成と位相同期

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. クロックは、どこで作られるか
  2. 基準になる、水晶
  3. 位相同期回路(PLL)
  4. 揺らぎ(ジッタ)
  5. 雑音を抑える
  6. このページのまとめ
  7. 関係する工程と用語
  8. 次に読む
  9. 理解度チェック

チップが使う正確なクロックの合図を作る仕組みを説明する。水晶の振動を基準にする方法、基準の周波数を整数倍にする位相同期回路(PLL)の構成と働き、揺らぎ(ジッタ)が通信や処理に与える影響を扱う。

位相同期回路の構成と、ジッタ(模式図)

  1. 基準比較調整発振器出力割る出力は基準の整数倍PLLの構成基準の整数倍の出力を作る
  2. 理想揺らぎあり切り替わる時刻が前後するジッタ切り替わる時刻が前後する
図:左は、位相同期回路(PLL)の構成。基準の合図と、出力を割った合図を比べ、ずれに応じて発振器を調整し、基準の整数倍の出力を得る。右は、ジッタ。切り替わる時刻が、理想の位置から前後に揺らぐ。目盛りのない模式図、本サイトで作成

クロックは、どこで作られるか

前に学んだように、チップの回路は、共通のクロックという合図で動く。その合図は、どこで作られるのだろうか。チップの外から、基準になる合図をもらい、チップの中で、必要な速さの合図に作り直すことが多い。

このページでは、クロックの基準になるものと、それを必要な速さに作り直す回路(PLL)の仕組みを見ていく。

基準になる、水晶

基準の合図には、水晶の振動がよく使われる。水晶は、電気を加えると、決まった速さで振動する性質を持つ。振動の速さは、とても安定している。その振動から、電気の合図を取り出すと、正確な基準の合図になる。

ただし、水晶の振動の速さは、そのままでは、プロセッサーの速さに比べると、ずっと遅い。そこで、基準の合図を、何倍にも速くする必要がある。

位相同期回路(PLL)

基準の合図を、整数倍の速さに変える回路が、位相同期回路(PLL)である。PLLは、四つの部分でできている。

一つは、速さを自分で変えられる発振器で、これが、実際に出力する合図を作る。二つめは、発振器の出力を、整数で割って遅くする部分である。三つめは、割った合図と、基準の合図を比べて、ずれを見つける部分である。四つめは、そのずれに応じて、発振器の速さを調整する部分である。

動き方はこうである。発振器の出力を割った合図が、基準より遅れていれば、発振器を速くする。進んでいれば、遅くする。これを繰り返すと、割った合図が基準とそろい、発振器の出力は、基準の整数倍になる。割る数を変えると、出力の速さも変えられる。

揺らぎ(ジッタ)

理想のクロックは、一定の間隔で切り替わる。しかし、実際のクロックは、雑音のせいで、切り替わる時刻が、わずかに前後する。この揺らぎを、ジッタと呼ぶ。

ジッタが大きいと、記憶素子が値を取り込む時刻がずれ、誤りが起きやすくなる。高速の通信では、受け取る側が信号を読み取る時刻がずれ、誤りが増える。そのため、ジッタの小さなクロックが求められる。

雑音を抑える

ジッタを小さくするには、電源の揺らぎや、まわりの回路の雑音から、PLLを守る。専用の電源を使う、配線を離す、といった工夫をする。PLLは、アナログの回路なので、アナログ設計の知識が生きる。

このページのまとめ

チップのクロックは、水晶などの基準の合図から、PLLで必要な速さに作る。PLLは、発振器の出力を割って基準と比べ、ずれがなくなるように調整する。クロックの揺らぎ(ジッタ)は、処理や通信の誤りにつながるので、小さく抑える。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

PLLの働きとして、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 基準の合図を、整数倍の速さのクロックに変える

PLLは、基準の合図と比べながら発振器を調整して、基準の整数倍のクロックを作る。

問2

クロックのジッタが大きいと、起きやすいことはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 値を取り込む時刻がずれ、誤りが起きやすくなる

ジッタは切り替わる時刻の揺らぎである。大きいと、取り込みや読み取りの時刻がずれて誤りが増える。