スマートフォンや無線の機器で、電波を送ったり受けたりするための半導体の役割を説明する。電波の信号を大きくする部品、ほしい周波数だけを通す部品、送る信号と受ける信号を切り替える部品と、高い周波数を扱う難しさ、材料の使い分けを扱う。
電波を扱う部品の流れ(模式図)
- 送ると受けるの流れ上は送る道、下は受ける道
- フィルターの通し方ほしい周波数だけを通し、ほかは通しにくい
図:左は、アンテナとデジタルの回路の間の部品の流れ。スイッチで送ると受けるを切り替え、送るときは増幅器で信号を大きくし、受けるときはフィルターでほしい周波数だけを通してから、雑音を加えない増幅器で大きくする。周波数を変える回路が、デジタルの回路とつなぐ。右は、フィルターの通し方。決まった周波数の範囲だけを通し、それ以外は通しにくい。目盛りのない模式図、本サイトで作成電波も、電気の信号
スマートフォンで話したり、データをやり取りしたりするとき、情報は電波に乗って空間を伝わる。電波は、電気と磁気の揺れが、空間を波として進むものである。
電波の揺れの速さ、つまり一定の時間に何回揺れるかを「周波数」と呼ぶ。通信では、決められた周波数の電波に、情報を乗せて送る。周波数が高い電波ほど、多くの情報を速く運べるが、遠くまで届きにくく、壁などにさえぎられやすい。
アンテナは、電気の信号を電波に変えて空間に送り出し、届いた電波を電気の信号に戻す。その前後で、電波のための電気の信号を扱うのが、通信用の半導体である。電波のような高い周波数の信号を扱う回路を、まとめて「高周波の回路」と呼ぶ。
送るとき:信号を大きくする
電波を遠くまで届けるには、送り出す信号を大きくする必要がある。この役割を受け持つのが、送るための増幅器である。
前のページで学んだアナログの増幅器と同じく、トランジスタを使って信号を大きくする。ただし、扱う信号の周波数が非常に高く、送り出す電力も大きい。そのため、速く動けて、大きな電力を扱えるトランジスタが必要になる。
送るための増幅器は、通信の機器の中で、電力を多く使う部品の一つである。電池を長持ちさせるには、少ない電力で効率よく信号を大きくすることが求められる。
受けるとき:かすかな信号を拾う
アンテナに届く電波は、とてもかすかである。そこで、受けた信号を、雑音をできるだけ加えずに大きくする増幅器を使う。
受けるための増幅器では、信号を大きくする度合いよりも、余分な雑音を加えないことが特に大切である。最初の段で雑音が加わると、その後でいくら大きくしても、信号と雑音を分けられなくなるからである。
ほしい周波数だけを通す
空間には、ほかの機器の電波や、ほかの通信の電波など、多くの周波数の電波が飛び交っている。その中から、使いたい周波数の信号だけを取り出し、それ以外を通さないようにする部品を「フィルター」と呼ぶ。
通信用のフィルターには、小さな結晶の板や薄い膜が、決まった周波数でだけ大きく揺れる性質を使うものがある。決まった周波数の信号だけが揺れを通して伝わり、それ以外の周波数は通りにくい。一つの機器で多くの周波数を使うほど、必要なフィルターの数も増える。
送ると受けるを切り替える
一つのアンテナで、送ることと受けることの両方を行うことが多い。そこで、アンテナにつながる道を、送る回路と受ける回路の間で切り替えるスイッチが使われる。複数の周波数や、複数のアンテナを使い分けるためにも、スイッチが使われる。
送る信号は大きく、受ける信号はかすかなので、送る信号が受ける回路に漏れ込まないように、確実に切り替える必要がある。
周波数を変える、信号を作り出す
アンテナで扱う高い周波数の信号と、情報を処理するデジタルの回路の間では、信号の周波数を変える必要がある。送るときは、情報を乗せた信号を、電波の周波数まで高める。受けるときは、届いた高い周波数の信号を、扱いやすい低い周波数に下げる。
そのための基準になる、決まった周波数の揺れを作り出す回路も使われる。こうした回路を一つのチップにまとめた部品が、通信の機器の中心になっている。
高い周波数を扱う難しさ
高い周波数の信号は、扱いが難しい。配線のわずかな長さや形、部品のわずかな電気のためやすさが、信号の伝わり方を大きく変えてしまう。配線そのものが、小さなアンテナのように働いて、信号を周りに漏らすこともある。
そのため、高周波の回路では、配線やパッケージまで含めて、電気の伝わり方を細かく計算して設計する。部品どうしを近くに並べ、まとめて一つのモジュールにすることも多い。
通信の方式が変わるたびに
通信の方式は、より多くの情報を、より速く送れるように、時代とともに新しくなってきた。新しい方式では、使う周波数の種類が増えたり、より高い周波数が使われたりする。
そのたびに、通信用の半導体にも、新しい周波数に対応した増幅器やフィルター、切り替えのスイッチが求められる。一つの機器で、古い方式と新しい方式の両方を扱うことも多いので、部品の数は増え、それを小さくまとめる技術も大切になる。
材料の使い分け
通信用の半導体では、目的に応じて材料が使い分けられる。
デジタルの回路と同じシリコンのCMOSは、たくさんの回路を一つのチップにまとめるのに向き、周波数を変える回路や、受ける側の回路などに使われる。ウェーハの種類を学ぶページで扱ったSOIウェーハは、スイッチなどに使われる。
送るための増幅器のように、高い周波数で大きな電力を扱う部品では、電子が速く動ける化合物の半導体が使われることがある。基地局のような大きな電力を扱う設備では、パワー半導体のページで学んだ窒化ガリウムも使われる。
このページのまとめ
通信用の半導体は、電波のための高い周波数の信号を扱う。送るための増幅器は信号を大きくし、受けるための増幅器はかすかな信号を雑音を加えずに大きくする。フィルターはほしい周波数だけを通し、スイッチは送ると受けるを切り替える。周波数を変える回路が、デジタルの回路とアンテナの間をつなぐ。高い周波数では配線の形まで影響するので、全体を計算して設計し、目的に応じてシリコンや化合物の半導体を使い分ける。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
受けるための増幅器で、特に大切なこととして、正しいものはどれか。
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答え:2. 余分な雑音をできるだけ加えずに、かすかな信号を大きくすること
最初の段で雑音が加わると、その後で大きくしても信号と雑音を分けられなくなる。受けるための増幅器では、雑音を加えないことが特に大切である。
問2
通信用の「フィルター」の役割として、正しいものはどれか。
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答え:1. 多くの周波数の電波の中から、使いたい周波数の信号だけを通す
空間には多くの周波数の電波が飛び交っている。フィルターは、使いたい周波数の信号だけを通し、それ以外を通りにくくする。
問3
高い周波数の回路の設計で、配線やパッケージまで含めて電気の伝わり方を細かく計算する理由として、正しいものはどれか。
答えと解説を見る
答え:1. 配線のわずかな長さや形が、信号の伝わり方を大きく変えてしまうから
高い周波数では、配線のわずかな長さや形、部品の電気のためやすさが、信号の伝わり方を大きく変える。配線が小さなアンテナのように働いて信号を漏らすこともある。