工場を建てて動かすまで

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このページの目次
  1. 工場は、すぐには動かない
  2. どこに建てるか
  3. 建物の特徴
  4. 装置を入れて、立ち上げる
  5. 良品の割合を上げていく
  6. 工場を建てる費用
  7. 人を育てる
  8. 動き出した後も、工場は変わり続ける
  9. このページのまとめ
  10. 関係する工程と用語
  11. 次に読む
  12. 理解度チェック

半導体の工場を、どこに建て、どのように建設し、装置を入れて、安定して作れるようになるまでの流れを説明する。土地選びで重視される水、電力、揺れ、人と物の流れの条件と、建物の特徴、装置の立ち上げ、良品の割合を上げていく段階を扱う。

工場の建物と、動き出すまで(模式図)

  1. 空気を送る機械・フィルタークリーンルーム(装置を置く)床下(空気を戻す)配管・配線の階建物の断面床は重い装置を載せられ、揺れが伝わりにくい
  2. 場所を選ぶ建物を建てる装置を入れて立ち上げる歩留まりを上げる量産へ動き出すまでの流れ装置が動いても、すぐには量産しない
図:左は、工場の建物の断面。クリーンルームの階を、上の空気を送る設備の階と、下の床下や配管・配線の階ではさむ。右は、場所を選んでから量産までの流れ。装置を立ち上げた後も、歩留まりを上げてから作る量を増やす。模式図、本サイトで作成

工場は、すぐには動かない

前の分野のページで、需要が増えてもすぐには供給を増やせない理由として、工場をつくるのに時間がかかることを学んだ。このページでは、半導体の工場が、どのように建てられ、動き出すのかを見ていく。

半導体の工場は、クリーンルーム、超純水やガスの設備、多くの製造装置を備えた、大きく複雑な施設である。土地を選んでから、安定して製品を作れるようになるまでには、いくつもの段階がある。

どこに建てるか

工場を建てる場所を選ぶときには、多くの条件を考える。

* 水:超純水を作るために、たくさんの水を、安定して得られることが大切である。* 電力:一日中休まず動く設備のために、大量の電力を、止まらずに受け取れることが求められる。電気が一瞬止まったり、電圧が乱れたりするだけで、処理中のウェーハがだめになることがある。* 揺れ:細かい形を写す装置は、わずかな揺れも嫌う。地盤がしっかりしていること、近くに大きな揺れを起こすものがないこと、地震への備えができることが考えられる。* 人:工場を動かし、装置を保守する技術者や作業する人を、集められることが大切である。* 物の流れ:材料やガス、薬液を届け、できた製品を運び出すための道路や港、空港へのつながりが考えられる。

さらに、国や地域の支援の制度、取引先の工場との距離、周りの環境への影響なども、場所を選ぶ判断に関わる。

建物の特徴

半導体の工場の建物は、ふつうの工場とは違う特徴を持つ。

中心には、クリーンルームのある大きな階がある。その上には、空気を送る機械やフィルターのための空間があり、下には、空気を戻す床下の空間や、装置につながる配管や配線のための階がある。クリーンルームの階を、上下の設備の階ではさむような作りである。

建物の床は、重い装置を載せられ、揺れが伝わりにくいように、とても頑丈に作られる。柱の間隔を広くして、装置を並べ替えやすくすることもある。

建物の周りには、超純水を作る設備、ガスや薬液を保管して届ける設備、使った水やガスを処理する設備、電気を受ける設備などが並ぶ。

装置を入れて、立ち上げる

建物とクリーンルームができると、製造装置を運び込む。装置の多くは大きく重く、精密なので、揺らさないように慎重に運び、決まった位置に据え付ける。

据え付けた装置は、配管と配線をつなぎ、一台ずつ動かして調子を確かめる。装置を作った会社の技術者と、工場の技術者が協力して、設計どおりの性能が出るように調整する。この作業を「立ち上げ」と呼ぶ。

すべての装置が動くようになっても、それで完成ではない。工程をつないで、ウェーハを最初から最後まで流してみて、チップが正しくできるかを確かめる必要がある。

良品の割合を上げていく

工場が動き出したばかりのころは、作ったチップのうち良品の割合(歩留まり)が低いことが多い。工程の条件が十分に合っていなかったり、装置どうしのわずかな違いがあったりするためである。

そこで、少ない量でウェーハを流しながら、検査と故障解析で不良の原因を探し、工程の条件を一つずつ直していく。分野「検査・評価・信頼性」で学んだ検査や故障解析が、ここで大きな役割を果たす。

歩留まりが十分に上がり、品質が安定したら、顧客に製品を出荷できるようになる。そこから、作る量を少しずつ増やしていく。作る量を増やしていく段階を「量産への立ち上げ」と呼ぶことがある。

工場を建てる費用

半導体の工場を建てるには、非常に大きな費用がかかる。そのうち大きな部分を占めるのが、製造装置の費用である。微細化が進むほど、必要な装置は高価になり、工程の数も増えるので、工場全体の費用も大きくなる。

そのため、工場を建てるかどうか、どれだけの規模で建てるかは、会社にとって大きな判断になる。需要の見通し、顧客との約束、国や地域の支援などを考えて決められる。複数の会社が共同で工場を建てたり、顧客の会社が費用の一部を負担したりする形もある。

人を育てる

工場を動かすには、装置を保守する人、工程の条件を管理する人、不良の原因を探す人など、多くの専門の技術を持つ人が必要である。新しい工場では、こうした人を集め、育てることも大きな仕事になる。

すでに動いている工場で経験を積んだ人が、新しい工場の立ち上げを支えることも多い。工場の近くの学校と協力して、技術を学ぶ機会を作る取り組みもある。

動き出した後も、工場は変わり続ける

工場は、一度動き出したら終わりではない。新しい製品や、より細かい製造の技術に合わせて、装置を入れ替えたり、追加したりする。そのため、工場の建物は、あらかじめ将来の拡張を見越して作られることもある。

また、装置の保守、工程の改善、電力や水の使い方の見直しなど、工場を動かし続けるための仕事は、長い年月にわたって続く。

このページのまとめ

半導体の工場を建てる場所は、水、電力、揺れ、人、物の流れなどの条件で選ばれる。建物は、クリーンルームの階を上下の設備の階ではさむ作りで、頑丈な床を持つ。装置を運び込んで据え付け、一台ずつ調整して立ち上げる。動き出したばかりのころは歩留まりが低いので、検査と故障解析で原因を取り除きながら上げていき、品質が安定してから量産に移る。動き出した後も、工場は変わり続ける。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

半導体の工場を建てる場所を選ぶとき、電力について求められることとして、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 大量の電力を、止まらずに受け取れること

工場の設備は一日中休まず動き、電気が一瞬止まったり電圧が乱れたりするだけで、処理中のウェーハがだめになることがある。

問2

半導体の工場の建物の作りとして、本文で説明したものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. クリーンルームの階を、空気を送る設備の階と、床下や配管の階で上下からはさむ作り

クリーンルームの上には空気を送る機械やフィルターの空間、下には空気を戻す床下や配管・配線の階があり、クリーンルームの階をはさむ作りになっている。

問3

工場が動き出したばかりのころに行うこととして、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 少ない量でウェーハを流しながら、検査と故障解析で不良の原因を探し、工程の条件を直して歩留まりを上げていく

動き出したばかりのころは歩留まりが低いことが多い。少ない量で流しながら原因を取り除き、品質が安定してから作る量を増やしていく。