半導体の工場で大量に使う超純水が、なぜ必要で、どのように作られるのかを説明する。工場の中に配る大量のガスと、成膜やエッチングに使う特殊なガス、薬液を安全に届け、使った後に処理する仕組みも扱う。
超純水とガスの流れ(模式図)
- 超純水をつくる処理を何段階も重ね、できた水は止めずに回し続ける
- 特殊なガスを安全に扱う漏らさず、使った後も無害にしてから出す
図:左は、超純水を作る処理の順番。ろ過、逆浸透、イオン交換、紫外線、細かいフィルターの順に重ね、できた水は配管を回り続けるように流す。右は、特殊なガスを安全に扱う流れ。専用の箱から配管で装置へ届け、使った後は除害装置で無害にしてから外へ出す。模式図、本サイトで作成工場は、水とガスを大量に使う
前のページでは、空気中のごみを入れないクリーンルームを学んだ。半導体の工場では、空気と同じように、水やガス、薬液の汚れも、不良の原因になる。
製造の工程では、ウェーハを洗い、すすぐために、非常に多くの水を使う。また、膜を付ける、削る、ドーパントを入れるといった工程では、膜の材料になるガスや、表面を削るガスなど、目的に合ったガスを使う。これらを、極めてきれいな状態で、決まった量を、決まった時に、装置へ届ける必要がある。このページでは、そのための仕組みを見ていく。
超純水:極めてきれいな水
水道水には、目に見えない多くのものが溶けている。塩やミネラルのもとになるイオン、細かい粒子、微生物、有機物、溶けた空気などである。
ウェーハを水ですすぐと、水の中にあったものが、表面に残ることがある。溶けていたイオンが残ると、トランジスタの性質を変える。粒子が残ると、回路の形を乱す。そのため、半導体の工場では、こうしたものを極限まで取り除いた水を使う。これを「超純水」と呼ぶ。
超純水は、洗浄の後のすすぎ、CMPで磨いた後の洗い流し、薬液を薄めるときなど、多くの工程で使われる。
超純水のつくり方
超純水は、川や地下の水、水道水などをもとに、何段階もの処理を重ねて作る。
まず、大きなごみや濁りを、ろ過で取り除く。次に、非常に細かい穴の開いた膜に、圧力をかけて水を通す。水の分子は通るが、溶けているイオンや有機物の多くは通れないので、これらを取り除ける。この方法を「逆浸透」と呼ぶ。
さらに、イオンを吸い取る樹脂(イオン交換樹脂)に水を通し、残ったイオンを取り除く。紫外線を当てて、有機物を分解したり、微生物を増えにくくしたりもする。水に溶けた酸素などの気体も取り除く。最後に、細かい粒子を取るフィルターを通してから、装置へ送る。
できた超純水は、配管を回り続けるように流す。水を止めて置いておくと、配管から物が溶け出したり、微生物が増えたりして、きれいさが落ちるからである。
きれいさを、電気で確かめる
超純水がどれだけきれいかを確かめる目安の一つが、電気の通りにくさである。
水が電気を通すのは、主に水に溶けたイオンが電気を運ぶからである。イオンを取り除くほど、水は電気を通しにくくなる。そこで、水の電気の通りにくさを常に測り、イオンが十分に取り除かれているかを見張る。そのほかに、粒子の数、有機物の量、溶けた酸素の量なども測る。
使った水を、もう一度使う
超純水を作るには、多くの手間と電力がかかる。また、工場の周りの水の資源を守ることも大切である。
そこで、使った後の水のうち、汚れの少ないものを集め、処理して、もう一度超純水の原料として使う。汚れの多い水は、薬品などを取り除く処理をしてから、決まりに従って外へ流す。水を何度も使う割合を高めることは、工場の大きな課題になっている。
工場の中に配る、大量のガス
半導体の工場では、窒素などのガスを大量に使う。たとえば窒素は、装置の中やウェーハを運ぶ容器の中を満たして、空気中の酸素や水分からウェーハを守るのに使われる。
こうした大量に使うガスは、工場の敷地の中や近くで、空気から分けて作ることもある。作ったガスは、さらに不純物を取り除いてから、配管を通して工場の中の装置に配る。配管の内側も、ガスを汚さないように、なめらかで汚れの出にくい材料で作られる。
工程に使う特殊なガスと、安全
成膜、エッチング、ドーパントを入れる工程などでは、それぞれの目的に合った特殊なガスを使う。これらの中には、燃えやすいもの、毒性の強いもの、ほかの物と激しく反応するものがある。
そのため、こうしたガスは、容器ごと専用の箱(ガスキャビネット)に収め、箱の中の空気を常に吸い出しながら使う。配管にガスが漏れていないかを見張る検知器を置き、漏れを見つけたときには、自動でガスを止める仕組みを備える。
装置で使った後のガスにも、有害なものが残っている。そこで、装置の出口に、残ったガスを燃やしたり、薬品と反応させたり、吸着させたりして無害にする装置(除害装置)をつなぎ、処理してから外へ出す。
薬液も、きれいに届ける
洗浄やエッチングには、酸やアルカリ、溶剤などの薬液も使う。薬液にも、極めて高い純度が求められる。不純物の少ない薬液を作り、汚れを出しにくい容器と配管で、装置まで届ける。使った薬液は、種類ごとに分けて集め、処理したり、再び使えるようにしたりする。
このページのまとめ
半導体の工場では、水やガス、薬液の汚れも不良の原因になる。超純水は、ろ過、逆浸透、イオン交換、紫外線などの処理を重ねて作り、電気の通りにくさなどできれいさを見張る。使った水はもう一度使う。窒素などの大量のガスは配管で装置に配り、燃えやすいものや毒性のある特殊なガスは、専用の箱、漏れの検知、使った後の除害装置で安全に扱う。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
超純水のきれいさを確かめる目安として、電気の通りにくさを測る理由として、正しいものはどれか。
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答え:1. 水が電気を通すのは、主に溶けたイオンが電気を運ぶからで、イオンが少ないほど電気を通しにくくなるから
水の中で電気を運ぶのは、主に溶けたイオンである。イオンを取り除くほど電気を通しにくくなるので、電気の通りにくさを測ると、イオンがどれだけ残っているかが分かる。
問2
超純水を配管の中で回り続けるように流す理由として、正しいものはどれか。
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答え:2. 止めて置いておくと、配管から物が溶け出したり微生物が増えたりして、きれいさが落ちるから
水を止めておくと、配管からの溶け出しや微生物の増加で、きれいさが落ちる。そのため、超純水は配管を回り続けるように流す。
問3
装置で使った後の特殊なガスを、そのまま外へ出さない理由として、正しいものはどれか。
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答え:2. 使った後のガスにも有害なものが残っているため、除害装置で無害にしてから出す必要があるから
使った後のガスにも、燃えやすいものや毒性のあるものが残っている。除害装置で燃やしたり、反応させたり、吸着させたりして無害にしてから外へ出す。