半導体の工場で、装置を置く環境を細かく管理する理由を説明する。振動を抑える床、温度と湿度の管理、静電気の対策、電気的な雑音、光の管理を扱い、環境の小さな変化が回路の形のずれにつながる仕組みを示す。
装置を揺れから切り離す方法と、管理する環境の要素(模式図)
- 揺れを抑える装置は、床から切り離した基礎に置く
- 管理する四つの要素どれも、形のずれや不良につながる
図:左は、揺れを抑える方法。装置を、建物の床から切り離した基礎の上に置く。右は、工場が管理する四つの環境の要素。揺れ、温度と湿度、静電気、光である。目盛りのない模式図、本サイトで作成小さな変化が、形のずれになる
チップの回路は、非常に細かい。線の幅は、髪の毛の太さよりはるかに細い。そのため、ごくわずかな揺れや、ほんの少しの温度の変化でも、回路の形や位置にずれが生じる。
前のページでは、ごみを入れないクリーンルームを学んだ。ごみのほかにも、工場が管理しなければならない環境の要素がある。このページでは、揺れ、温度と湿度、静電気、電気的な雑音、光を、順に見ていく。
揺れを抑える
回路の形を写す露光装置は、ウェーハと原版の位置を、極めて精密に合わせて動かす。床がわずかに揺れるだけで、位置がずれて、形がぼやける。
揺れは、さまざまな所から来る。人の歩行、搬送の台車、装置自身のモーター、建物のまわりを通る車や電車、地面の揺れなどである。そこで、揺れの影響を受けやすい装置は、床と切り離した頑丈な基礎の上に置く。装置の足にも、揺れを吸収する部品を使う。工場を建てる場所を選ぶときに、まわりの揺れの大きさを調べることもある。
温度と湿度を一定にする
ものは、温度が変わると、わずかに伸び縮みする。ウェーハも、装置の部品も同じである。温度が変わると、大きさがわずかに変わり、回路の位置がずれる。そのため、装置の中や、部屋の温度は、小さな範囲に保たれる。
湿度も管理される。湿度が低すぎると、静電気が起きやすい。高すぎると、薬品や材料の性質が変わったり、表面に水が付いたりする。工程によって、適した湿度が違うので、場所ごとに管理する。
静電気を逃がす
空気が乾いていると、物がこすれたときに、静電気が起きやすい。静電気がたまると、二つの問題が起きる。一つは、まわりの細かい粒子を引き寄せ、ウェーハに付けてしまうことである。もう一つは、たまった電気が一気に流れ、回路を壊すことである。
そこで、床や作業台に電気を逃がす材料を使い、人は専用の服や靴を着ける。空気中のイオンで電気を打ち消す装置も使う。
電気的な雑音を避ける
電子線を使う観察や検査の装置は、電気や磁気の雑音の影響を受けやすい。近くの大きな機器から出る磁気が、像をゆがめることがある。こうした装置は、雑音の少ない場所に置くか、遮る工夫をする。
光も管理する
回路の形を写すときに使う感光する材料は、特定の光に反応する。そのため、その材料を扱う場所の照明は、材料が反応しない種類の光にする。感光する工程の部屋が、特別な色の照明になっているのは、このためである。
このページのまとめ
細かい回路を作るために、工場は、揺れ、温度と湿度、静電気、電気的な雑音、光を管理する。どれも、ごみと同じように、小さな変化が形のずれや不良につながるからである。装置の性能だけでなく、置く環境の精密さも、チップの品質を支えている。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
装置を置く環境で、温度を一定に保つ理由として、正しいものはどれか。
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答え:1. 温度が変わるとウェーハや部品が伸び縮みし、回路の位置がずれるから
ものは、温度でわずかに伸び縮みする。細かい回路では、これが位置のずれになる。
問2
静電気の対策が必要な理由として、適切なものはどれか。
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答え:1. 粒子を引き寄せて付けたり、たまった電気で回路を壊したりするから
静電気は、粒子の付着と、放電による回路の破壊の両方を引き起こす。