9. 工場と業界2 / 17ページ

揺れと温度を抑える:装置を置く環境

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 小さな変化が、形のずれになる
  2. 揺れを抑える
  3. 温度と湿度を一定にする
  4. 静電気を逃がす
  5. 電気的な雑音を避ける
  6. 光も管理する
  7. このページのまとめ
  8. 関係する工程と用語
  9. 次に読む
  10. 理解度チェック

半導体の工場で、装置を置く環境を細かく管理する理由を説明する。振動を抑える床、温度と湿度の管理、静電気の対策、電気的な雑音、光の管理を扱い、環境の小さな変化が回路の形のずれにつながる仕組みを示す。

装置を揺れから切り離す方法と、管理する環境の要素(模式図)

  1. 建物の床建物の床基礎装置揺れが届かない外からの揺れ揺れを抑える装置は、床から切り離した基礎に置く
  2. 揺れ温度と湿度静電気光管理する四つの要素どれも、形のずれや不良につながる
図:左は、揺れを抑える方法。装置を、建物の床から切り離した基礎の上に置く。右は、工場が管理する四つの環境の要素。揺れ、温度と湿度、静電気、光である。目盛りのない模式図、本サイトで作成

小さな変化が、形のずれになる

チップの回路は、非常に細かい。線の幅は、髪の毛の太さよりはるかに細い。そのため、ごくわずかな揺れや、ほんの少しの温度の変化でも、回路の形や位置にずれが生じる。

前のページでは、ごみを入れないクリーンルームを学んだ。ごみのほかにも、工場が管理しなければならない環境の要素がある。このページでは、揺れ、温度と湿度、静電気、電気的な雑音、光を、順に見ていく。

揺れを抑える

回路の形を写す露光装置は、ウェーハと原版の位置を、極めて精密に合わせて動かす。床がわずかに揺れるだけで、位置がずれて、形がぼやける。

揺れは、さまざまな所から来る。人の歩行、搬送の台車、装置自身のモーター、建物のまわりを通る車や電車、地面の揺れなどである。そこで、揺れの影響を受けやすい装置は、床と切り離した頑丈な基礎の上に置く。装置の足にも、揺れを吸収する部品を使う。工場を建てる場所を選ぶときに、まわりの揺れの大きさを調べることもある。

温度と湿度を一定にする

ものは、温度が変わると、わずかに伸び縮みする。ウェーハも、装置の部品も同じである。温度が変わると、大きさがわずかに変わり、回路の位置がずれる。そのため、装置の中や、部屋の温度は、小さな範囲に保たれる。

湿度も管理される。湿度が低すぎると、静電気が起きやすい。高すぎると、薬品や材料の性質が変わったり、表面に水が付いたりする。工程によって、適した湿度が違うので、場所ごとに管理する。

静電気を逃がす

空気が乾いていると、物がこすれたときに、静電気が起きやすい。静電気がたまると、二つの問題が起きる。一つは、まわりの細かい粒子を引き寄せ、ウェーハに付けてしまうことである。もう一つは、たまった電気が一気に流れ、回路を壊すことである。

そこで、床や作業台に電気を逃がす材料を使い、人は専用の服や靴を着ける。空気中のイオンで電気を打ち消す装置も使う。

電気的な雑音を避ける

電子線を使う観察や検査の装置は、電気や磁気の雑音の影響を受けやすい。近くの大きな機器から出る磁気が、像をゆがめることがある。こうした装置は、雑音の少ない場所に置くか、遮る工夫をする。

光も管理する

回路の形を写すときに使う感光する材料は、特定の光に反応する。そのため、その材料を扱う場所の照明は、材料が反応しない種類の光にする。感光する工程の部屋が、特別な色の照明になっているのは、このためである。

このページのまとめ

細かい回路を作るために、工場は、揺れ、温度と湿度、静電気、電気的な雑音、光を管理する。どれも、ごみと同じように、小さな変化が形のずれや不良につながるからである。装置の性能だけでなく、置く環境の精密さも、チップの品質を支えている。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

装置を置く環境で、温度を一定に保つ理由として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 温度が変わるとウェーハや部品が伸び縮みし、回路の位置がずれるから

ものは、温度でわずかに伸び縮みする。細かい回路では、これが位置のずれになる。

問2

静電気の対策が必要な理由として、適切なものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 粒子を引き寄せて付けたり、たまった電気で回路を壊したりするから

静電気は、粒子の付着と、放電による回路の破壊の両方を引き起こす。