需要の波を読む:市況の考え方

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このページの目次
  1. 半導体の需要には、波がある
  2. 工場をつくるには、時間がかかる
  3. 在庫が、波を大きくする
  4. 用途によって、需要の動き方が違う
  5. 装置と材料にも、波は伝わる
  6. 価格が動きやすい製品と、動きにくい製品
  7. 波を読む手がかり
  8. 波の中での会社の動き
  9. このページのまとめ
  10. 次に読む
  11. 理解度チェック

半導体の需要が増えたり減ったりする波が、なぜ生まれるのかを一般的な仕組みとして説明する。工場をつくるまでの時間差、在庫の積み増しと調整、用途ごとの需要の違い、価格の動きやすい製品と動きにくい製品、波を読むときの手がかりを扱う。

需要の波が生まれる仕組み(模式図)

  1. 足りない余る時間量供給が遅れて動く細い線が需要、太い線が供給
  2. 機器を使う人の需要機器のメーカーの注文チップの会社への注文上流ほど揺れが大きい在庫の積み増しと調整が、揺れを大きくする
図:左は、需要(線)と供給(太い線)の時間差。供給は需要に遅れて動くので、足りない時期と余る時期が交互に生まれる。右は、在庫の積み増しと調整で、サプライチェーンの上流ほど注文の揺れが大きくなる様子。どちらも目盛りのない模式図で、実際の数値ではない。本サイトで作成

半導体の需要には、波がある

半導体の業界では、需要が大きく伸びる時期と、落ち込む時期がくり返し現れる。こうした波を、業界では「市況の波」や「サイクル」と呼ぶことがある。

前のページでは、装置、材料、チップの会社で、波の受け方が違うことを学んだ。このページでは、その波がそもそもなぜ生まれるのかを、一般的な仕組みとして整理する。特定の時期の市況や、今後の見通しを示すものではない。波が生まれる仕組みを知っておくと、ニュースや会社の発表を読むときの手がかりになる。

工場をつくるには、時間がかかる

波が生まれる大きな理由の一つは、需要と供給の間の時間差である。

チップの需要が増えると、チップを作る会社は、生産を増やそうとする。しかし、新しい工場を建て、装置を入れ、安定して作れるようになるまでには、長い時間がかかる。その間、供給は需要に追いつかず、チップが足りなくなる。

やがて新しい工場が動き出すと、供給が一度に増える。そのころに需要の伸びが落ち着いていると、今度はチップが余るようになる。需要の動きに対して、供給が遅れて大きく動くことで、足りない時期と余る時期が交互に生まれやすい。

在庫が、波を大きくする

在庫の動きも、波を大きくする。

チップが足りなくなると、チップを買う側の会社は、手に入らなくなることを心配して、必要な量より多めに注文し、在庫を積み増そうとする。すると、実際の需要よりも多くの注文が集まり、需要が大きく見える。

その後、供給が追いつき、手元の在庫が十分になると、買う側は、新しい注文を控えて、たまった在庫を使い切ろうとする。この在庫の調整の間は、実際の需要があっても、チップの会社への注文は大きく減る。

このように、サプライチェーンの途中の各段階で在庫が積み増され、調整されることで、最終の製品の需要の動き以上に、半導体の注文は大きく揺れやすい。

用途によって、需要の動き方が違う

半導体の需要は、一つではない。どの用途に使われるかによって、需要が伸びる時期や理由が違う。

* パソコンやスマートフォン:使っている機器を新しくする時期や、新しい機種の発売、家計の状況などに左右される。* データセンター:計算の需要の伸びや、大きな会社の設備への投資の計画に左右される。* 自動車:自動車の生産の動きと、一台に使われる半導体の量の増え方に左右される。* 産業の機器:工場の設備への投資の動きなどに左右される。

用途ごとの動きが重なったり、打ち消し合ったりして、業界全体の波ができる。業界全体が落ち込んでいるときでも、特定の用途の需要だけは伸びている、ということもある。

装置と材料にも、波は伝わる

チップの需要の波は、チップを作る会社だけでなく、装置や材料の会社にも伝わる。前のページで学んだとおり、装置の会社は、チップを作る会社の設備への投資の計画の影響を、材料の会社は、工場の稼働の影響を受けやすい。

価格が動きやすい製品と、動きにくい製品

半導体の製品には、価格が需要と供給の釣り合いで大きく動きやすいものと、比較的動きにくいものがある。

メモリのように、決まった規格に合わせて作られ、どの会社の製品でも同じように使えるものは、需要と供給の釣り合いで、価格が大きく上下しやすい。足りないときは価格が上がり、余るときは価格が下がる。

一方、特定の顧客や用途に合わせて設計された製品や、ほかの製品に置き換えにくい製品は、比較的価格が安定しやすい。同じ半導体の会社でも、どんな製品を扱っているかによって、波の影響の受け方は違う。

波を読む手がかり

波の位置を知る手がかりとして、業界では、いくつかの種類の情報が見られている。

* 業界団体などがまとめる、半導体の出荷の金額や数量の統計。* 会社が決算などで示す、受注、在庫、設備への投資の計画。* チップを買う側の業界(パソコン、スマートフォン、自動車など)の生産や販売の動き。* 製品の価格の動き。

ただし、どの情報も、それだけで波の先を言い当てられるものではない。統計は過去の動きを示すものであり、会社の計画は変わることがある。いくつかの情報を合わせて、慎重に読む必要がある。

波の中での会社の動き

波があることを前提にした、会社の備え方には、いくつかの共通した考え方がある。

需要が落ち込む時期にも、次の需要の伸びに備えて、研究開発や設備への投資を続けるかどうかは、会社にとって大きな判断になる。また、特定の用途や顧客に偏らないように、扱う製品や顧客を広げることで、波の影響をやわらげようとすることもある。

このサイトでは、会社の業績や発表を、こうした波の中の一つの点として読めるように、事実と出典を示していく。

このページのまとめ

半導体の需要には、伸びる時期と落ち込む時期の波がある。工場をつくるまでの時間差で、供給が遅れて大きく動くこと、在庫の積み増しと調整で、注文が実際の需要以上に揺れることが、波を生む。用途ごとに需要の動き方は違い、メモリのように価格が動きやすい製品もある。統計、会社の受注や在庫、買う側の業界の動き、価格を合わせて読むと、波の位置を考える手がかりになる。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

需要と供給の間の時間差が、波を生む理由として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 新しい工場が動き出すまでに長い時間がかかり、供給が需要に遅れて大きく動くから

需要が増えても、工場を建てて安定して作れるまでに時間がかかる。その間は足りず、工場が動き出すころに需要が落ち着いていると、今度は余る。

問2

在庫の動きが、半導体の注文の波を大きくする理由として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 足りないときは多めに注文して在庫を積み増し、在庫が十分になると注文を控えて調整するので、注文が実際の需要以上に揺れるから

足りないときは心配から多めに注文が集まり、在庫が十分になると注文が大きく減る。この積み増しと調整が、注文の揺れを大きくする。

問3

需要と供給の釣り合いで、価格が大きく上下しやすい製品の例として、本文で挙げているものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 決まった規格に合わせて作られ、どの会社の製品でも同じように使えるメモリ

メモリのように規格がそろい、どの会社の製品でも同じように使えるものは、需要と供給の釣り合いで価格が大きく動きやすい。