半導体の製造に、大きな設備投資が必要な理由と、その費用がどう回収されるかを一般的な仕組みとして説明する。装置の費用、減価償却の考え方、稼働率と費用の関係、投資の時間差と市況の波の関係を扱う。
減価償却と、稼働率による一つあたりの費用の違い(模式図)
- 減価償却代金を使う期間に分けて費用にする
- 稼働率の違い処理が多いほど、一つあたりは小さい
図:左は、減価償却。装置の代金は、買ったときにまとめて払うが、費用としては使う期間に分けて計上する。右は、稼働率の違い。設備の費用は同じでも、処理するチップが多いほど、一つあたりの負担は小さい。目盛りのない模式図、本サイトで作成半導体の製造は、設備に大きな費用がかかる
半導体の製造は、設備に大きな費用がかかる産業である。工場の建物、クリーンルーム、水とガスの設備、そして、数多くの高価な装置が必要になる。しかも、技術が進むほど、装置は高度になり、費用は増えていく傾向がある。
このページでは、設備投資とは何か、その費用が、どのように会社の費用として扱われ、回収されるかを、一般的な考え方として見ていく。特定の会社の投資額や、投資の良し悪しを示すものではない。
設備投資と減価償却
会社が、工場や装置のように、長く使うものを買う支出を、設備投資と呼ぶ。装置の代金は、買った年にまとめて費用にするのではなく、使う期間に分けて、少しずつ費用にする。この考え方を、減価償却と呼ぶ。
たとえば、数年間使う装置なら、代金を使う年数で分けて、毎年の費用にする。実際にお金が出るのは、買ったときだが、会社の決算では、毎年の費用として現れる。このため、大きな設備投資をした会社は、その後の数年間、償却の費用を負担し続ける。
稼働率が、収益を左右する
設備の費用は、ウェーハを処理しても処理しなくても、かかり続ける。このような費用を、固定費と呼ぶ。設備が多い会社ほど、固定費が大きい。
工場がよく動いていれば、固定費は、たくさんのチップに分けて負担される。一つあたりの費用は小さくなる。逆に、需要が減って、工場の稼働率が下がると、同じ固定費を少ないチップで負担することになり、一つあたりの費用が増える。そのため、工場の稼働率は、収益を大きく左右する。
投資の時間差と、市況の波
工場の投資は、決めてから稼働するまでに、時間がかかる。投資を決めたときと、工場が動き出すときで、需要の状況が変わっていることがある。前のページで学んだ市況の波は、この時間差とも関係している。
需要が強いときに、各社が投資を増やすと、数年後に、供給が増えすぎる場合がある。逆に、需要が弱いときに、投資を控えると、需要が戻ったときに、供給が足りなくなる場合がある。投資をいつ、どれだけ行うかは、会社にとって、大きな判断である。
分業と、投資の負担
分業の考え方は、投資の負担とも関わる。設計だけを行う会社は、工場を持たないので、設備の負担が小さい。一方、製造を受け持つ会社は、設備に大きな投資をして、多くの顧客のチップを作ることで、設備を使い切る。後工程を受け持つ会社も、組み立てやテストの装置に投資する。
工場を持つか持たないかは、会社の事業の形と、費用の構造を大きく変える。
国の支援との関係
設備の投資額が大きいので、国が投資を支援する場合がある。その考え方は、別のページで学んだとおりである。
このページのまとめ
半導体の製造は、設備に大きな費用がかかる。装置の代金は、減価償却として、使う期間に分けて費用になる。設備の費用は固定費なので、工場の稼働率が、収益を大きく左右する。投資は、決めてから稼働するまでに時間がかかるので、市況の波とも結びついている。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
減価償却の説明として、正しいものはどれか。
答えと解説を見る
答え:1. 長く使う装置の代金を、使う期間に分けて費用にする考え方
減価償却は、長く使うものの代金を、使う期間に分けて、毎年の費用にする考え方である。
問2
工場の稼働率が下がると、チップ一つあたりの費用が増えやすい理由はどれか。
答えと解説を見る
答え:1. 設備の費用は固定費で、少ないチップで分けることになるから
設備の費用は、動かしても動かさなくてもかかる。処理するチップが減ると、一つあたりの負担が増える。