世界の半導体の中で日本の位置がどう変わってきたのかを、経済産業省の資料をもとに説明する。世界のシェアの変化、売上の上位の顔ぶれの変化、国内の新しい工場、市場の見通しと国の目標、資料を読むときの注意を扱う。
世界のシェアの移り変わり
- 1988年日本が半分を占めていた
- 2019年米国とアジアが伸び、日本は10.0%に
図:世界の半導体の売上に占める地域ごとのシェア(%)。左は1988年、右は2019年。アジアは日本を除く。横の長さは0%から始めた。出典:経済産業省「半導体政策について」(2024年、Omdiaのデータをもとに経済産業省が作成)。本サイトで作図日本の位置は、時代とともに変わってきた
前のページでは、トランジスタの発明から、日本がDRAMで存在感を高めた時代、そして事業の組み替えと分業の時代までの流れをたどった。このページでは、その流れの結果として、世界の中で日本の半導体産業がどのような位置にあるのかを、数字で見ていく。
数値は、経済産業省の資料による[1]。資料の中のシェアや順位は、民間の調査会社(Omdia)のデータをもとに、経済産業省がまとめたものである[1]。いずれも資料の時点の数値であり、その後の変化は含まない。
世界のシェアの変化
経済産業省の資料では、世界の半導体の売上に占める国や地域ごとのシェアが示されている。
1988年には、日本のシェアは50.3%で、米国(36.8%)を上回っていた[1]。前のページで学んだ、日本がDRAMで躍進した時代にあたる。
それが2019年には、日本のシェアは10.0%となった。米国(50.7%)と、日本を除くアジア(25.2%)が、シェアを伸ばした[1]。この間に、日本のシェアは大きく下がり、米国とアジアの会社が伸びたことになる。
売上の上位の顔ぶれの変化
会社ごとの売上の順位でも、同じ変化が見られる。資料では、1992年の世界の売上の上位、10社の中に、日本の会社が多く入っていたことが示されている[1]。
一方、2019年の売上の上位、10社の中では、日本の会社はキオクシアだけだった[1]。上位には、米国や韓国の会社が並んでいる。
こうした変化の背景には、前のページで学んだ流れがある。DRAMの市場で韓国などの会社が力を伸ばしたこと、日本の会社が事業の組み替えを進めたこと、そして受託製造の会社が力をつけ、設計と製造の分業が広がったことである。
先端のロジック半導体
計算をするチップに使う先端のロジック半導体について、経済産業省の資料は、国内に40ナノより先端のロジック半導体を作る事業者がいないとしている[1]。そして、先端のロジックの分野で、日本は世界から10年遅れているという見方を示している[1]。これらは、資料の時点での経済産業省の見方である。
国内の新しい工場
その一方で、資料では、国内で新しい工場が動き出していることも示されている[1]。
* 熊本のJASM:ロジック半導体の工場で、生産の能力は月に5.5万枚(直径の大きいウェーハに換算)、最初の出荷は2024年12月とされている[1]。* 広島のマイクロン:DRAMの工場で、生産の能力は月に4万枚とされている[1]。* 三重のキオクシアとウエスタンデジタル:立体に積むフラッシュメモリの工場で、生産の能力は月に10.5万枚、最初の出荷は2023年2月とされている[1]。
これらの工場は、分野の前のページで学んだ国の支援の対象にもなっている[1]。
市場の見通しと、国の目標
資料では、世界の半導体の市場の規模について、2020年は、約50兆円、2030年は、約100兆円に広がるという見通しが示されている[1]。
そのうえで、国内の半導体に関わる売上を、2020年の5兆円から、2030年に15兆円超にするという目標が掲げられている[1]。これは国の目標であり、実際にそうなるかは、今後の投資や市場の動きによる。
日本の強みを、どう見るか
シェアや売上の順位は、チップそのものを作って売る会社の数字である。分野「業界の構造と企業」の前のページで学んだとおり、半導体のサプライチェーンには、チップを作る会社のほかに、製造装置や材料を供給する会社がある。
チップの売上のシェアだけを見ると、日本の位置は下がったように見える。しかし、サプライチェーン全体の中で、日本の会社がどの役割を受け持っているかは、別の見方で確かめる必要がある。このサイトの企業分析では、掲載している会社ごとに、サプライチェーンの中の位置と、関わる工程を示している。
数字を読むときの注意
このページの数字を読むときには、いくつか注意したい点がある。
一つ目は、時点である。シェアや順位は、資料の時点のものであり、その後の変化は含まない。
二つ目は、何を数えているかである。シェアは、どの会社を、どの国や地域の会社として数えるかによって変わる。また、チップの売上のシェアには、装置や材料は含まれない。
三つ目は、見通しと目標の違いである。市場の見通しは予測であり、国内の売上の目標は国が掲げた目標である。どちらも、確定した数字ではない。
このページのまとめ
経済産業省の資料によると、日本の半導体の世界のシェアは、1988年の50.3%から、2019年には10.0%になった。2019年の売上の上位、10社の中の日本の会社は、キオクシアだけだった。先端のロジック半導体では、経済産業省は日本が遅れているという見方を示している。一方で、熊本、広島、三重などで新しい工場が動き出している。国は、国内の半導体に関わる売上を2030年に15兆円超にする目標を掲げている。数字は資料の時点のもので、何を数えているかにも注意が要る。
- 用語:ファウンドリ:他社が設計した半導体を、受託して製造する事業者、またはその事業形態。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
経済産業省の資料で、1988年と2019年の日本の半導体の世界のシェアの変化として示されているものはどれか。
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答え:1. 50.3%から10.0%になった
資料では、日本のシェアは1988年に50.3%で、2019年には10.0%になったと示されている。
問2
チップの売上のシェアだけを見るときの注意として、本文で挙げているものはどれか。
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答え:1. チップの売上のシェアには、製造装置や材料は含まれない
シェアや順位は、チップそのものを作って売る会社の数字である。サプライチェーンの中で装置や材料を受け持つ会社の役割は、別の見方で確かめる必要がある。
問3
国内の半導体に関わる売上の「2030年に15兆円超」という数字の性格として、正しいものはどれか。
答えと解説を見る
答え:1. 国が掲げた目標で、確定した数字ではない
2030年に15兆円超は、国が掲げた目標である。実際にそうなるかは、今後の投資や市場の動きによる。