2. 半導体材料とウェーハ6 / 7ページ

新しい半導体材料:酸化ガリウム、ダイヤモンドなど

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. なぜ、新しい材料を探すのか
  2. 材料を比べる物差し
  3. 酸化ガリウム
  4. ダイヤモンド
  5. 窒化アルミニウム
  6. 原子数層の薄い材料
  7. 研究から製品になるまで
  8. このページのまとめ
  9. 関係する工程と用語
  10. 次に読む
  11. 理解度チェック

研究が進む新しい半導体材料を、バンドギャップ、壊れにくさ、熱の伝わりやすさ、作りやすさの物差しで比べる。酸化ガリウム、ダイヤモンド、窒化アルミニウム、原子数層の薄い材料の強みと課題を扱う。

新しい半導体材料の位置と、強み・課題(模式図)

  1. バンドギャップが大きいシリコン炭化ケイ素窒化ガリウム酸化ガリウムダイヤモンド窒化アルミニウムバンドギャップの並び上の三つが、新しい材料
  2. 酸化ガリウム強み:大きな基板を作りやすい課題:熱を伝えにくい、p型が難しいダイヤモンド強み:強い電界に耐え、熱をよく伝える課題:大きな基板、n型が難しい窒化アルミニウム強み:深紫外線の光を出せる課題:欠陥の少ない結晶づくり強みと課題作れるかどうかが、製品への壁になる
図:左は、バンドギャップの小さい順に材料を並べたもの(並びの順だけを示し、間隔は実際の値の比ではない)。右は、新しい材料の主な強みと課題。模式図、本サイトで作成

なぜ、新しい材料を探すのか

半導体の多くはシリコンで作られ、高い電圧や高い周波数を扱う部品では、炭化ケイ素や窒化ガリウムも使われている(「シリコン以外の半導体」のページ)。それでも、新しい材料の研究は続いている。

理由は、用途によって求められる性質が、今の材料の限界に近づいているからである。電力をより少ない損失で変換したい、より高い温度でも動かしたい、より短い波長の光を出したい、トランジスタをさらに小さくしたい。こうした求めに応えるため、材料そのものを変えるという選択肢が検討されている。

材料を比べる物差し

新しい材料の良し悪しは、いくつかの物差しで比べる。

一つ目は、バンドギャップの大きさである。大きいほど、高い電圧に耐えやすく、高い温度でも余計な電流が流れにくく、短い波長の光を扱える(「エネルギーの段で考える」のページ)。

二つ目は、壊れずに耐えられる電界の強さである。これが大きいほど、同じ電圧に耐える層を薄くでき、電力の損失を減らせる。

三つ目は、熱の伝わりやすさである。部品が出す熱を逃がせないと、温度が上がって性能や寿命が落ちる。

四つ目は、作りやすさである。大きく欠陥の少ない基板を作れるか、n型とp型の両方を作れるか、良い絶縁膜を作れるか、といった点である。どれほど性質が良くても、作れなければ製品にならない。

酸化ガリウム

酸化ガリウムは、炭化ケイ素や窒化ガリウムよりさらに大きなバンドギャップを持つ材料である。高い電圧に耐えるパワー半導体の材料として研究が進んでいる。

大きな特徴は、作りやすさにある。炭化ケイ素や窒化ガリウムと違い、融かした液から結晶を育てられるため、大きな基板を比較的作りやすいと期待されている(「化合物半導体はどう作るか」のページ)。

課題は二つある。一つは、熱を伝えにくいことで、部品の熱をどう逃がすかの工夫が要る。もう一つは、p型を作るのが難しいことで、作れる部品の構造が限られる。

ダイヤモンド

ダイヤモンドは、炭素だけでできた結晶で、バンドギャップが大きく、強い電界にも耐える。さらに、熱を非常によく伝える。高い電圧、高い温度、強い放射線の下で動く部品の材料として期待されている。

一方で、作る難しさも大きい。大きな単結晶の基板を作ることが難しく、混ぜる元素で電気の通りやすさを変えること(特にn型を作ること)も難しい。研究の段階のものが多い材料である。

窒化アルミニウム

窒化アルミニウムは、窒化ガリウムの仲間で、バンドギャップがさらに大きい。窒化ガリウムと混ぜて割合を変えると、バンドギャップを調整できる。

この性質を使うと、紫外線の中でも特に波長の短い光(深紫外線)を出す発光ダイオードを作れる。深紫外線は、水や空気の殺菌などに使われる。高い電圧に耐える部品の材料としての研究も進んでいる。

原子数層の薄い材料

方向の違う新しい材料として、原子が数層しかない、極めて薄い材料がある。炭素の原子が一層だけ並んだグラフェンや、金属と硫黄などの原子が薄い層を作る材料が代表である。

トランジスタを小さくしていくと、電気が流れる部分(チャネル)も薄くする必要がある。シリコンを薄くしすぎると、電子が動きにくくなるなどの問題が出る。初めから原子数層の厚さしかない材料は、その先のトランジスタの材料の候補として研究されている。

研究から製品になるまで

新しい材料が製品になるには、基板を作る、膜を育てる、n型とp型を作る、電極や絶縁膜を付ける、長く使えることを確かめる、という段階を一つずつ越えなければならない。それぞれの段階で、専用の装置や材料も必要になる。

炭化ケイ素や窒化ガリウムも、研究が始まってから製品が広く使われるまでに、長い時間がかかった。新しい材料を見るときは、性質の良さだけでなく、どの段階の課題が残っているかに注目すると、実際に使われる時期の見通しを考えやすい。

このページのまとめ

新しい半導体材料は、バンドギャップ、耐えられる電界、熱の伝わりやすさ、作りやすさの物差しで比べる。酸化ガリウムは大きなバンドギャップと作りやすさが、ダイヤモンドは耐電圧と熱の伝わりやすさが強みで、それぞれ熱やドーピングに課題がある。窒化アルミニウムは深紫外線の光に、原子数層の材料は小さなトランジスタに使える可能性がある。

  • 用語:パワー半導体:電力の変換や制御に使う半導体素子の総称。大きな電圧や電流を扱い、スイッチ動作で電力の形を変える。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

酸化ガリウムが、炭化ケイ素や窒化ガリウムと比べて「作りやすい」と期待されている理由はどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 融かした液から結晶を育てられるため

酸化ガリウムは、融かした液から結晶を育てられるため、大きな基板を比較的作りやすいと期待されている。

問2

ダイヤモンドを半導体の材料として使うときの課題として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:3. 大きな単結晶の基板を作ることや、n型を作ることが難しいこと

ダイヤモンドは性質が優れる一方、大きな単結晶の基板を作ることや、混ぜる元素で性質を変えること(特にn型)が難しい。

問3

新しい材料を比べる物差しとして、このページで挙げていないものはどれか。

答えと解説を見る

答え:3. 結晶の色

このページでは、バンドギャップ、耐えられる電界、熱の伝わりやすさ、作りやすさの四つを物差しとして挙げた。