半導体の製造で、ウェーハのほかに使われる材料を、工程ごとに説明する。膜を作るガスや削るガス、洗浄の薬液、回路の形を写す感光材(フォトレジスト)、膜になる金属の材料、平らに磨く研磨剤、組み立ての材料と、それらに高い純度が求められる理由を扱う。
工程ごとに使う主な材料(模式図)
- 前工程ガス、薬液、感光材が中心
- 後工程チップを守り、外とつなぐ材料
図:左は前工程(ウェーハの上に回路を作る工程)、右は後工程(チップを組み立てる工程)で使う主な材料。どの工程でも、専用の材料が使い分けられる。模式図、本サイトで作成ウェーハのほかにも、多くの材料がいる
半導体の材料というと、シリコンのウェーハを思い浮かべることが多い。しかし、ウェーハの上に回路を作り、チップとして組み立てるまでには、ほかにも多くの材料を使う。膜を作るガス、削るガス、洗う薬液、形を写す感光材、配線になる金属、組み立ての樹脂などである。
これらの材料は、工程ごとに専用のものが使い分けられ、どれも極めて高い純度が求められる。このページでは、工程の流れに沿って、主な材料を見ていく。
ガス:膜を作り、削り、混ぜる
前工程では、多くの種類のガスを使う。
一つは、膜を作るためのガスである。化学気相成長(CVD)では、ケイ素や窒素などを含む原料のガスを、熱したウェーハの上で反応させ、絶縁膜や半導体の膜を作る。
二つ目は、削るためのガスである。ドライエッチングでは、フッ素や塩素を含むガスをプラズマにして、膜の不要な部分を取り除く。削りたい膜の種類によって、ガスの組み合わせを変える。
三つ目は、混ぜるためのガスである。イオン注入では、ホウ素やリン、ヒ素を含むガスから、ウェーハに打ち込むイオンを作る。
このほか、反応を起こさないように周りを満たす窒素やアルゴンなども、大量に使う。半導体のガスには、毒性や燃えやすさを持つものが多く、工場では専用の配管や監視の設備で安全に送る(「工場に届ける:超純水と、ガス・薬液」のページ)。
薬液:洗い、溶かす
ウェーハは、工程と工程の間に何度も洗う。洗浄には、酸やアルカリ、過酸化水素などを組み合わせた薬液を使い、表面の微粒子や金属、有機物の汚れを取り除く。最後は、不純物を極めて少なくした水(超純水)で洗い流す。
薬液で膜を溶かして取り除くウェットエッチングや、露光した感光材を溶かす現像にも、それぞれ専用の薬液を使う。
感光材:回路の形を写す
回路の形をウェーハに写すリソグラフィでは、ウェーハの表面に、光が当たると性質が変わる感光材(フォトレジスト)を薄く塗る。マスクを通して光を当てたあと現像すると、光が当たった部分か、当たらなかった部分のどちらかが溶けて、回路の形が残る。光が当たった部分が溶けるものをポジ型、残るものをネガ型と呼ぶ。
露光に使う光の波長が短くなるほど、細かい形を写せるが、その波長に合わせた感光材が必要になる。感光材は、露光の装置と組み合わせて開発される材料である。
膜になる材料と、磨く材料
配線や電極になる金属の膜は、金属の塊(ターゲット)にイオンをぶつけて、はじき出された原子をウェーハに積もらせるスパッタリングで作ることが多い。ターゲットには、作りたい膜に合わせた金属が使われる。
微細な回路の配線には銅を使い、銅がまわりの絶縁膜に入り込まないように、薄い膜(バリア膜)で包む。
膜を重ねていくと、表面に凹凸ができる。これを平らに磨くCMP(化学機械研磨)では、細かい粒子を含む研磨剤(スラリー)と、磨くためのパッドを使う。
組み立ての材料
後工程では、切り分けたチップを守り、外とつなぐための材料を使う。チップを固定する接着の材料、チップと外の端子を結ぶ細い金属の線(ボンディングワイヤ)、チップを載せる金属の枠(リードフレーム)や基板、全体を包んで守る樹脂(封止材)などである。
チップの性能が上がり、熱を多く出すようになると、熱を逃がしやすい材料や、反りにくい材料が求められる。先端のパッケージでは、組み立ての材料の性質が、製品の性能を左右することもある。
なぜ、高い純度が求められるのか
回路の線の幅が細くなると、わずかな汚れや微粒子でも、配線が切れたり、つながってはいけない場所がつながったりする。金属の不純物は、トランジスタの性質を変えてしまう。
そのため、ガスや薬液、感光材などには、不純物や微粒子を極めて少なくした品質が求められる。材料の品質は、良品の割合(歩留まり)に直接かかわる。製造の装置と同じく、材料も半導体を作る力を支える大切な要素である。
使い終わった材料の扱い
製造で使ったガスや薬液は、そのまま外に出せないものが多い。毒性や燃えやすさのあるガスは、装置から出たところで、分解したり吸着したりして無害にしてから排気する。使った薬液も、種類ごとに分けて集め、処理したり、精製して再び使ったりする。
工場では、大量の超純水も使う。使ったあとの水を回収し、きれいにして再び使う仕組みも取り入れられている。材料を安全に、無駄なく使うことは、工場の環境への負担を減らすことにもつながる(「電力と環境:工場が向き合う課題」のページ)。
このページのまとめ
半導体の製造では、ウェーハのほかに、膜を作り、削り、混ぜるためのガス、洗い溶かすための薬液、回路の形を写す感光材、配線になる金属、平らに磨く研磨剤、組み立ての樹脂や金属など、多くの材料を使う。どれも工程ごとに専用のものが使い分けられ、極めて高い純度が求められる。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
リソグラフィで、ウェーハの表面に塗り、光が当たると性質が変わる材料はどれか。
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答え:2. フォトレジスト(感光材)
フォトレジストは、光が当たると性質が変わる材料である。現像すると、回路の形がウェーハの上に残る。
問2
ドライエッチングで、膜の不要な部分を取り除くために使われるのはどれか。
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答え:1. フッ素や塩素を含むガスのプラズマ
ドライエッチングでは、フッ素や塩素を含むガスをプラズマにして、膜の不要な部分を取り除く。
問3
製造に使う材料に、極めて高い純度が求められる理由として、正しいものはどれか。
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答え:2. わずかな汚れや微粒子でも、回路の不良につながり、歩留まりを下げるため
線の幅が細くなると、わずかな汚れや微粒子でも配線の不良につながる。材料の品質は、歩留まりに直接かかわる。