2. 半導体材料とウェーハ11 / 11ページ

回路を作る薄い膜の材料:絶縁膜、金属膜、バリア

公開日:作成者:hysd(SemiCompass運営者)

このページの目次
  1. 半導体の回路は、膜の重なり
  2. 絶縁膜の代表:酸化シリコン
  3. 窒化シリコン
  4. ゲートの絶縁膜と、誘電率
  5. 配線の金属
  6. 金属を閉じ込める膜
  7. 膜を作る方法も、性質を決める
  8. このページのまとめ
  9. 関係する工程と用語
  10. 次に読む
  11. 理解度チェック

ウェーハの上に積む薄い膜の材料を説明する。絶縁膜に使う酸化シリコンと窒化シリコン、ゲートの絶縁膜で誘電率の高い材料が求められる理由、配線の金属と、金属の広がりを防ぐ膜、膜に求められる性質と作り方を扱う。

チップの断面の膜と、ゲートの絶縁膜(模式図)

  1. シリコン絶縁膜銅の配線配線絶縁膜バリア膜が銅を囲む膜の重なり絶縁膜、金属、バリア膜
  2. ゲート酸化シリコン(薄い)電気が漏れるゲート誘電率の高い膜(厚い)漏れにくいゲートの絶縁膜厚くしても同じ効きを得る
図:左は、チップの断面の膜の重なり。シリコンの上に、絶縁膜と金属の配線が重なり、銅の配線はバリア膜で囲まれる。右は、ゲートの絶縁膜。酸化シリコンを薄くしすぎると電気が漏れるので、誘電率の高い膜を厚くして、同じ効きを得る。目盛りのない模式図、本サイトで作成

半導体の回路は、膜の重なり

半導体のチップの断面を、顕微鏡で見ると、非常に薄い膜が何層にも重なっている。膜には、電気を通さない絶縁膜と、電気を通す金属の膜がある。膜を積んで、削り、また積むことで、トランジスタと配線ができる。

膜の材料は、役割によって選ばれる。このページでは、絶縁膜、金属の膜、金属の広がりを防ぐ膜を、順に見ていく。製造に使うガスや薬液を扱った前のページと違い、ここでは、チップの中に残る材料を扱う。

絶縁膜の代表:酸化シリコン

もっとも基本的な絶縁膜は、酸化シリコンである。シリコンを酸素と反応させて作る、ガラスのような膜である。電気を通しにくく、シリコンとの境目の状態がよい。トランジスタのゲートの絶縁や、素子どうしの分離、配線の間の絶縁に、長く使われてきた。

酸化シリコンは、シリコンを高温で酸化して作る方法のほか、ガスから積む方法でも作れる。作り方によって、膜の質が変わる。高温で酸化して作った膜は、質がよい。

窒化シリコン

窒化シリコンは、シリコンと窒素の化合物である。酸化シリコンより硬く、水分や不純物を通しにくい。そのため、チップの表面を守る膜や、エッチングで削られにくい膜として使われる。

製造の途中で、ほかの膜を削るときに、窒化シリコンの膜を、削られないための覆いとして使うことがある。膜の種類によって、薬液やガスに対する削れやすさが違うことを、利用している。

ゲートの絶縁膜と、誘電率

トランジスタの微細化が進むと、ゲートの絶縁膜を、非常に薄くする必要がある。ゲートの電圧で、半導体の中の電気の通り道を制御するには、絶縁膜が薄いほど、効きがよくなる。

ところが、酸化シリコンの膜を薄くしすぎると、電気がしみ出して、ゲートから漏れてしまう。そこで、同じ効きを、より厚い膜で得るために、誘電率の高い絶縁膜が使われるようになった。誘電率は、電気をためやすさを表す値で、高いほど、同じ厚さで、ゲートの効きが強まる。この種類の膜を、高誘電率膜と呼ぶ。

配線の間の絶縁膜では、逆に、誘電率の低い膜を使う。電気をためにくくして、信号の遅れを抑えるためである。同じ絶縁膜でも、役割によって、誘電率の高低が使い分けられる。

配線の金属

配線には、電気をよく通す金属が使われる。長く使われてきたアルミニウムに加えて、微細な配線では、電気抵抗の低い銅が使われる。銅は、エッチングで削りにくいため、先に溝を掘って埋め込む、ダマシンという方法で作る。

層の間をつなぐ穴や、トランジスタとの接続には、タングステンなど、穴に隙間なく詰めやすい金属が使われる。金属ごとに、電気の通りやすさ、作りやすさ、丈夫さが違い、場所ごとに使い分ける。

金属を閉じ込める膜

銅は、シリコンの中や、絶縁膜の中に広がりやすい。広がった銅は、トランジスタの性質を壊してしまう。そこで、銅の配線のまわりを、広がりを防ぐ膜で囲む。この膜を、バリアメタルや、バリア膜と呼ぶ。

バリア膜には、銅を通さず、電気を通し、薄くても均一に覆える性質が求められる。微細な溝の内側を、すき間なく覆う必要があり、膜を作る方法も、それに合わせて選ばれる。

膜を作る方法も、性質を決める

膜の性質は、材料だけでなく、作り方でも変わる。ガスの反応で積む方法、金属の粒を打ち付けて積む方法、一層ずつ原子を重ねる方法がある。微細な形を均一に覆うには、一層ずつ重ねる方法が向く。

膜の厚さが均一か、中に隙間や不純物がないか、下の層とよく密着しているかが、チップの性能と信頼性を決める。そのため、膜の材料と作り方は、セットで決められる。

このページのまとめ

半導体の回路は、絶縁膜と金属膜の重なりでできている。酸化シリコンと窒化シリコンが基本の絶縁膜で、ゲートの絶縁には誘電率の高い膜、配線の間には誘電率の低い膜が使われる。配線の金属には銅やアルミニウムが使われ、銅の広がりを防ぐバリア膜で囲む。膜の性質は、材料と作り方の両方で決まる。

  • 工程:成膜(CVD、PVD、ALD)
  • 工程:酸化・拡散
  • 工程:配線
  • 用語:ALD:原料ガスを交互に供給し、薄膜を原子層単位で積み重ねる成膜手法。
  • 用語:CVD:原料ガスの化学反応で、ウェーハ表面に薄い膜をつくる成膜法。
  • 用語:ダマシン:絶縁膜に配線の溝を先に掘り、金属を埋め込んで余分をCMPで除き、配線を作る方法である。
  • 用語:Low-k膜:比誘電率が低い絶縁膜で、配線どうしの間に使い、信号の遅れを小さくする。
  • 用語:スパッタリング:真空中でプラズマのイオンをターゲットに衝突させ、はじき出した原子を基板に付着させて薄い膜をつくる成膜法。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

ゲートの絶縁膜に、誘電率の高い材料が使われるようになった理由として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 酸化シリコンを薄くしすぎると電気が漏れるので、より厚い膜で同じ効きを得るため

微細化でゲートの絶縁膜を薄くすると、酸化シリコンでは電気が漏れる。誘電率の高い膜なら、より厚くても同じ効きが得られる。

問2

銅の配線のまわりをバリア膜で囲む理由として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 銅がシリコンや絶縁膜に広がり、トランジスタの性質を壊すのを防ぐため

銅は、シリコンや絶縁膜の中に広がりやすい。広がった銅は、トランジスタの性質を壊すので、バリア膜で閉じ込める。