半導体に関わる会社を、サプライチェーンの中の位置から読み解く方法を説明する。何をどの工程に向けて誰に売っているか、会社全体の中で半導体がどれだけを占めるか、需要の波をどの順に受けるかを見る観点と、このサイトの企業分析での確かめ方を扱う。
会社の位置を読む観点(模式図)
- 位置と、波の受け方箱の下の文字は、影響を受けやすいもの
- 会社全体の中の半導体区分の分け方は、会社ごとに違う
図:左は、サプライチェーンの中の位置と、需要の波の受け方の違い。装置の会社は設備投資の計画、材料の会社は工場の稼働、チップを作る会社は機器の需要の影響を受けやすい。右は、多くの事業を持つ会社で、決算の資料の事業の区分(セグメント)から、半導体に関わる事業の大きさを見る考え方。区分の大きさは仮のもので、数値ではない。模式図、本サイトで作成「半導体の会社」は、一つの種類ではない
前のページでは、半導体が、設計、製造、組み立てと、それを支える装置、材料、設計の道具の役割に分かれて作られることを学んだ。ニュースで「半導体の会社」と呼ばれる会社も、この中のどこにいるかによって、仕事の中身がまったく違う。
このページでは、ある会社がサプライチェーンの中のどこにいるのかを読み解くための観点を整理する。観点を持っておくと、会社の発表やニュースを読んだときに、その会社にとって何が起きているのかを考えやすくなる。
何を売っているか
最初に見るのは、その会社が何を売っているかである。大きく分けると、次のような種類がある。
* チップそのもの:完成した半導体を、電子機器や自動車などのメーカーに売る。* 製造装置:成膜、露光、エッチング、洗浄、検査、組み立てなどの装置を、チップを作る会社に売る。* 材料:ウェーハ、感光材、ガス、薬液、研磨剤、パッケージの材料などを、チップを作る会社に売る。* 部品や設備:装置に組み込む部品や、工場の設備などを、装置の会社や工場に売る。* 設計の道具や設計の部品:設計に使うソフトウェアや、回路のまとまりを、設計する会社に売る。
同じ「材料」でも、ウェーハのように前工程の最初に使うものと、パッケージの材料のように後工程で使うものがある。どの工程に向けた製品かまで見ると、位置がよりはっきりする。
誰に売っているか
次に、売る相手を見る。チップを売る会社なら、相手はスマートフォン、パソコン、データセンター、自動車、産業機器などのメーカーである。装置や材料の会社なら、相手はチップを作る会社である。
相手の業界によって、需要が伸びる時期や理由が違う。たとえば、自動車に向けたチップは、自動車の生産の動きの影響を受けやすい。データセンターに向けたチップは、計算の需要の動きの影響を受けやすい。
また、売り先が少数の大きな顧客に集まっているか、多くの顧客に分かれているかも、会社の特徴になる。
会社全体の中で、半導体がどれだけか
半導体に関わる会社の中には、半導体だけを手がける会社もあれば、多くの事業の一つとして半導体に関わる会社もある。たとえば、化学や電機の大きな会社では、半導体の材料や部品が、いくつもある事業の一部であることが多い。
こうした会社では、決算の資料に示される事業ごとの区分(セグメント)を見ると、半導体に関わる事業がどれだけの売上を占めるかが分かる。ただし、区分の分け方は会社ごとに違い、半導体の部分だけが一つの区分になっているとは限らない。区分の名前と、その中に含まれる製品の説明を合わせて読む必要がある。
需要の波を、どの順に受けるか
半導体の需要には、増える時期と減る時期の波がある。サプライチェーンの中の位置によって、その波の受け方が違う。
チップを作る会社は、チップの需要が増えると見込むと、工場を増やし、装置を買う。そのため、製造装置の会社は、チップを作る会社が設備に投資する計画の影響を大きく受ける。投資は、需要の見通しをもとに前もって決められるので、装置の受注は、チップの売れ行きとは少し違う時期に動くことがある。
一方、材料の多くは、工場が動いてウェーハを処理するたびに使われる。そのため、材料の会社の売上は、工場の稼働、つまり実際に作られるウェーハの量と結びつきやすい。
このように、同じ半導体の波でも、装置、材料、チップの会社では、影響が表れる時期や大きさが違う。会社のニュースを読むときは、その会社がどの波を受ける位置にいるかを考えると、意味を取りやすい。
国内と海外のどこで売っているか
半導体のサプライチェーンは、国をまたいでつながっている。日本の会社でも、売上の多くを海外の顧客から得ていることがある。決算の資料に示される地域ごとの売上を見ると、どの地域の顧客と取引が多いかが分かる。
地域ごとの売上は、その地域の需要の動きや、国どうしの関係、輸出の決まりの変化が、会社にどう関わるかを考える手がかりになる。
このサイトの企業分析で確かめる
このサイトの企業ページでは、ここで挙げた観点を、次の場所で確かめられる。
* 事業概要:何を作り、誰に売っているか。* 工程上の位置づけ:サプライチェーンの中のどの工程に関わるか。* セグメント別の売上の推移:会社全体の中で、半導体に関わる事業がどれだけを占めるか。* 地域別の売上:どの地域の顧客と取引が多いか。
また、工程ごとの企業の一覧から、同じ工程に関わる会社を並べて見ることもできる。数値には、出典と時点を付けている。
このページのまとめ
半導体に関わる会社を読み解くには、何を売っているか、誰に売っているか、会社全体の中で半導体がどれだけを占めるか、需要の波をどの順に受けるか、どの地域で売っているかを見るとよい。装置の会社は設備投資の計画の影響を、材料の会社は工場の稼働の影響を受けやすいなど、位置によって波の受け方が違う。このサイトの企業ページでは、事業概要、工程上の位置づけ、セグメント別と地域別の売上で、これらを確かめられる。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
製造装置の会社が、特に大きく影響を受けるものとして、本文で挙げているものはどれか。
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答え:1. チップを作る会社が設備に投資する計画
チップを作る会社は、需要が増えると見込むと工場を増やし、装置を買う。そのため、装置の会社は、設備への投資の計画の影響を大きく受ける。
問2
多くの事業を持つ会社で、半導体に関わる事業がどれだけの売上を占めるかを知る手がかりとして、正しいものはどれか。
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答え:2. 決算の資料に示される、事業ごとの区分(セグメント)の売上
事業ごとの区分の売上を見ると、半導体に関わる事業の大きさが分かる。ただし、区分の分け方は会社ごとに違うので、区分に含まれる製品の説明と合わせて読む。
問3
材料の会社の売上が結びつきやすいものとして、本文で挙げているものはどれか。
答えと解説を見る
答え:1. 工場の稼働、つまり実際に作られるウェーハの量
材料の多くは、工場がウェーハを処理するたびに使われる。そのため、材料の会社の売上は、工場の稼働と結びつきやすい。