チップの中の非常に多くのトランジスタをつなぐ配線が、何層にも重ねて作られる仕組みを説明する。溝を掘って銅を埋め込み、表面を磨いて平らにする作り方、配線の間の絶縁膜、層どうしをつなぐ穴と、細い配線の課題を扱う。
多層配線と、銅の配線の作り方(模式図)
- 多層配線下は近くをつなぐ細い配線、上は遠くをつなぐ太い配線
- 溝に銅を埋め込むはみ出した銅を磨き取ると、溝の中にだけ銅が残る
図:左は、多層配線の断面。下にトランジスタがあり、その上に配線の層が重なる。下の層ほど細く、上の層ほど太い。層と層は、縦の通り道(ビア)でつながる。右は、銅の配線の作り方。絶縁膜に溝を掘り、表面全体に銅を付けて溝を埋め、はみ出した銅を磨いて取り除くと、溝の中にだけ銅が残る。模式図、本サイトで作成トランジスタだけでは、回路にならない
分野「デバイス」と「論理回路」では、トランジスタを組み合わせて論理ゲートを作り、計算や記憶をすることを学んだ。そのためには、トランジスタどうしを、設計どおりに電気の通り道でつなぐ必要がある。この通り道が「配線」である。
チップの中には、非常に多くのトランジスタがある。それらをすべてつなぐ配線は、一つの平面の上には収まりきらない。そこで、配線を何層にも重ねて作る。これを「多層配線」と呼ぶ。チップを断面で見ると、下の方にトランジスタがあり、その上に配線の層が、高い建物の階のように積み重なっている。
下は細く、上は太く
配線の層は、どれも同じではない。
トランジスタのすぐ上の下の方の層では、近くのトランジスタどうしをつなぐため、配線は非常に細く、間隔も狭い。上の層に行くほど、配線は太く、間隔も広くなる。上の方の層は、チップの離れた場所どうしをつないだり、電源を全体に配ったりする役割を持つ。
最も上の層には、チップの外とつながるための電極が作られ、パッケージの配線とつながる。
層と層をつなぐ穴
上の層の配線と下の層の配線をつなぐには、間の絶縁膜に小さな穴を開け、そこに金属を埋めて、縦の通り道を作る。この縦の通り道を「ビア」と呼ぶ。トランジスタと最初の配線の層をつなぐ部分にも、同じような縦の通り道がある。
一つのチップには、非常に多くのビアがある。一つでもつながらないものがあると、回路は正しく働かない。そのため、ビアを確実に作ることは、歩留まりを左右する大切な点である。
溝を掘って、銅を埋め込む
配線の材料には、電気を通しやすい金属が使われる。かつてはアルミニウムが広く使われていたが、細い配線では、より電気を通しやすい銅が主に使われるようになった。
銅は、エッチングで形を削り出すのが難しい。そこで、銅の配線は、ふつうとは逆の順番で作る。まず、絶縁膜を付け、リソグラフィとエッチングで、配線の形の溝と、ビアの穴を掘る。次に、溝と穴を含む表面全体に銅を付けて、溝と穴を埋める。最後に、溝からはみ出した余分な銅を、CMPで磨いて取り除き、表面を平らにする。すると、溝の中にだけ銅が残り、配線になる。
この作り方は、象眼という工芸の技法に似ていることから、その英語の名前で呼ばれることがある。
銅を閉じ込める膜
銅には、まわりの絶縁膜やシリコンの中にしみ込みやすいという困った性質がある。銅がトランジスタの近くまでしみ込むと、トランジスタの性質を変えてしまう。
そこで、銅を埋め込む前に、溝の内側に、銅のしみ込みを防ぐ薄い膜を付けておく。銅を入れる袋のような役割である。この膜は、溝の側面と底を、すき間なく均一に覆う必要がある。
溝に銅を埋めるときは、まず薄い銅の膜を付け、その上に、液の中で電気を流して銅を積もらせる方法(めっき)で、溝の奥まで銅を満たす。
層の数だけ、工程をくり返す
配線の層を一つ作るたびに、絶縁膜を付ける、リソグラフィで形を描く、エッチングで溝と穴を掘る、銅を埋める、CMPで磨く、という工程をくり返す。配線の層が多いチップほど、この繰り返しの回数が増える。
そのため、チップを作る工程のうち、かなりの部分を配線づくりが占める。トランジスタを作る下の方の工程と区別して、配線を作る上の方の工程を、まとめて呼び分けることもある。
配線の間の絶縁膜
配線と配線の間は、絶縁膜で隔てられている。配線どうしが近いと、隣の配線の信号の影響を受けたり、配線の間に電気がたまって、信号が伝わるのが遅れたりする。
そこで、電気をためにくい性質の絶縁膜が使われる。材料の中に細かいすき間を作って、電気をためにくくする工夫もある。ただし、すき間の多い膜は柔らかく、CMPで磨くときやパッケージに入れるときに傷みやすい。性質と強さの両立が課題になる。
細くするほど、難しくなる
微細化で配線が細く、間隔が狭くなると、新しい問題が出てくる。
一つは、配線の電気の通りにくさが大きくなることである。配線が細くなると、電気が通る断面が小さくなるだけでなく、配線の表面や、銅を閉じ込める膜の影響が相対的に大きくなる。その結果、トランジスタが速くなっても、配線で信号が遅れてしまう。
もう一つは、配線が傷みやすくなることである。細い配線に大きな電気を流し続けると、金属の原子が電気の流れに押されて少しずつ移動し、配線が細ったり切れたりすることがある。
こうした問題に対して、銅以外の金属を細い配線に使う研究や、電源の配線をウェーハの裏側に回して、表側の配線を信号のために空けるといった工夫が進められている。
このページのまとめ
チップの中のトランジスタは、何層にも重ねた配線でつながれる。下の層は細く、上の層は太い。層と層は、絶縁膜に開けた穴に金属を埋めたビアでつながる。銅の配線は、絶縁膜に溝と穴を掘り、銅を埋めてから、余分な銅をCMPで磨いて取り除いて作る。銅のしみ込みを防ぐ膜や、電気をためにくい絶縁膜が使われる。配線が細くなるほど、信号の遅れや配線の傷みが課題になる。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
上の層の配線と下の層の配線をつなぐ、絶縁膜に開けた穴に金属を埋めた縦の通り道を何と呼ぶか。
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答え:1. ビア
層と層の間の絶縁膜に穴を開け、金属を埋めて作る縦の通り道をビアと呼ぶ。
問2
銅の配線の作り方として、本文で説明したものはどれか。
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答え:2. 絶縁膜に溝と穴を掘り、銅を埋めてから、余分な銅をCMPで磨いて取り除く
銅はエッチングで形を削り出すのが難しいので、先に溝と穴を掘り、銅を埋めてから、はみ出した銅をCMPで取り除く。溝の中にだけ銅が残り、配線になる。
問3
銅を埋め込む前に、溝の内側に薄い膜を付ける理由として、正しいものはどれか。
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答え:2. 銅がまわりの絶縁膜やシリコンの中にしみ込むのを防ぐため
銅はまわりにしみ込みやすく、トランジスタの近くまで入ると性質を変えてしまう。溝の内側に、しみ込みを防ぐ薄い膜を付けてから銅を埋める。