半導体の製造で広く使われるプラズマが何であり、どのように作られるのかを説明する。プラズマを使って膜を垂直に削るエッチング、低い温度で膜を付ける成膜、表面を整える処理の仕組みと、プラズマを正確に保つ難しさを扱う。
プラズマを使う工程(模式図)
- プラズマを作る真空に近い部屋で、ガスに電圧をかける
- 垂直に削る感光材の形どおりに、深く削り出せる
図:左は、プラズマを作る装置の部屋。真空に近い部屋にガスを入れ、上下の電極に電圧をかけると、ガスがプラズマ(点線の囲み)になる。下の電極にウェーハを置く。右は、プラズマを使うエッチング。プラスの電気を帯びたイオン(矢印)が真上から飛び込み、溝の底を削るので、側面はあまり削られず、垂直に深く削れる。模式図、本サイトで作成物の四つ目の状態
物には、固体、液体、気体の三つの状態がある。氷を温めると水になり、さらに温めると水蒸気になる。気体にさらに大きなエネルギーを与えると、気体の分子や原子から電子がはぎ取られ、プラスの電気を帯びた粒(イオン)と、自由に飛び回る電子が混ざった状態になる。これを「プラズマ」と呼ぶ。
プラズマは、身の回りでは、雷や、蛍光灯の中で光っている部分などに見られる。半導体の製造では、このプラズマが、エッチング、成膜、表面の処理など、多くの工程で使われている。
プラズマの作り方
製造の装置の中では、プラズマを次のように作る。
まず、装置の部屋の中の空気を抜き、真空に近い状態にする。そこに、目的に合ったガスを少しだけ流し込む。次に、部屋の中の電極に、向きが速く入れ替わる電圧をかける。すると、ガスの中にもともとわずかにある電子が、電圧で揺さぶられて勢いよく動き、ガスの分子にぶつかる。ぶつかった分子から電子がはぎ取られ、新しい電子とイオンが生まれる。これがくり返されて、プラズマが保たれる。
プラズマの中では、電子とイオンのほかに、電子にぶつかられて分かれた、とても反応しやすい原子や分子のかけらも生まれる。このかけらと、イオンの二つが、プラズマを使う工程の主役である。
プラズマで削る:エッチング
工程の「エッチング」のページで学んだとおり、エッチングは、不要な部分の膜を削り取って、回路の形を作る工程である。薬液を使う方法もあるが、細かい形を作るには、プラズマを使う方法が主に使われる。
プラズマを使うエッチングでは、反応しやすいかけらが、削りたい膜の表面の原子と結びついて、気体になりやすい物質を作る。できた物質は、表面から離れて、ポンプで外へ吸い出される。こうして、膜が少しずつ削られていく。
ここで大切な働きをするのが、イオンである。ウェーハを置いた電極に電圧をかけておくと、プラスの電気を帯びたイオンは、ウェーハに向かって、真上から勢いよく飛び込む。イオンがぶつかった場所では、反応が進みやすくなる。イオンは真上から来るので、溝の底は削られるが、溝の側面はあまり削られない。その結果、形を垂直に深く削れる。
薬液を使うエッチングでは、どの方向にも同じように削れてしまい、感光材の下にもぐり込んで削れることがある。プラズマを使うことで、細かい形を、感光材の形どおりに垂直に削り出せる。
削りたいものだけを削る
エッチングでは、削りたい膜だけを削り、その下の膜はできるだけ削らないことも大切である。そのため、削りたい材料とは反応しやすく、下の材料とは反応しにくいガスを選ぶ。
また、深い穴を掘るときには、削る工程と、側面を守る薄い膜を付ける工程を、短い時間で交互にくり返す方法もある。側面が守られるので、穴が横に広がらず、まっすぐ深く掘れる。
プラズマで付ける:成膜
プラズマは、膜を付ける工程でも使われる。
ガスを使って膜を付ける方法(CVD)では、ふつうは、ウェーハを高い温度に熱して、ガスの反応を進める。ところが、すでに配線などができているウェーハを、高い温度に熱することはできない。そこで、プラズマを使う。プラズマの中の反応しやすいかけらは、高い温度にしなくても反応するので、低い温度で膜を付けられる。
また、金属の膜を付ける方法の一つ(スパッタリング)では、プラズマの中のイオンを、膜の材料でできた板にぶつける。ぶつかった勢いで、板から材料の原子がはじき出され、向かいのウェーハの表面に積もって膜になる。
表面を整える
プラズマは、表面を整える処理にも使われる。たとえば、エッチングの後に残った感光材を、酸素のプラズマで燃やすようにして取り除く。また、表面に付いたわずかな汚れを取り除いたり、表面の性質を変えて、次に付ける膜がよくなじむようにしたりする。
プラズマを正確に保つ難しさ
プラズマを使う工程では、ガスの種類と量、部屋の中の圧力、かける電力、ウェーハの温度など、多くの条件が結果に影響する。これらをわずかに変えるだけで、削れる速さや形が変わる。そのため、条件を細かく管理する。
ウェーハの全面で、同じように削れたり付いたりすることも求められる。中心と端で、プラズマの濃さや温度が違うと、結果にむらが出る。
また、勢いのあるイオンや、プラズマの中の電気が、トランジスタの薄い絶縁膜を傷めることもある。こうした傷みを抑えながら、細かい形を正確に作るために、装置の設計と工程の条件の工夫が重ねられている。
このページのまとめ
プラズマは、気体にエネルギーを与えて、イオンと電子に分かれた状態である。装置の中では、真空に近い部屋にガスを入れ、電圧をかけて作る。エッチングでは、反応しやすいかけらが膜と結びついて気体になり、真上から飛び込むイオンが反応を進めるので、垂直に削れる。成膜では、低い温度で膜を付けたり、イオンで材料の原子をはじき出したりする。多くの条件を細かく管理して、正確に保つ必要がある。
- 工程:エッチング
- 工程:成膜(CVD、PVD、ALD)
- 工程:洗浄
- 用語:CVD:原料ガスの化学反応で、ウェーハ表面に薄い膜をつくる成膜法。
- 用語:プラズマ:気体の分子や原子の一部が電離し、電子とイオンに分かれて混在する状態。半導体製造では、エッチングや成膜に使われる。
- 用語:スパッタリング:真空中でプラズマのイオンをターゲットに衝突させ、はじき出した原子を基板に付着させて薄い膜をつくる成膜法。
理解度チェック
本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。
問1
プラズマの説明として、正しいものはどれか。
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答え:1. 気体にエネルギーを与えて、プラスの電気を帯びたイオンと、自由に飛び回る電子が混ざった状態
気体にさらに大きなエネルギーを与えると、分子や原子から電子がはぎ取られ、イオンと電子が混ざった状態になる。これをプラズマと呼ぶ。
問2
プラズマを使うエッチングで、形を垂直に深く削れる理由として、正しいものはどれか。
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答え:2. プラスの電気を帯びたイオンが、ウェーハに向かって真上から飛び込み、溝の底の反応を進めるから
イオンは電圧によって真上からウェーハに飛び込むので、溝の底は削られるが、側面はあまり削られない。そのため、感光材の形どおりに垂直に削り出せる。
問3
CVDでプラズマを使う利点として、本文で挙げているものはどれか。
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答え:1. 高い温度にしなくても反応が進むので、配線ができたウェーハにも低い温度で膜を付けられる
プラズマの中の反応しやすいかけらは、高い温度にしなくても反応する。そのため、高い温度に熱せないウェーハにも、低い温度で膜を付けられる。