電気を帯びたガスで削り、付ける:プラズマを使う工程

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このページの目次
  1. 物の四つ目の状態
  2. プラズマの作り方
  3. プラズマで削る:エッチング
  4. 削りたいものだけを削る
  5. プラズマで付ける:成膜
  6. 表面を整える
  7. プラズマを正確に保つ難しさ
  8. このページのまとめ
  9. 関係する工程と用語
  10. 次に読む
  11. 理解度チェック

半導体の製造で広く使われるプラズマが何であり、どのように作られるのかを説明する。プラズマを使って膜を垂直に削るエッチング、低い温度で膜を付ける成膜、表面を整える処理の仕組みと、プラズマを正確に保つ難しさを扱う。

プラズマを使う工程(模式図)

  1. 電極プラズマ電極(ウェーハを置く)ガス吸い出すプラズマを作る真空に近い部屋で、ガスに電圧をかける
  2. 感光材削れた溝側面はあまり削られない垂直に削る感光材の形どおりに、深く削り出せる
図:左は、プラズマを作る装置の部屋。真空に近い部屋にガスを入れ、上下の電極に電圧をかけると、ガスがプラズマ(点線の囲み)になる。下の電極にウェーハを置く。右は、プラズマを使うエッチング。プラスの電気を帯びたイオン(矢印)が真上から飛び込み、溝の底を削るので、側面はあまり削られず、垂直に深く削れる。模式図、本サイトで作成

物の四つ目の状態

物には、固体、液体、気体の三つの状態がある。氷を温めると水になり、さらに温めると水蒸気になる。気体にさらに大きなエネルギーを与えると、気体の分子や原子から電子がはぎ取られ、プラスの電気を帯びた粒(イオン)と、自由に飛び回る電子が混ざった状態になる。これを「プラズマ」と呼ぶ。

プラズマは、身の回りでは、雷や、蛍光灯の中で光っている部分などに見られる。半導体の製造では、このプラズマが、エッチング、成膜、表面の処理など、多くの工程で使われている。

プラズマの作り方

製造の装置の中では、プラズマを次のように作る。

まず、装置の部屋の中の空気を抜き、真空に近い状態にする。そこに、目的に合ったガスを少しだけ流し込む。次に、部屋の中の電極に、向きが速く入れ替わる電圧をかける。すると、ガスの中にもともとわずかにある電子が、電圧で揺さぶられて勢いよく動き、ガスの分子にぶつかる。ぶつかった分子から電子がはぎ取られ、新しい電子とイオンが生まれる。これがくり返されて、プラズマが保たれる。

プラズマの中では、電子とイオンのほかに、電子にぶつかられて分かれた、とても反応しやすい原子や分子のかけらも生まれる。このかけらと、イオンの二つが、プラズマを使う工程の主役である。

プラズマで削る:エッチング

工程の「エッチング」のページで学んだとおり、エッチングは、不要な部分の膜を削り取って、回路の形を作る工程である。薬液を使う方法もあるが、細かい形を作るには、プラズマを使う方法が主に使われる。

プラズマを使うエッチングでは、反応しやすいかけらが、削りたい膜の表面の原子と結びついて、気体になりやすい物質を作る。できた物質は、表面から離れて、ポンプで外へ吸い出される。こうして、膜が少しずつ削られていく。

ここで大切な働きをするのが、イオンである。ウェーハを置いた電極に電圧をかけておくと、プラスの電気を帯びたイオンは、ウェーハに向かって、真上から勢いよく飛び込む。イオンがぶつかった場所では、反応が進みやすくなる。イオンは真上から来るので、溝の底は削られるが、溝の側面はあまり削られない。その結果、形を垂直に深く削れる。

薬液を使うエッチングでは、どの方向にも同じように削れてしまい、感光材の下にもぐり込んで削れることがある。プラズマを使うことで、細かい形を、感光材の形どおりに垂直に削り出せる。

削りたいものだけを削る

エッチングでは、削りたい膜だけを削り、その下の膜はできるだけ削らないことも大切である。そのため、削りたい材料とは反応しやすく、下の材料とは反応しにくいガスを選ぶ。

また、深い穴を掘るときには、削る工程と、側面を守る薄い膜を付ける工程を、短い時間で交互にくり返す方法もある。側面が守られるので、穴が横に広がらず、まっすぐ深く掘れる。

プラズマで付ける:成膜

プラズマは、膜を付ける工程でも使われる。

ガスを使って膜を付ける方法(CVD)では、ふつうは、ウェーハを高い温度に熱して、ガスの反応を進める。ところが、すでに配線などができているウェーハを、高い温度に熱することはできない。そこで、プラズマを使う。プラズマの中の反応しやすいかけらは、高い温度にしなくても反応するので、低い温度で膜を付けられる。

また、金属の膜を付ける方法の一つ(スパッタリング)では、プラズマの中のイオンを、膜の材料でできた板にぶつける。ぶつかった勢いで、板から材料の原子がはじき出され、向かいのウェーハの表面に積もって膜になる。

表面を整える

プラズマは、表面を整える処理にも使われる。たとえば、エッチングの後に残った感光材を、酸素のプラズマで燃やすようにして取り除く。また、表面に付いたわずかな汚れを取り除いたり、表面の性質を変えて、次に付ける膜がよくなじむようにしたりする。

プラズマを正確に保つ難しさ

プラズマを使う工程では、ガスの種類と量、部屋の中の圧力、かける電力、ウェーハの温度など、多くの条件が結果に影響する。これらをわずかに変えるだけで、削れる速さや形が変わる。そのため、条件を細かく管理する。

ウェーハの全面で、同じように削れたり付いたりすることも求められる。中心と端で、プラズマの濃さや温度が違うと、結果にむらが出る。

また、勢いのあるイオンや、プラズマの中の電気が、トランジスタの薄い絶縁膜を傷めることもある。こうした傷みを抑えながら、細かい形を正確に作るために、装置の設計と工程の条件の工夫が重ねられている。

このページのまとめ

プラズマは、気体にエネルギーを与えて、イオンと電子に分かれた状態である。装置の中では、真空に近い部屋にガスを入れ、電圧をかけて作る。エッチングでは、反応しやすいかけらが膜と結びついて気体になり、真上から飛び込むイオンが反応を進めるので、垂直に削れる。成膜では、低い温度で膜を付けたり、イオンで材料の原子をはじき出したりする。多くの条件を細かく管理して、正確に保つ必要がある。

  • 工程:エッチング
  • 工程:成膜(CVD、PVD、ALD)
  • 工程:洗浄
  • 用語:CVD:原料ガスの化学反応で、ウェーハ表面に薄い膜をつくる成膜法。
  • 用語:プラズマ:気体の分子や原子の一部が電離し、電子とイオンに分かれて混在する状態。半導体製造では、エッチングや成膜に使われる。
  • 用語:スパッタリング:真空中でプラズマのイオンをターゲットに衝突させ、はじき出した原子を基板に付着させて薄い膜をつくる成膜法。

理解度チェック

本文の内容から答えられる問いです。答えを選ぶと、正しいかどうかと解説が出ます。

問1

プラズマの説明として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 気体にエネルギーを与えて、プラスの電気を帯びたイオンと、自由に飛び回る電子が混ざった状態

気体にさらに大きなエネルギーを与えると、分子や原子から電子がはぎ取られ、イオンと電子が混ざった状態になる。これをプラズマと呼ぶ。

問2

プラズマを使うエッチングで、形を垂直に深く削れる理由として、正しいものはどれか。

答えと解説を見る

答え:2. プラスの電気を帯びたイオンが、ウェーハに向かって真上から飛び込み、溝の底の反応を進めるから

イオンは電圧によって真上からウェーハに飛び込むので、溝の底は削られるが、側面はあまり削られない。そのため、感光材の形どおりに垂直に削り出せる。

問3

CVDでプラズマを使う利点として、本文で挙げているものはどれか。

答えと解説を見る

答え:1. 高い温度にしなくても反応が進むので、配線ができたウェーハにも低い温度で膜を付けられる

プラズマの中の反応しやすいかけらは、高い温度にしなくても反応する。そのため、高い温度に熱せないウェーハにも、低い温度で膜を付けられる。